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ぽかぽか春庭「模擬授業・10年前の日本語教室3」

2013-11-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/11/06
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003年11月の日記(3)模擬授業・ニッポニアニッポン語教師日誌3

 10年前の日本語教室記録です。
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2003/11/26 水 晴れ 1060
ニッポニア教師日誌>模擬授業

 教授法2コマ。今日から3週連続で、模擬授業を行う。
 学生には、
 1)日本語学校、ボランティア日本語教室、大学の日本語別科など、どこでもいいから日本語教育機関のクラスを見学し、レポートを提出(日本語学校へ電話をかけ、見学申し込みを受け入れて貰うのも、勉強のうち
 2)4人組の班ごとに「自分たちが運営しようとするクラスのコースデザイン」を提出 
 3)50分授業の個別指導案提出

 以上の3点セットを義務づけた。それだけでも相当ハード。
 それに加えて「表現力」養成として「自慢じゃないけど自慢です」という自慢話コーナーで、3分のスピーチ。ほかの人の発表を聞いたら、必ずコメントを書いて提出、というスケジュールを組んできた。

 模擬授業、前半の班は、先週急遽ピンチヒッターで順番をかわったHiチーム。Yaチームのひとりがインフルエンザでずっと欠席なので準備の連絡がとれないというので、順番を変更してもらった。

 ピンチヒッター、しかもトップだったので、準備不足の部分もあったが、チームティーチングを3人でやった。「動詞の名詞化」を教える授業。「こと」と「の」の使い分けなど、留学生には混乱が起きやすい文法項目だ。泳ぐという動詞を名詞化(nominaraization)すると、「泳ぐこと」「泳ぐの」のふたつの名詞ができる。
 
 「泳ぐのが好きです」は、「泳ぐことが好きです」と、言うことができる。しかし、「私の趣味は泳ぐことです」という分を「私の趣味は泳ぐのです」と、言うことはできない。

 そのあたりの文法事項を、学生もきちんと把握していないから、もし、留学生が「私の趣味は泳ぐのです」という発話をしたときに、教師として対処できなくなる。名詞化の「の」は、コピュラ「だ」「です」と共起できないことを、教授者が把握している必要がある。

 学生発表が終わってから、「私が、『こと』と『の』を導入するときは、こうやります」というサンプルを見せる

 「動詞の名詞化」を教える授業。「こと」と「の」の使い分けなど、留学生には混乱が起きやすい文法項目だ。泳ぐという動詞を名詞化(nominaraization)すると、「泳ぐこと」「泳ぐの」のふたつの名詞ができる。
 
 「泳ぐのが好きです」は、「泳ぐことが好きです」と、言うことができる。しかし、「私の趣味は泳ぐことです」という文を、「私の趣味は泳ぐのです」と、言うのは不自然だ。

 そのあたりの文法事項を、きちんと把握していないと、もし、留学生が「私の趣味は泳ぐのです」という発話をしたときに、教師として対処できなくなる。名詞化の「の」は、コピュラ「だ」「です」と共起できないことを、教授者が把握している必要がある。

 cf:「だれがなんと言おうと、私はいくのです」という場合の「の」は、また別。「いくんです」「だれが撮っても上手に写るんです」の「ん」は、説明的終助詞(ecplanated finel particle)の、「の」である。あ、話がややこしくなった。逃げないで下の授業実践を読んでね。春庭、「横綱土俵入り」を披露しているから。

 「私が、『こと』と『の』を導入するときは、こうやります」というサンプル。あくまで一例であり、さまざまな授業方法が存在する。

 以下の授業実践は、直接法(日本語だけで授業をする)に、媒介語(このクラスでは英語)を加えた、「折衷直接法」の授業である。

1,文字カードを準備。
 カードに「ピンポン」「バレーボール」「バスケットボール」「テニス」「ボクシング」「すもう」「Swimming」「Walking」「Watching」「Standing」「Taking photograph」などと書いてある。

2,日本語学習者をふたつのチームに分ける。カードを配り、ふたり一組になってジェスチャーを出題し、相手チームに何をしているか、あてさせる。あたったら、ポイントゲット。
 これは、カードの語句の意味を理解しているかどうか、確認するための遊び。

 「泳ぐこと」「写真をとること」などは、ジェスチャーで当てられるが、「立っていること」「見ること」などは、ジェスチャーが巧みでないと、答えが出にくい。ただ、じっと立ち続けるジェスチャーでは「立っていること」という答えが出ないのだ。

 「すもう」のジェスチャーなどは知らない学生もいるので、できそうな人にあてておく。学生ができないときは、教師がジェスチャーすると、みな大喜び。私は調子にのると、横綱土俵入りのジェスチャーまでサービス。

3,「I'd like you ask a question. Do you like this sports. Please answer it。質問します。答えてください.スポーツが好きですか」スポーツが好きそうな学生に質問する。学生は「好きです」と答える。

①テニスが好きそうな学習者に質問「テニスが好きですか」学習者の答え「はい、好きです」

②女子学生に質問「ボクシングが好きですか」好きだと答えたら「ボクシングがができますか」「いいえ、できません」「そうですか、○○さんは、ボクシングができません。○○san can not play boxing.」

③ わざと、すもうができるか聞いてみたりする。冗談で「できる」と答える学生がいたら、「Let's play the game. I am a Takamisakari , You are Asashoryu.」と、のせる。ふたりで、立ちあい「みあって、見合って、はっけよいのこった」と、立つまでをジェスチャーでやったり。がっぷり四つに組むのは、ちょっと遠慮。

4,教師「○○san, do you like watching TV?」
  学生「Yes, I do」
 教師「そう、好きなのね。日本語で言ってください」
 学生「好きです」
 教師「Please say full sentence.」
 学生「わたしはテレビを見るが 好きです」

5,教師「今の日本語は正しい日本語ではありません。もういちど、言ってください」
 学生「わたしはテレビをみるが、、、、」
 教師「ちがいます。『みるが』は、正しい日本語ではありません」
 学生「Ah!わかりません」

6,学生が間違えたら、すかさず、「こと」「の」を導入する。「Japanese verb nominaraization」の説明。「の」と「こと」の使い分けなどを説明。

7,「こと」を用いた、動詞の名詞化の練習。カードをみせながら、あるいは口答練習で「Walking →あるくこと」「Watching →みること」の変換練習

8「動詞~のが好きです/~のは好きじゃありません」の代入練習。「公園を歩くのが好きです」「テレビを見るのが好きです」「電車の中で立つのは好きじゃありません」などの文型を練習。

9「趣味は、動詞~ことです」の代入練習。
①「趣味はお酒を飲むことです」「趣味は映画を見ることです」「趣味は絵を描くことです」などの例文を練習。

②調子にのりやすい男子学生がいるクラスだと、「趣味は、女の人の写真をとることです」「趣味は女の人と話すことです」「趣味は、女の人といっしょにホテルへ行くことです」まで、エスカレート。

③乗りやすいクラスと、そうでないクラスでは、例文を使い分ける。やたらに「うけねらい」の文を発表しようと、はりきる学生がいるクラスがある。また、ちょっとでもふざけた文を言うと、ブーイングを出すまじめ学生のいるクラスも。
 教師も、クラスの個性にあわせて臨機応変に。

 今回の、私のデモンストレーション授業でも、いちばん受けたのは、すもうのジェスチャーだった。学生のひとりが、「日本語教師はジェスチャーの練習もしておかなきゃなりませんね」というので、「日本語教師は芸人を目指さなければ、やっていけません!」という、私の持論を披露。

 後半のOhチームは、各人工夫をこらして上手に授業をしていた。絵カード、復習プリント、CDプレーヤーなどの「教材教具」を使って、それぞれが持ち時間いっぱいに授業した。

 今日の学生の「自慢話」発表も、面白かった。
 3000円しかお金がなかったけど、大阪のたこやきを食べたくなって、京都までヒッチハイクで行き、帰りは夜行鈍行を乗り継いで、品川駅で駅員に「大井町から乗ったけど、切符落とした」といって、150円払って家に帰ったという話。

 ジャンボ尾崎の出身高校に在学していたという学生。「スポーツが盛んな学校で、自分も高校のとき剣道大会で優勝した」という話。

 そして演劇をやっている女子学生は練習を続けている殺陣を披露。
 始める前に黒板に殺陣と書いたので「ああ、たてやるの」と尋ねたら、「もう、先生は、すぐ言っちゃうんだから、これクイズなのに。ま、仕方がない、みなさん、これ、なんと読むかご存じですか、今のセンセのつぶやきは聞かなかったことにして考えてください」と、おこられちゃった。
 で、殺陣の型を見せてくれて、とてもかっこよかった。彼女が出演する次の公演も見にいく約束をしている。

本日のうらみ:「殺陣」の文字がクイズと思わなくて、つい読んでしまった。ごめんね、たまに読める漢字があると、うれしくて

2003/11/27木 晴れ 1063
ニッポニア教師日誌>作文発表会

 作文、日本事情2コマ。今日は作文の後半で「いままで書いた作文の発表会」を行った。
 今年、システム変更で作文クラスの学生数が半分になった。おかげで、添削する時間もとれたので、今までになくたくさんの作文を書かせた。

 学生は「A4版原稿用紙50枚つづりを買ったときには、こんなにたくさん紙があっても余ってしまうだろうと思った。まさか50枚全部紙が終わるとは思わなかった」という。下書きと清書で全部で50枚が終わり、足りなくなった人もいる。

 丸谷才一の持論「子どもに作文を書かせて、添削してやろうとか、感想を一言かいてやろうと思うから、教師は子どもに作文を書かせたがらなくなる。添削も感想もいらないから、ただひたすらどんどん書かせれば、自然に上達する。」

 私は自分の方針として、書かせたら必ず添削をして、つまらないコメントでもひとこと書き添える。時間がかかるが、どんどん書かせる。
 それで、「読めば読んだ分だけ読解力がつく」「書けば書くほど作文力があがる」と、いうことは実感できる。量が質をたかめることといういうことは、2チャンネルロゴだけでなく、いくらでもあある。

 ひとつずつ気に入った作文を選んで、朗読発表を行った。本当はひとこと感想を言うことができたらよかったが、来週文集作りの時間があまったら、感想コーナーを作ろう。

本日のかみ:原稿用紙50枚書くうちに上達する作文。教師の指導ではなく紙のおかげ

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2003/11/28 金 曇り 1062
ニッポニア教師日誌>デパート買い物シーン

 ビデオ会話3コマ。
 今日から中国からの学生がひとり増えた。ちょうど12課のビデオに「ひさしぶりに会った友人に、新しい友だちを紹介する」というシーンがあったので、ビデオを見てから「ともだちを紹介する」という練習。

 新入生は食品安全学専攻。中国にとって、必須の学問だろうと思う。農薬や添加物の混ざった食品を輸入したら、自分のクビを絞める結果になりかねないから、中国の農産業にとって必要不可欠。

 大学院院生として留学している他の学生と異なり、彼女は研究留学生だから、日本語学習は必須ではない。しかし、研究のためには日本語学習が必要と自分で判断し、指導教官を通じて申し込んできたのだという。「みんなのにほんご」を7課までしか終わっていないが、熱心な人なのでこれまでの遅れに追いつくだろう。文法事項の理解はしているが、会話経験がないので、まだ発話に慣れていない。

 今日は、SFJ10課のビデオのデパートシーンを見てから、買い物ごっこを再現。新入生に客の役を、ジジとニューにデパート店員の役をやらせる。私がエレベーターガールの役。
 行き先の階をエレベーターガールに告げるところから、スタート。「東京デパートご利用ただきましてありがとうございます。はい、3階でございますね。かしこまりました。3階紳士服売り場、とまります。おあとございませんか。」と、エレガ口調。新入生ショウおずおずと「5カイ」「はい、5階、婦人服売り場へまいります」

 婦人服コーナー担当のニューは「いらっしゃいませえ」とはりきる。ショウさんもまわらない口でいっしょうけんめい「もう少し大きいサイズのセーターがありますか」「色はいいけど、デザインがちょっと」など、10課の文型を言う。

 ジジはレジ係りの役。「○○円お預かりします」「○○円のおかえしです」などの、買い物ごっこセリフはすっかり忘れていたが、なんとか無事買い物がすんだので、「ジジさんはとてもよいデパート店員でした。ジジさんは、国にかえったら、デパートの店員になります」と、今日のもうひとつの新文型「~になります」を使ってほめると、みな笑う。
 将来ジジがなるとしたら、デパートのオーナーか、商業大臣くらいであろうと、学生達は承知している。

本日のひがみ:教える教師は、しがない非常勤講師でも、教わる学生たちは、各国家よりぬきのエリートたち
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<つづく>
コメント
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