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ぽかぽか春庭「お盆の愚痴まいり」

2014-08-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20140819
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十四事日記8月(2)お盆の愚痴まいり

 8月15日は、姑の家へお盆のお線香を立てに行きました。
 夫と姑は意見一致していて、ふたりとも宗教を一切気にしない人です。舅の遺骨も「ふるさとのお寺の本家の墓に」と親戚が言っても、遠くの本家よりどこでもいいから近くのお寺」と、都内のお寺に納めましたが、そのお寺が何宗であろうと関係なし。

 お盆にご先祖の魂が帰ってくる、という仏教伝来以前の日本の古い習俗についても、そう思いたい人が信じていればそれでよい、というクールなスタンスです。夫も姑も、お墓に迎えに行っても行かなくても、帰りたい魂なら帰ってくるんだろ、というか、そもそも死後の魂というのをあまり信じていない。舅の法事はきちんとやるけれど、それは生きている人たちの集まりのひとつとして行うのです。

 門の前で迎え火をたいてご先祖を迎えた田舎の習慣を見て育った私からみると、「何もしなくても帰りたければ、勝手にかえってくるだろう」という都会の考え方、さいしょはびっくりしましたが、お正月の年神様のお迎えもしない都会ですから、お盆もこんなものなのか、と、だんだん慣れました。

 姑の家は一戸建てですが、マンション暮らしの都会の人は、どのようにして迎え火をたくのでしょうか。私の住む団地では、広場で花火をするのも禁止されて久しく、ドアの前で火なぞたいたら、消防署に通報されてしまいます。

 姑との話題は、お盆前、8月12日に行われた夫の目の手術について。姑も10年以上前に白内障の手術をして、よく見えるようになった、と経験済みなので、夫が白内障の手術を受ける、ということを打ち明けられても、まったく心配はしていなかったようです。
 歯医者の治療を受けるのと同じくらい、という感覚です。

 でも、風邪引いても医者に行きたがらない医者嫌いの夫にとっては、「手術」というだけで、とても不安だったらしく、「盲腸の手術と同じようなものなんだって。目の手術の中では一番簡単な手術ですぐ終わるから、病院に来なくてもいい」ということを何度も念を押すのです。

 娘は「こんなに何度も、こなくてもいいって言うってことは、ほんとうは来てほしいのかもね」と、いつもの夫の反語法をおもんぱかって「病院に行ったほうがいいのかなあ」と案じています。
 結局のところ、手術の日12日、12時の面会が開始されてから1時間ほどは息子が病室に行き、私と娘は1時半から5時半まで、手術前の不安に陥りそうな夫の話し相手をしていました。手術が終わってから、「ほんとはとても不安に感じた」と、娘には打ち明け話。私にはそんな弱音は吐かずに「お見舞いに持ってきてくれたみかん、ありがと」と言っただけ。

 夫が妻に「ありがと」なんて言ったことはないので、これはよほど感謝の念を持ったに違いない、と、私が感想を述べると、息子は「あ、それって、DVバタード妻が、酔うと殴ったりするけれど、酔ってないときは、ほんとは優しい人なんです、ってアル中夫をかばう時の心理と同じだ。たまにありがとうと言われたくらいで、ほだされちゃいけない」と、冷静なおことば。

 息子は、私と娘が行く前に見舞いに行ってあげているのです。父らしいことは何ひとつしてくれなかった父親なのに、なんてけなげな親孝行息子でしょう。
 これも皆、女手ひとつで育てた母親(私!)の育て方がよかったからでしょう。と、姑に言いたい。姑は、女手ひとつの家庭だったと思っていなので、言わないけど。 

 日帰りでもできるという手術ですが、夫にとっては生まれて初めての体にメスが入る体験なので、大事をとって2泊3日の入院ということになりました。
 見えにくくなっている右目を手術し、経過を見て、まだ見えにくくはなっていない左目の手術も9月に予定されています。
 退院したその日からすぐに「仕事が3日分たまっちゃったから、大忙し」という夫ですが、お盆のうちは取引先も仕事を依頼してこないですから、いつもよりはゆっくりできるでしょう。

 姑は、足腰弱り、娘が介助していっしょに出かけるのでないと、買い物に出かけるのもおっくうになってきていました。今の楽しみは、自宅から100メートルのところにローソンが開店したので、そこまでなら買い物に行けること。

 娘、息子といっしょに「おばあちゃん、ローソンに行こう」と、買い出しに誘いました。ローソンの品揃えですから、大量に商品があるスーパーのようには品選びも時間がかからないだろう、と思ったこちらが甘かった。豆腐ひとつ買うにも、納豆を買うにも、どうしようかと迷いに迷い、ものすごく時間がかかります。ほかには、ナスが2個入ったパック、和菓子2個、パック入りの煮物、寿司折り、おにぎりなどなど。コンビニの品が珍しいうちは、あれこれ買うのも楽しみになるので、よかったけれど。

 私と息子が、「おばあちゃんの買い物付き添い、もう飽きた」と言うと、娘は「何いってんの、私は毎週病院付き添いでずっとおばあちゃんの無限ループ昔語りにつきあって、買い物につきあっているんだからね」

 ばあちゃん孝行な孫娘を持って、姑も幸福な晩年と思いますが、娘は「おばあちゃんの話を聞いていると、おばあちゃんの思考法では、一番大切なのは跡取り息子で、その次に大切なのは息子の後を継ぐ孫息子なの。孫娘なんて、いずれ他家の人になると思っていて、どうでもいい存在みたいよ」

 姑は、娘(夫の姉)が勝手な恋愛をして売れない翻訳家と結婚し、50歳で病死してしまったことを、今でも恨みに思っていて、娘にむかって「親が喜ばないような結婚をしちゃだめよ」と言いつのります。

 姑には安心してもらいましょう。「母親を見ていれば、苦労ばかりの結婚をして人生を歩くってのが、どういう現実であるか、重々承知しているから、うちの娘、まだまだ結婚したいなんていう気にならないみたいですから、ご安心を」

 夫は18日に診察を受け、手術後の経過はまったく心配なく、普通に生活して大丈夫と言われたそうです。でもまだ顔を洗ったりシャンプーしたりするのは、目に水がはいるのが心配でやっていない、という報告。

 自分でシャンプーできないなら、その間は美容院へ行ってシャンプーだけしてもらえばよい、とアドバイスしたのだけれど、「せっかくドライシャンプーの瓶をあなたに買ってもらったのだから、当分これを使うよ」と言います。今時、男の人が美容院へ行くのって、ごく普通のことなのに、やったことのないことはしたがらない、昭和の男。

 18日月曜日には、私も目の検診をうけました。眼底の写真などをとり、今のところ異常なし。ほっとしました。

<つづく>
コメント (6)
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