2013/02/10
ぽかぽか春庭@アート散歩>2012-2013冬のアート散歩(9)お金持ちのコレクション5・近代美術館盛田コレクション
東京近代美術館は、2012年夏に休館し、耐震工事などのリニューアルを行いました。リニューアル完成記念の展覧会は、「美術にぶるっ」というキャッチコピーがつけられた「館内所蔵品による日本美術史」という展覧会です。
「美術にぶるっ」を私が見に行かなかったのは、千円をけちったから。館内所蔵品展なのに「企画展」扱いで、ぐるっとパスでは見ることができなかった。招待券かぐるっとパスで入れるところへ出かけるという基本路線を守ったから。
「美術にぶるっ」は、第一部が日本美術史の流れ。こちらはいつもの常設展と同じ。第二部が、東京近代美術館が開館した当時(1950年代)の実験的な美術を展示した企画展。原爆を美術の立場から取り上げた作品や、河原温の「浴室」シリーズなど、実験的な表現を取り上げた展示。鶴岡政男 が画友松本竣介のデスマスクを描いた『死の静物(松本竣介の死)』(1948)も展示されていたと知り、千円けちらないで、見ておけばよかったかなあなんて、あとの祭りで思いました。
常設展になってぐるっとパスで入れるようになってから、ようやく東京近代美術館のリニューアルのようすを見ました。前と変わらない常設展示もありましたが、かなり展示が変えられていました。
私の好きな場所、4階の休憩室は、椅子が一新されていましたが、皇居のお堀や東御苑を見てゆったり休めるのは同じ。展示の部屋の区切り方がこれまでと違っていたし、展示の場所が違う作品もありましたが、近代以後の日本の美術の流れ、そしてココシュカのコーナーなど、近代現代の外国人作品が見られるのは同じ。
常設展は、年に何回か展示替えがあります。1年に数回ずつ見ていれば、ほとんどの所蔵作品は見ることができます。
今回の展示で目についたのは、盛田良子コレクションの部屋。ソニー創業者盛田昭夫夫人の良子が集めた作品の展示です。
ジョルジュ・ブラック「女のトルソ」(1910-11年)パウル・クレー「山への衝動」(1939年)ニコラ・ド・スタール「コンポジション(湿った土)」(1949年)ジャン・デュビュッフェ「土星の風景」(1952年)という買い上げ収蔵品のほか、委託借り上げの作品もまとめて「盛田コレクション」として展示してあったのです。
クレー「山への衝動」

盛田良子がニューヨークの盛田邸にどのように配置して飾っていたかも、写真でわかるようになっていました。三省堂創業社長の娘であった良子は、夫がソニーを創業し、ニューヨークにソニーショウウインドーを設けると、社交の面で夫を支えました。アメリカでは、奥さん同伴のパーティやゴルフなどのつきあいをこなすことがセレブ夫人の仕事。奥さんが社交の仕事をこなさないと、夫も人脈が広がらない。
盛田良子は、ニューヨーク近代美術館などの支援者として美術家とも関わり、ソニーミュージックエンターテインメントなどの関係でマイケル・ジャクソンはじめ音楽家とのつきあいも広い。
お金に不自由しない人が自分の趣味で絵を集め、それを美術館に一括譲渡するということ、いいんじゃないかと思います。近頃の美術館、国立や公立では予算が限られていて、オークションなどで外国勢と競り合ったところで、とても著名画家作品などを競り落とすことができない。それを、こういう形でそっくり譲って貰えるなら、セリでバカ高く値をつり上げることもなく、私たち「絵を見るのが好き」っていうだけの者も見ることができる。
ミロ「絵画詩・おお!あの人、やっちゃったのね」

いつも「金なしコネなし才能なし」の我が身を嘆き、妬みそねみ僻みでコテコテの私ですが、よそのお金持ちが絵を買って、美術館に寄付または譲渡するって話なら、「金持ちおおいにけっこう」と思います。もちろん、その金持ちが高い美術品買うのをやめて、「貧乏な春庭に年金でもだしてあげましょ」というのはもっとよい。
<つづく>
ぽかぽか春庭@アート散歩>2012-2013冬のアート散歩(9)お金持ちのコレクション5・近代美術館盛田コレクション
東京近代美術館は、2012年夏に休館し、耐震工事などのリニューアルを行いました。リニューアル完成記念の展覧会は、「美術にぶるっ」というキャッチコピーがつけられた「館内所蔵品による日本美術史」という展覧会です。
「美術にぶるっ」を私が見に行かなかったのは、千円をけちったから。館内所蔵品展なのに「企画展」扱いで、ぐるっとパスでは見ることができなかった。招待券かぐるっとパスで入れるところへ出かけるという基本路線を守ったから。
「美術にぶるっ」は、第一部が日本美術史の流れ。こちらはいつもの常設展と同じ。第二部が、東京近代美術館が開館した当時(1950年代)の実験的な美術を展示した企画展。原爆を美術の立場から取り上げた作品や、河原温の「浴室」シリーズなど、実験的な表現を取り上げた展示。鶴岡政男 が画友松本竣介のデスマスクを描いた『死の静物(松本竣介の死)』(1948)も展示されていたと知り、千円けちらないで、見ておけばよかったかなあなんて、あとの祭りで思いました。
常設展になってぐるっとパスで入れるようになってから、ようやく東京近代美術館のリニューアルのようすを見ました。前と変わらない常設展示もありましたが、かなり展示が変えられていました。
私の好きな場所、4階の休憩室は、椅子が一新されていましたが、皇居のお堀や東御苑を見てゆったり休めるのは同じ。展示の部屋の区切り方がこれまでと違っていたし、展示の場所が違う作品もありましたが、近代以後の日本の美術の流れ、そしてココシュカのコーナーなど、近代現代の外国人作品が見られるのは同じ。
常設展は、年に何回か展示替えがあります。1年に数回ずつ見ていれば、ほとんどの所蔵作品は見ることができます。
今回の展示で目についたのは、盛田良子コレクションの部屋。ソニー創業者盛田昭夫夫人の良子が集めた作品の展示です。
ジョルジュ・ブラック「女のトルソ」(1910-11年)パウル・クレー「山への衝動」(1939年)ニコラ・ド・スタール「コンポジション(湿った土)」(1949年)ジャン・デュビュッフェ「土星の風景」(1952年)という買い上げ収蔵品のほか、委託借り上げの作品もまとめて「盛田コレクション」として展示してあったのです。
クレー「山への衝動」

盛田良子がニューヨークの盛田邸にどのように配置して飾っていたかも、写真でわかるようになっていました。三省堂創業社長の娘であった良子は、夫がソニーを創業し、ニューヨークにソニーショウウインドーを設けると、社交の面で夫を支えました。アメリカでは、奥さん同伴のパーティやゴルフなどのつきあいをこなすことがセレブ夫人の仕事。奥さんが社交の仕事をこなさないと、夫も人脈が広がらない。
盛田良子は、ニューヨーク近代美術館などの支援者として美術家とも関わり、ソニーミュージックエンターテインメントなどの関係でマイケル・ジャクソンはじめ音楽家とのつきあいも広い。
お金に不自由しない人が自分の趣味で絵を集め、それを美術館に一括譲渡するということ、いいんじゃないかと思います。近頃の美術館、国立や公立では予算が限られていて、オークションなどで外国勢と競り合ったところで、とても著名画家作品などを競り落とすことができない。それを、こういう形でそっくり譲って貰えるなら、セリでバカ高く値をつり上げることもなく、私たち「絵を見るのが好き」っていうだけの者も見ることができる。
ミロ「絵画詩・おお!あの人、やっちゃったのね」

いつも「金なしコネなし才能なし」の我が身を嘆き、妬みそねみ僻みでコテコテの私ですが、よそのお金持ちが絵を買って、美術館に寄付または譲渡するって話なら、「金持ちおおいにけっこう」と思います。もちろん、その金持ちが高い美術品買うのをやめて、「貧乏な春庭に年金でもだしてあげましょ」というのはもっとよい。
<つづく>