20150321
ミンガラ春庭ミャンマー便り>3月ヤンゴン出張(2)ミャンマー本
ヤンゴン行きが決まったので、にわか勉強開始。
私はぐうたら人間ですが、本を読むのは好き。今回もミャンマー赴任が決まったら、まずはミャンマーが出てくる本を古本屋で買ってきました。古本屋にあったのは、定価半額の「ミャンマー経済で儲ける5つの真実」と、100円本の「アジアパー伝」「アヘン王国潜入記」
いや、別にミャンマーで儲けるつもりはないんだけれど、と思いながらも読んでみると、経済発展が急速に進むと予測されるミャンマーでひと儲けしようかという日本のビジネスマンにむけて、ミャンマー事情をおおざっぱに知らせる内容でした。ミャンマーの情勢を知る入門書的。
「アジアパー伝」は、漫画家西原理恵子の夫、鴨志田穣(1964-2007)が、いきなりカメラマンに採用され、カンボジア内戦を取材したときの話。素人の鴨志田をカメラマンとして採用した「師匠」は、フリージャーナリストのハシダさん。
橋田信介(1942-2004)、ベトナム戦争、カンボジア内戦、ビルマ動乱などの取材を続け、2004年にイラクのバクダッドで爆撃を受けて死亡。享年61歳。
鴨志田穣は、内戦取材の極度の緊張をほぐすために飲酒をかさね、アルコール依存症に。
妻、西原とは離婚。しかし癌になってからは、元妻の看病を受け、2007年死去。このへんのいきさつは映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう』に描かれています。鴨を演じたのは浅野忠信。浅野ファンだったから、見ました。西原役は小泉キョンキョン。(と、おもいこんでいたのだけれど、永作博美でした。記憶にたよって書くと必ず間違える。検索確認必須)
もう一冊。高野秀行『アヘン王国潜入記』。
30年前、結婚後、娘は2歳。夫はチェンマイから山岳地帯の取材ができないかという気持ちでタイに出かけました。ゴールデントライアングルと呼ばれる、タイ、ラオス、ビルマ三国の国境奥地は、山岳民族が独自の生活を営み、アヘン栽培によって生活をたてていました。
夫は、その山岳地帯に入ろうと誘われたのです。しかし、奥地に入る直前。日本に残してきた娘の顔が浮かび、潜入をあきらめた、と帰国後話しました。
もし、このとき独身だったら、夫は山岳地帯に入ったかもしれず、その後、橋田信介さんや、長井健司さん(1957-2007 ヤンゴン取材中に射殺。享年50歳)、後藤健二さん(1967 - 2015年1月30日イスラム国により殺害)のように、戦争報道に命をかけるフリージャーナリストに、結婚前の希望通りに、なれたのかもしれません。
でも、夫は私と結婚しました。娘の父親になりました。
もし、夫が紛争地域危険地域というところに入って死亡した場合、私は橋田夫人や後藤夫人が毅然として夫の死を受け入れたようにはいかなかったことでしょう。泣きわめいて、政府対応の不備を非難してやまなかったかも。
妹も友人達も、私が「夫を甘やかしてきた」と非難します。夫が稼いだお金は夫が自分のためだけに使い、子どもの生活費は妻が働いてほそぼそ支えるという家庭のあり方は、確かに妻側からみれば「家庭放棄の父親」なのです。でも、「夫が外で稼ぎ、妻が家事育児を担当して内助の功で支える」という家庭だけが家庭のあり方ではない、と思って過ごしてきたのも事実。
30年前に戻って、戦場ジャーナリストになりたい、アヘン栽培地域に潜入したいという夫を笑顔で「じゃ、行ってらっしゃい、気をつけて」と送り出し、死体を引き取りに飛行機に乗る妻に私がなれたかというと、そんなことはない。「何もしてくれなくてもいいから、死なないで、父親として生きていて」と懇願したことでしょう。実際30年間、何もしてくれない父親でしたが。
「夫を報道人として戦場に送り出すことができなかった妻」という負い目が、私を「夫に生活費を請求しない妻」にさせたのです。
「ゴールデントライアングルを目の前にして潜入をしない」ことを決意したのは夫ですが、私と娘がいなければ、夫の人生は別のものになったのかもしれない、という思いがあったために、私は「夫は死んでないけれど、私は未亡人」という立場に自分を置くことになったのだと思います。
でも、もし夫がゴールデントライアングルに潜入したとすれば、たぶん「最初に殺されちゃう人」になっただろうな。器用にたちまわることはできない人だから。
娘息子が自立したら「はい、今日からあなたは自由人。戦場へでも火星へでも、好きな所に行ってね」と言おうと思っていたのですが、娘30をすぎ息子26歳になっても、母の細腕にぶらさがるパラサイトシングル。なかなか思う通りには人生すすみません。
でも、とにかくパラサイトシングルを食わせていく仕事は確保しなければ。
ヤンゴンは、暑い。しかるにとにかく下見だ。
(まだインターネット接続事情もよくないというヤンゴンなので、ヤンゴン報告は帰国後4月にUPします。)
<つづく>
ミンガラ春庭ミャンマー便り>3月ヤンゴン出張(2)ミャンマー本
ヤンゴン行きが決まったので、にわか勉強開始。
私はぐうたら人間ですが、本を読むのは好き。今回もミャンマー赴任が決まったら、まずはミャンマーが出てくる本を古本屋で買ってきました。古本屋にあったのは、定価半額の「ミャンマー経済で儲ける5つの真実」と、100円本の「アジアパー伝」「アヘン王国潜入記」
いや、別にミャンマーで儲けるつもりはないんだけれど、と思いながらも読んでみると、経済発展が急速に進むと予測されるミャンマーでひと儲けしようかという日本のビジネスマンにむけて、ミャンマー事情をおおざっぱに知らせる内容でした。ミャンマーの情勢を知る入門書的。
「アジアパー伝」は、漫画家西原理恵子の夫、鴨志田穣(1964-2007)が、いきなりカメラマンに採用され、カンボジア内戦を取材したときの話。素人の鴨志田をカメラマンとして採用した「師匠」は、フリージャーナリストのハシダさん。
橋田信介(1942-2004)、ベトナム戦争、カンボジア内戦、ビルマ動乱などの取材を続け、2004年にイラクのバクダッドで爆撃を受けて死亡。享年61歳。
鴨志田穣は、内戦取材の極度の緊張をほぐすために飲酒をかさね、アルコール依存症に。
妻、西原とは離婚。しかし癌になってからは、元妻の看病を受け、2007年死去。このへんのいきさつは映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう』に描かれています。鴨を演じたのは浅野忠信。浅野ファンだったから、見ました。西原役は小泉キョンキョン。(と、おもいこんでいたのだけれど、永作博美でした。記憶にたよって書くと必ず間違える。検索確認必須)
もう一冊。高野秀行『アヘン王国潜入記』。
30年前、結婚後、娘は2歳。夫はチェンマイから山岳地帯の取材ができないかという気持ちでタイに出かけました。ゴールデントライアングルと呼ばれる、タイ、ラオス、ビルマ三国の国境奥地は、山岳民族が独自の生活を営み、アヘン栽培によって生活をたてていました。
夫は、その山岳地帯に入ろうと誘われたのです。しかし、奥地に入る直前。日本に残してきた娘の顔が浮かび、潜入をあきらめた、と帰国後話しました。
もし、このとき独身だったら、夫は山岳地帯に入ったかもしれず、その後、橋田信介さんや、長井健司さん(1957-2007 ヤンゴン取材中に射殺。享年50歳)、後藤健二さん(1967 - 2015年1月30日イスラム国により殺害)のように、戦争報道に命をかけるフリージャーナリストに、結婚前の希望通りに、なれたのかもしれません。
でも、夫は私と結婚しました。娘の父親になりました。
もし、夫が紛争地域危険地域というところに入って死亡した場合、私は橋田夫人や後藤夫人が毅然として夫の死を受け入れたようにはいかなかったことでしょう。泣きわめいて、政府対応の不備を非難してやまなかったかも。
妹も友人達も、私が「夫を甘やかしてきた」と非難します。夫が稼いだお金は夫が自分のためだけに使い、子どもの生活費は妻が働いてほそぼそ支えるという家庭のあり方は、確かに妻側からみれば「家庭放棄の父親」なのです。でも、「夫が外で稼ぎ、妻が家事育児を担当して内助の功で支える」という家庭だけが家庭のあり方ではない、と思って過ごしてきたのも事実。
30年前に戻って、戦場ジャーナリストになりたい、アヘン栽培地域に潜入したいという夫を笑顔で「じゃ、行ってらっしゃい、気をつけて」と送り出し、死体を引き取りに飛行機に乗る妻に私がなれたかというと、そんなことはない。「何もしてくれなくてもいいから、死なないで、父親として生きていて」と懇願したことでしょう。実際30年間、何もしてくれない父親でしたが。
「夫を報道人として戦場に送り出すことができなかった妻」という負い目が、私を「夫に生活費を請求しない妻」にさせたのです。
「ゴールデントライアングルを目の前にして潜入をしない」ことを決意したのは夫ですが、私と娘がいなければ、夫の人生は別のものになったのかもしれない、という思いがあったために、私は「夫は死んでないけれど、私は未亡人」という立場に自分を置くことになったのだと思います。
でも、もし夫がゴールデントライアングルに潜入したとすれば、たぶん「最初に殺されちゃう人」になっただろうな。器用にたちまわることはできない人だから。
娘息子が自立したら「はい、今日からあなたは自由人。戦場へでも火星へでも、好きな所に行ってね」と言おうと思っていたのですが、娘30をすぎ息子26歳になっても、母の細腕にぶらさがるパラサイトシングル。なかなか思う通りには人生すすみません。
でも、とにかくパラサイトシングルを食わせていく仕事は確保しなければ。
ヤンゴンは、暑い。しかるにとにかく下見だ。
(まだインターネット接続事情もよくないというヤンゴンなので、ヤンゴン報告は帰国後4月にUPします。)
<つづく>