20140812
ぽかぽか春庭アート散歩>オリエント(3)オリエントの音楽
東洋文庫は、三菱財閥岩崎家の三代目岩崎久弥が、1917年に北京駐在のオーストラリア人G. E. モリソン博士から東アジアに関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点を買い取ったことに始まります。久弥は、日本の古文書収集と合わせ、1924年に東洋研究施設「東洋文庫」を設立しました。
東洋に関する書物100万冊、国宝を含む貴重な書物を所蔵しています。貸し出しはしませんが、無料で閲覧できます。
一般の人が気楽にこれらの書物に触れることができるよう、2011年に東洋文庫ミュージアムがオープンしました。
東洋文庫ミュージアム、最初の見学は2012年の「東インド会社とアジアの海賊」だったと思うのですが、ブログには見学の感想を記録していませんでした。倭寇や東インド会社について学んだことがあったはずなのに、書いておかないと何を見たのかすぐに忘れてしまいます。覚えているのは、はじめて2階のモリソン書庫の開架図書を眺めたときの感慨です。
モリソンが収集した書物たち。眺めているだけで、人類の知の集積に圧倒される思いがしました。今回もやはり、個々の展示もさることながら、このモリソン書庫の本の並びに感銘を受けました。
もし、何かの刑罰を受けて、一生ひとつの部屋に閉じ込められるというのなら、こういう部屋になら閉じ込められても生きていけます。まあ、閉じ込められるようなハメになりたくはないですが。

8月10日、3度目の来館。午後1時からのトルコ民族楽器サズの演奏を50分聞きました。「新オリエント楽派」という演奏集団に所属し、トルコ文化センターなどで、音楽講師をなさっている大平清さんという方です。

大平さんは、トルコに渡って民族楽器サズ演奏を習得したほか、ギリシアのアテネでは、ギリシアの伝統的民族楽器ブズーキ、ギリシア古謡レベティカ、ウイグルの民謡とドタールなど、広くオリエントの民族音楽に精通しています。
ウイグルのドタールを弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=ihQ0SFAlUOs
アゼルバイジャンのサズを弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=OwfDbj9S_Wc&index=24&list=UUpcO-jhLoayN0lb-BCHNH2Q
サズは、撥弦楽器の中では、マンドリンのように丸く膨らんだ胴体をしています。洋梨または卵を縦に半分に切った形。響きは、琵琶に似ていると思いました。
東洋文庫ミュージアムのオリエントホールでの演奏でしたが、私はアラビア書道の会場の2階のレクチャールームに荷物を置いて、オリエントホールを見下ろす2階の渡り廊下で聞いていました。サズの音や大平さんの歌声は2階までよく響いたのですが、楽器紹介や曲目紹介の説明は聞こえませんでした。トルコ音楽の変拍子の話などしていたのは、オーケストラの指揮者のように手を振って解説していたので、わかりましたが。
どうしてオリエントホールで聞かなかったかというと、前回は招待券で入館して、すでにトルコ展は全部見ています。今回、オリエントホールに入場するためだけでも、入館料680円払わなくてはならないというので、「いいや、近くで聞かなくても2階まで吹き抜けのホールなのだから、2階の渡り廊下でも十分に音が聞こえるはず」と思って、680円の入館料をけちったのです。680円あったら、帰りにラーメンの一杯でも食べられる、というせこい精神。そんなせこい私の心ですが、サズのオリエントの響きは、シルクロードのはるかな旅やオリエントの町のにぎわいや、高原で羊の群れを追う遊牧民の広々としたのびやかなイメージを伝えてくれました。
私は小泉文夫の著作などを通じて民族音楽が好きになり、小島美子の授業を受けて民族音楽や民俗芸能について楽しくまなぶことができました。民族音楽や舞踊演劇などを研究できたら楽しいだろうなあと思っていました。文化人類学のフィールドワークがしてみたくて、ケニアに出かけ、「民族芸能学」をやってみたいと思ったのです。ケニアでは、アフリカンダンスのおけいこをしただけで、研究というほどのことはかけらもできませんでしたが。
アフリカやオセアニアの音楽が好きで、中近東の楽器についてはあまり詳しくありませんでした。ウードとサズの違い、なんてのも知らないまま大平さんの演奏を聴きました。
サズは、吟遊詩人が歌いながら演奏したという点も琵琶法師が平家物語などを語りながら演奏したのと似ています。日本の舞楽は、中国経由で胡楽すなわちペルシャなどオリエントの音楽舞踊が伝わったものですから、サズの響きがどこかなつかしく感じられる音であるのも当然なのでしょう。
サズ(saz)を弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=fNoZEeemANs
トルコ、ウイグル、アゼルバイジャンなど、シルクロードの音、オリエントの調べ、すてきな音楽でした。
オリエントの音楽を堪能している間、オリエントホールの中庭に面した全面ガラス張りの南面には、激しい雨が打ち付けていました。家を出るときは目の前が真っ白になるほどの雨で、行くのをやめようかと思っていたのですが、駒込駅に着いたら、雨は小やみになっていて10分ほど東洋文庫に向かって歩いている間は傘をささずに歩けたのに、やはり台風の影響は強いなあと、ガラス窓の雨を眺めていました。
夜のニュースで大雨による二階までの浸水やら竜巻による被害などを報じていて、やはり今回の台風も大きな影響があったのだと知りました。
被害を受けた方にはお見舞い申し上げます。東京で音楽を楽しんでいて申し訳なかったけれど、帰るときも、駒込駅まで歩く間は雨は小やみになっていたので、それほど大きな被害が出ているとは思いませんでした。
暦の上では秋になっていますが、まだまだ暑さや台風に気をつけねば。
<つづく>
ぽかぽか春庭アート散歩>オリエント(3)オリエントの音楽
東洋文庫は、三菱財閥岩崎家の三代目岩崎久弥が、1917年に北京駐在のオーストラリア人G. E. モリソン博士から東アジアに関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点を買い取ったことに始まります。久弥は、日本の古文書収集と合わせ、1924年に東洋研究施設「東洋文庫」を設立しました。
東洋に関する書物100万冊、国宝を含む貴重な書物を所蔵しています。貸し出しはしませんが、無料で閲覧できます。
一般の人が気楽にこれらの書物に触れることができるよう、2011年に東洋文庫ミュージアムがオープンしました。
東洋文庫ミュージアム、最初の見学は2012年の「東インド会社とアジアの海賊」だったと思うのですが、ブログには見学の感想を記録していませんでした。倭寇や東インド会社について学んだことがあったはずなのに、書いておかないと何を見たのかすぐに忘れてしまいます。覚えているのは、はじめて2階のモリソン書庫の開架図書を眺めたときの感慨です。
モリソンが収集した書物たち。眺めているだけで、人類の知の集積に圧倒される思いがしました。今回もやはり、個々の展示もさることながら、このモリソン書庫の本の並びに感銘を受けました。
もし、何かの刑罰を受けて、一生ひとつの部屋に閉じ込められるというのなら、こういう部屋になら閉じ込められても生きていけます。まあ、閉じ込められるようなハメになりたくはないですが。

8月10日、3度目の来館。午後1時からのトルコ民族楽器サズの演奏を50分聞きました。「新オリエント楽派」という演奏集団に所属し、トルコ文化センターなどで、音楽講師をなさっている大平清さんという方です。

大平さんは、トルコに渡って民族楽器サズ演奏を習得したほか、ギリシアのアテネでは、ギリシアの伝統的民族楽器ブズーキ、ギリシア古謡レベティカ、ウイグルの民謡とドタールなど、広くオリエントの民族音楽に精通しています。
ウイグルのドタールを弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=ihQ0SFAlUOs
アゼルバイジャンのサズを弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=OwfDbj9S_Wc&index=24&list=UUpcO-jhLoayN0lb-BCHNH2Q
サズは、撥弦楽器の中では、マンドリンのように丸く膨らんだ胴体をしています。洋梨または卵を縦に半分に切った形。響きは、琵琶に似ていると思いました。
東洋文庫ミュージアムのオリエントホールでの演奏でしたが、私はアラビア書道の会場の2階のレクチャールームに荷物を置いて、オリエントホールを見下ろす2階の渡り廊下で聞いていました。サズの音や大平さんの歌声は2階までよく響いたのですが、楽器紹介や曲目紹介の説明は聞こえませんでした。トルコ音楽の変拍子の話などしていたのは、オーケストラの指揮者のように手を振って解説していたので、わかりましたが。
どうしてオリエントホールで聞かなかったかというと、前回は招待券で入館して、すでにトルコ展は全部見ています。今回、オリエントホールに入場するためだけでも、入館料680円払わなくてはならないというので、「いいや、近くで聞かなくても2階まで吹き抜けのホールなのだから、2階の渡り廊下でも十分に音が聞こえるはず」と思って、680円の入館料をけちったのです。680円あったら、帰りにラーメンの一杯でも食べられる、というせこい精神。そんなせこい私の心ですが、サズのオリエントの響きは、シルクロードのはるかな旅やオリエントの町のにぎわいや、高原で羊の群れを追う遊牧民の広々としたのびやかなイメージを伝えてくれました。
私は小泉文夫の著作などを通じて民族音楽が好きになり、小島美子の授業を受けて民族音楽や民俗芸能について楽しくまなぶことができました。民族音楽や舞踊演劇などを研究できたら楽しいだろうなあと思っていました。文化人類学のフィールドワークがしてみたくて、ケニアに出かけ、「民族芸能学」をやってみたいと思ったのです。ケニアでは、アフリカンダンスのおけいこをしただけで、研究というほどのことはかけらもできませんでしたが。
アフリカやオセアニアの音楽が好きで、中近東の楽器についてはあまり詳しくありませんでした。ウードとサズの違い、なんてのも知らないまま大平さんの演奏を聴きました。
サズは、吟遊詩人が歌いながら演奏したという点も琵琶法師が平家物語などを語りながら演奏したのと似ています。日本の舞楽は、中国経由で胡楽すなわちペルシャなどオリエントの音楽舞踊が伝わったものですから、サズの響きがどこかなつかしく感じられる音であるのも当然なのでしょう。
サズ(saz)を弾く大平清さん
http://www.youtube.com/watch?v=fNoZEeemANs
トルコ、ウイグル、アゼルバイジャンなど、シルクロードの音、オリエントの調べ、すてきな音楽でした。
オリエントの音楽を堪能している間、オリエントホールの中庭に面した全面ガラス張りの南面には、激しい雨が打ち付けていました。家を出るときは目の前が真っ白になるほどの雨で、行くのをやめようかと思っていたのですが、駒込駅に着いたら、雨は小やみになっていて10分ほど東洋文庫に向かって歩いている間は傘をささずに歩けたのに、やはり台風の影響は強いなあと、ガラス窓の雨を眺めていました。
夜のニュースで大雨による二階までの浸水やら竜巻による被害などを報じていて、やはり今回の台風も大きな影響があったのだと知りました。
被害を受けた方にはお見舞い申し上げます。東京で音楽を楽しんでいて申し訳なかったけれど、帰るときも、駒込駅まで歩く間は雨は小やみになっていたので、それほど大きな被害が出ているとは思いませんでした。
暦の上では秋になっていますが、まだまだ暑さや台風に気をつけねば。
<つづく>