春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「前川邸&大川邸 江戸東京たてもの園」

2014-01-26 00:00:06 | エッセイ、コラム
2014/01/26
ぽかぽか春庭@アート散歩>明治の館、大正のお屋敷、昭和の邸宅(8)江戸東京たてもの園の邸宅

 江戸東京たてもの園をときどき散歩すると述べましたが、そのときそのときの気分で、東ゾーンを中心に歩いたり、西ゾーンでゆったりすごしたりと、30棟ある建物のうち、どこを中心に見て歩くか、テーマはさまざまです。

 2013年9月の散歩では「個人の洋式邸宅」というテーマでしたから、三井八郎右衛門邸や高橋是清邸は、お屋敷前をさっと通過しただけ。常盤台写真場、前川國男邸などを覗いて歩きました。

(1)前川國男のアトリエ自邸も、以前は「あら、すてきなおうち」と思って見ただけでしたが、前川の建築作品、東京文化会館、 紀伊國屋書店新宿店、東京都美術館、国際基督教大学湯浅八郎記念館、などを「これが前川作品か」と、意識して見たあとではやはり、眺め方が変わったように思います。



 自邸というのは、建築家がさいしょに自分の腕前を振るう作品なので、個性や建築家の思想までがぎゅうっと詰め込まれた家になります。前川自邸は、ル・コルビジェのもとで働いた前川の個性がおおいに発揮された美しい家。

 1942年、対米戦開戦の翌年、国粋主義一辺倒となる時代にあって。このあくまでも明るい日差し燦々と入り込む開放的な家を建てたこと。暗い時代へと突き進む日本社会の中にあって、どのような思いで前川がこの家をこれほどまでに心広々と広がる、明るい部屋にしたのか。彼の思いが陽の光とともに差し込んでくるような南向きの窓です。



南面いっぱいの窓


(2) 前川邸の隣に移築復元されたのは、田園調布の家、大川邸。


 大川邸は「案外こじんまりとまとまった家だなあ」と感じる間取りでした。


 2013年12月の「日曜地学ハイキング」に参加して田園調布の町並みをはじめて現地で見ました。田園調布は、1925年(大正14)に「郊外住宅」のはしりとして開発された新開地です。「都心に通勤する給与生活者が年収の範囲で持ち家を建てられる住宅地」がコンセプトの住宅地でした。

 久米宏司会「鉄道の百年」という番組を見ました。春庭も「鉄オタ」のひとり(乗り鉄ですが)なので、楽しく見ていたところ、鉄道会社開発の住宅地の話になりました。関西の「新興住宅地」の百年のあゆみを、紹介していて、3歳のとき、親が住宅を月賦で購入した家に入居してから、90年間住み続けている人が登場して家の歴史を語っていました。

 関西の開發に成功した小林一三は、東京の田園調布の開発にあたっても、関東経済界のドンであった渋沢栄一に協力したそうです。住宅地開発の成功パターンを伝授したのです。安い値段のときに周辺の土地を買い占める。鉄道敷設、駅の周辺に住宅を建て、住宅地として売り出す。土地の値段は急騰、という開発パターンを東京でも成功させました。

 関西には90年ものあいだ住み続けた人がいましたが、田園調布に住み続けた人がいたのかどうか、知りたいところです。東京の土地値狂乱は、凄まじかったですから。
 郊外型のこぎれいな住宅地として知れ渡ると、田園調布の土地の値段はどんどん釣り上がり、一般のサラリーマンには相続税が払えなくなる⇒金持ちが買い取る⇒ますます土地の値が上がる、という繰り返しで、今では、田園調布の駅付近では、1平方メートルあたり百万円。とても「都心の会社に通勤する一般の給与生活者」が購入できる家ではなくなりました。

 私は、漫才コンビが金持ちになることの象徴として「田園調布に家が建つ」とギャグで言っていたので、田園調布という地名をしりました。開発当初は「ふつうの街」だったこと、今頃知りました。
 大正末期から昭和にかけての田園調布。むろん、まだまだ裏長屋の店子になるのがほとんどの東京庶民の暮らしぶりから見れば、こじんまりでも田園調布の家はハイレベルなことは間違いないのですが、現在の田園調布は、なんかちょっと敷居が高すぎ。

 夫の友人が田園調布に住んでいて「オレんちは田園調布のなかだと貧乏家だ」と、言っていたので、そう思って遊びに行ったら100坪くらいの家屋敷。その友人は「田園調布で300坪くらいの敷地でないと、肩身狭い思いでご近所付き合いしなきゃならない」と言っていたそうなので、あらま、田園調布に住むのもたいへんなんだわぁと思いました。(すぐ値段の話になるHALの癖です。田園調布の土地、1坪(3.3平方m)あたり300万として、100ツボなら3億円。ひえx~)

 未だに公団団地の2DKに住み続けている我が家としては、田園調布で百坪じゃ肩身狭いなんてこというヤツには回し蹴り食らわせてやりたいですけれどね。まあ、ねたみそねみひがみが私の主食ですから。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする