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ぽかぽか春庭「イメージキャラクター・10年前の日本語教室」

2013-11-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/11/03
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003年11月のニッポニアニッポン語教師日誌(1)イメージキャラクター

 10年前の日本語教室の記録です。
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2003/11/06 木 朝雨、午後晴れ 1040
ニッポニア教師日誌>イメージキャラクター

 日本事情作文2コマ。来週はこども動物園に行くことになった。
 学生に、日本近代史の話をしながらも、「今日娘と息子はディズニーランドへいったんですよ。私はこうして仕事に励んでいるのにねぇ」と、こぼして、笑われた。なんでディズニーランドの話になったかというと、明治維新の話から。

 明治時代、天皇は神であった。昭和天皇が「チンはホント言うと神じゃなかったのサ」と、人間宣言して戦後復興がはじまったこと、などを話す。「私は人間です」宣言のことを話すと、たいてい留学生は笑う。「本当に昔の日本人は天皇を神と思っていたのか」と質問する。

 私も以前は信じられなかった。建前「神」でも、本音ではそう思っていなかった人も多かったのだろうとは思う。だが、本気で信じていた人の精神がどうだったのか、さっぱり理解できなかった。オームの「ソンシー」を本気で信じていた人を知って、ようやく「信じたい人を本気で信じる人間」が存在するのを知った。「天皇は神」と本気で信じていた人もいたであろうと納得できた。
 戦後象徴天皇も、イマイチ留学生に理解できない部分を含む。タイのように政治権力を保持している王様は、理解できるが、象徴天皇とはいったい日本人にとって、何なのだ。と、質問してくる。

 わかりやすいたとえ。ディズニーランドのミッキーマウスのごとし。ミッキーが存在しないディズニーランド。ミッキーに握手してもらえない、パレードでミッキーが杖をふらない、夜、花火を指揮しない、ほら、なんだか楽しくないでしょ。
 ある場所を統合するには、イメージキャラクターが必要だって、ほとんどの国民は思っているんです、と解説する。むろん、ミッキーじゃなくてミニーを女帝にすべきだ、とか、いやいやグーフィあたりをニューメインキャラにと思っている人もいるのかもしれないが。私の好みはアリスの三月兎よん。

 明治天皇は、16歳で即位するまで、お化粧して女の衣装をきて育てられた。昭和天皇も、白いワンピース姿の女の子の衣装を着た写真が残っている。これは、男の子の幼児死亡率のほうが女児の死亡率よりも高くて、女の子として育てた方が生き残る率が高いと信じられていたため、男児の跡取りが貴重であった階層でかなり広く行われていた風習である、と、猪瀬直樹のミカドシリーズの受け売りをやる。三島由紀夫も女の子の衣装を着て育てられた。などの話。

 文化研究の受け売りができて、近代国家成立期の歴史授業は、私のお得意分野。限りなくトリビア語りをしたくなり、少しも近代が進んでいかない。文明開化殖産興業富国強兵、話し出したら止まらない。学生は私の冗談混じりの解説にゲラゲラ笑い転げる。

 今年は木曜日のクラスが一番日本語ができるクラス。日本語力がかなり高いので、くすぐりや地口だじゃれも通じる。それで、私の芸人魂炸裂。

 昔の寄席中継で三平が「お客さんに笑ってもらうと、高座の花代が増えるんですから」と言っては笑いをとっていたのを思い出すが、学生を笑わせても、講師料が増えるワケじゃない。なんで、こうサービス精神旺盛になっちまったのか。
 20年前に作った講義ノートを、毎年ぼそぼそ読み上げるだけの大学者先生も多いのにねぇ。

本日のうらみ:寄席なら笑わせれば玉が上がるのに。私の講師手当、時給をあげてくれぇ!

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2003/11/07 金 晴れ 1041
ニッポニア教師日記>算盤指導

 ビデオなど3コマ。
 ビデオは、人気の授業。漢字練習文型練習で1週間詰め込まれて、いっぱいいっぱいなっている学生が、1週間の最後に、ボケッと見て、ワハハと笑って楽しむクラス。メインの授業ではなく、復習はするが、新しい文型を導入するなどの義務がないので、教師も気楽に授業ができる。

 20年前制作のビデオ。ヤンさんが郵便局で切手を買うシーンでは、局員がそろばんでおつりを計算するという近頃では見かけないシーンが出てくる。
 毎回、ヤンさん第3話の時にはそろばんを持参して、学生の前でそろばんをはじいて見せる。私は足し算のみできる。引き算はまごつく、かけ算はやり方を全く忘れているという程度のそろばん能力だが、学生はたいてい「へぇ」と感心してくれる。

 「Jananese Abacus」は、中国のものや、アジアの華僑のものと少し違うことなどを話す。 今年は中国のチェンとインドネシアのジジが「こどものころそろばんを習いました」というので、解説をまかせたら、ビデオ授業ではなく「そろばん講習会」になってしまった。これが、1を示す玉、これが「5」の玉、などと教わって、「じゃ、82ってやってみて」と玉を動かすよう、勧める。おそるおそる玉を置く。「正解!」と誉めると、大喜び。

 これも「異文化理解」で、いいのでしょう。学生同士で、「イスラム教の人は、お酒を飲むことはできない」ということすら知らない者もいる。たまたまいっしょになったクラスでお互いの文化について、同じ所違うところを認めあえれば、いいと思う。

本日のそねみ:算盤でも計算機でも、私に計算はできない
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2003/11/11 火 雨 1045
ニッポニア教師日誌>子供の病気

 漢字、会話2コマ。

 子供をおいて単身留学エンジョさん、子供緊急入院の電話で、あわてて今朝、韓国に帰国。
 私が中国に単身赴任している間、風邪くらいはひいたろうが、我が娘息子は、大きな病気をしなかった。入院もせずに済んだ。
 エンジョさん戻ってこられるといいのだが。

本日のつらみ:子を持つ母の留学至難

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2003/11/12 水 晴れ 1046
ニッポニア教師日誌>学生自慢話

 午前中Aダンス。

 午後日本語教授法2コマ。学生に発表させている「自慢話」今日も好評。
 書道師範の腕前を持つ学生の楷書草書行書と、落款の紹介。みんなあまりのうまさにびっくり。
 二人目は千葉市の「合唱団親善大使」に選ばれて、ドイツまで演奏旅行に行ってきた話。
 中国のロックグループが大好き言って、CDかけながら、どんなに彼らがかっこいいか熱弁する学生も。自分が属するアンダーグラウンドのラップが、メジャーラップとどうちがうかを語り出したらとまらない学生。ほんとに個性豊かで、この企画をはじめてよかったと思っている。 

 多摩川おじさんの「生教材をつかった授業」は、私が貸したゆかたをつかって、ゆかたの特長説明と「ゆかたの畳み方講座」。「日本事情」「日本文化紹介」の授業例として。一度たたんで片づけたが、休憩時間にまた、個人指導でたたみ方を習う学生もいて、これもまた、「日本語教師をめざさない学生にも役に立つ」日本語教授法授業として、よかったよかった。 

本日のひがみ:私も浴衣を畳むくらいはできるが、振り袖着付けはできない

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<つづく>
コメント
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