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ぽかぽか春庭「私は見た-ゴヤ in 西洋美術館」

2014-08-17 00:00:01 | エッセイ、コラム
20140817
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十四事日記8月(1)私は見た-ゴヤ in 西洋美術館

 8月8日、息子が「期限が今日までの美術館招待券をもらってあったのを忘れていたんだけれど、母上、エジプト展見たいならあげようか」と、言います。「息子くんからゆずってもらわんでも、私もエジプト展の招待券もらってあったな。えっと、招待券有効期限は、あらま、今日までだ」
 展覧会の会期は9月23日までなので、油断していました。

 せっかくの招待券無駄にするところでした。
 盛りつけて出された食べ物を残すことができません。これは、子供の頃「おかわり」と言っておかわりもらったあと、食べ物を残したりすると、父に「自分の腹にあとどれだけ入るか考えもせずにおかわりするな」と、ひどく叱られたことが原因だろうと思います。もらったものを無駄にすることに罪の意識を持ってしまうのです。もらった招待券、時間がなくて無駄にすることも、食べ物を残したのと同じように悪いことをした気分になるのです。

 というわけで、ふたりそろって東京都美術館のエジプト展を見に行くことになりました。娘は、毎週金曜日は、おばあちゃんの歯医者さん付き添いの日。「ふたりは美術館で、私だけ病院なんておもしろくな~い。ふたりでレストランに入ってランチとかおいしいもの食べたら許さないからね。マックでチキンナゲットでも食べなさい」と、むくれています。

 まあ、マクドナルドの中国産消費期限切れチキンナゲットを食べても、私の鉄の胃袋なら消化できるから大丈夫とは思ったけれど、上野駅公園口にはマックがない。東京都美術館手前にあるスターバックスで息子と待ち合わせて、コーヒーとサンドイッチでランチ。

 息子は、東京都美術館に入るのは初めてだと言っていました。息子は、学部授業の学芸員養成講座のティーチングアシスタントをしているので、江戸東京博物館、東京国立博物館、佐倉の歴史博物館などには学生を引率して毎期行くことになっているのだけれど、美術館の方は、足を運ぶ機会がなかった、と言うのです。

 東京都美術館の古代エジプト展、平日金曜日でしたが、そこそこの人出。土日だと混み混みで、人混みがきらいな息子は見ていられなかったかもしれません。
 「古代エジプト展女王と女神」の見学レポートは8月14日にUPした通りです。

 東京都美術館を出たあと、息子は「科学博物館で太古の哺乳動物展を見たい」と言います。私もサーベルタイガーだのナウマンゾウだのに興味津々でしたが、あいにく招待券は手に入っていない。特別展なのでふたりで3800円の出費になり、我が家にとってはぜいたく出費です。姉娘に相談しないで先に見ちゃったりするとあとで「私も行きたかったのに」と、むくれるだろうから、今回はパス。

 そこで、息子に「西洋美術館を見よう」と、誘いました。西洋美術館の通常展は、学生証を持っている息子は130円で入館できます。息子は、東京国立博物館の日本画は、屏風絵など歴史の研究に必要なこともあり、見ていますが、西洋美術館は日本史にあまり関係ないので、一度も見たことがない、というのです。

 「日本史には直接の関わりがなくても、たとえばポルトガル宣教師がはるばる東の果てにやってきた精神を知るのに、キリスト教絵画を見ておくことは、必要だと思うよ。つうか、なんでもいいから、とにかく美術の教科書に載っているような作品、一度は本物を見ておきなさい」とすすめて、強引に連れて行きました。

 西洋美術館の通常展示、1階の最初はロダンの彫刻の部屋。ロダンのバルザック像を見ても、息子は「バルザックというのは、音楽家だっけな」と言います。「19世紀フランスの小説家。代表作は、人間喜劇、谷間の百合」と解説してやっても、「まったく知らない」と、そっけない。
 若者にとっては、バルザックといえば、「ドラゴンクエストモンスターズ」の魔獣のことを指すらしい。

 2階は、最初はキリスト教美術が続きます。祭壇画だのイコンだの。
 ルーベンス「眠る二人の子供」を見て、息子は「フランダースのネロがあれほど見たがった画家の絵だから、すごい絵なんだろうけど、この子たち、あんまりかわいくない」と、私が最初にこのルーベンスを見て感じたのと同じことを言う。親子だね。それにしても、ルーベンスといえば、「ネロが死ぬ前に見上げた絵」くらいしか思い浮かばないのは、うちのアホ親子だけ?

ルーベンス「眠る二人の子供」

 この子供は、ルーベンスの兄さんの子だそうですから、ルーベンスもかわいい子だと思って描いたのでしょうが。

 2002年にオークションに出されたルーベンスの「幼児虐殺」は5000万ポンド(85億円)で落札されたのですから、かわいいと思えなくたって「眠る二人の子供」をくれるといわれたら、もちろんもらいますけれど。どうも、値段で絵を見る貧乏性が抜けません。

 ぐるりと西洋美術史をめぐって、アングル、ダビッドを経て印象派になってくると、ようやく息子にも「あ、この絵知っている」とか「この人、知ってる」という画家が出てきます。

 近代美術館や西洋美術館が好きなのは、著作権が切れていて、当館所蔵の作品は写真撮影ができるところ。フラッシュは禁止ですけれど。
 図録を買えばいいのに、ケチるから、出品目録をもらって家に帰ると、もう忘れてしまって、絵とタイトルが結びつかない。で、絵とタイトルを続けて写して帰れるのはありがたい。

 私にとって今回の展示で一番よかったのは、常設展企画として、版画展示室にゴヤの版画が出ていたこと。とても充実した展示でした。
 フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス(1764-1828)


 忘れないうちに、印象に残った絵とタイトルをUPしておきましょう。

ゴヤ「ロス・カプリーチョス43理性の眠りは怪物を生む」


ゴヤ「戦争の惨禍50かわいそうなお母さん」


 前庭に出て、ロダンの「考える人」やブールデルの「弓を引くヘラクレス」を見て、うん、これで西洋美術史に関して、息子に一通りの目の保養をさせてやれたわい、と思いましたが、息子は「ひとりでもう一度来ようと思うほど、絵が好きじゃない」と、つれないことを言っていました。
 西洋美術館で息子とデートするのは、これが最初で最後なのかもしれません。

 帰りは、上野駅のエキナカショップへ。「私は病院でおばあちゃんの相手なのに」とむくれている娘、病院付き添いにがんばったことへのおみやげに、娘の好物メルヘンのフルーツサンドイッチを買いました。娘が一番好きという夏みかんサンドと夏の新メニュー、山形ピオニーネ。息子はブルーベリークリームをチョイス。絵よりも、フルーツサンドイッチの方がうれしい息子でした。

<つづく>
コメント (4)
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