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ぽかぽか春庭「ドシュマンとドゥーストと釜石小学校校歌」

2013-11-17 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/11/17
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十三里半日記11月(4)ドシュマンとドゥーストと釜石小学校校歌

 ジャズダンスサークルの仲間、合唱団に入っていたり、古典フォークダンスを練習していたり、落語会を応援したり、さまざまな活動を行っています。
 私の尊敬するT子さん、退職後も教職経験を生かして週2回は教育相談の仕事をつづけ、趣味のオペラアリアの会、合唱も続けています。図書館での「こどもたちへの読み聞かせ」ボランティアもT子さんの大事な活動です。

 昨年、T子さんたちの「おはなし」サークルによる「大人のためのおはなし会」を聞いて楽しかったので、今年も出かけました。
 T子さんのおはなしは、午後4時前の最後の朗読でした。普段は触れることが少ないイランのおはなし『ドシュマンとドゥースト』というタイトル。もとの昔話はペルシャ語です。ドゥーストدوستは友人で、ドシュマンدشمنは敵です。

 「敵」と名付けられてしまった男と「友」という名を持つ男が出会い、冒険あり恋ありの裏切りと謎の物語。T子さんの聞きやすいやわらかい声での語りがはじまりました。
 私にとっては初めて聞くお話でしたが、各地で行われている「読み聞かせ」「おはなし会」ではよく取り上げられる人気のおはなしのようです。

 図書館などで子供への「読み聞かせ」は、絵本や紙芝居でお話をすることが多いのでしょうが、「大人のためのおはなし会」では、全員がおはなしをすべて暗記して、ひとり芝居のように語ります。T子さんも20分かかるおはなしを、味わい深く語りました。

 私は、幼い頃の娘に「ほん読んでよんで」とせがまれると、最初の一回はひざに乗せて読んであげたけれど、2回目は読みながらそれをラジカセのテープに録音し、三度めに「読んで」と言われるとテープを再生するという「自分が自分の読みたい本を読む時間のほうが大事」というダメな母親でした。息子にはほとんど「読み聞かせ」の時間を持たなかった。息子が生まれて保育園に入園した頃は、修士論文を書いている頃で、「読み聞かせは保育園の先生と娘におまかせ」というひどい状態でした。家では、小学校に入学した娘が張り切って本を読んできかせてやっていました。

 そんなことを思い出しながら中央図書館の「区民利用コーナー」で休んでいると、いろいろなパンフレットを置いてあるコーナーに、「釜石小学校校歌」の歌詞と楽譜のプリントが置いてありました。おや、こんなところにどうして、と思いながら、楽譜プリントを手に取りました。

 釜石小学校の校歌は、井上ひさしの作詞です。井上が釜石で青春の2年間をすごした縁による作詞。釜石での2年間は、井上の小説『花石物語』のモチーフになっています。この夏、蕁麻疹が出て何もする気が起きずに、ふとんの中で読んですごした一冊が『花石物語』でした。

 釜石小学校は、大渡小学校と統合し新しい小学校に生まれ変わるとき、新校歌を井上ひさしに依頼しました。地元自慢の海も山も歌いこまれていない斬新な歌詞。地元の長老たちからは「こんな校歌じゃ、地域伝統の重みがない」という反対論も出たなか、子供たちには大好評の歌になりました。子供が学校行事以外のときにも口ずさんでくれる校歌なんて、全国にもそうはないでしょう。

 釜石小学校は、3.11の被災後、避難所になりました。そのとき、学校に掲げられた校歌の歌詞が被災者たちの心を励まし、朝のラジオ体操のあと校歌が流れ、多くの人が口ずさみました。
 井上ひさし作『ひょっこりひょうたん島』のモデルのひとつと言われる岩手県大槌町沖の蓬莱(ほうらい)島も釜石の近くです。テレビで人気だった人形劇ひょっこりひょうたん島の主題歌とともに、「釜石小学校校歌」は、被災者たちを励ましました。作曲は、ひょっこりひょうたん島の作曲と同じ宇野誠一郎です。

♪いきいき生きる いきいき生きる
 ひとりで立って まっすぐ生きる
 困ったときは 目をあげて
 星を目あてに まっすぐ生きる
 息あるうちは いきいき生きる

♪はっきり話す はっきり話す
 びくびくせずに はっきり話す
 困ったときは あわてずに
 人間について よく考える
 考えたなら はっきり話す

♪しっかりつかむ しっかりつかむ
 まことの智恵を しっかりつかむ
 困ったときは 手を出して
 ともだちの手を しっかりつかむ
 手と手をつないで しっかり生きる


 きょう、11月17日は、井上ひさしの誕生日です。2010年になくなった井上ひさし。もうちょっと長生きしてほしかったなあ。

 東京の区立図書館が、どうして釜石小学校の歌詞プリントを配布していたのか、というのを聞かなかったのですが、これも何かのご縁だったのでしょう。私も元気だして、「ともだちの手をしっかりつかむ 手と手をつないでしっかり生きる」と、思いました。

 私には、手をつないでくれるドゥーストدوستがほんのわずかで、ドシュマンدشمنばかりに取り囲まれているような気分の昨今ですが、数少ない手にすがって、なんとか生きていきましょう。
 あ、そこのあなた、私は、『徒然草117段』で吉田兼好のいう「よき友」を募集中です。
 「よき友、三つあり。一つには、物くるる友。二つには医師。三つには、知恵ある友。
 あらら、あなたは医者ではなし、ものくれる人でもなく、知恵は、、、、となると。
 まあ、こういうこと言ってるから、私のまわりにはドゥシュマンばかりになっちゃうのね。、、、と、毎度おなじみのことをまた言ってしまいました。

初音ミク歌唱『釜石小学校校歌』
http://www.youtube.com/watch?v=BFo6p90dJko

<つづく>
コメント (6)
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