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ぽかぽか春庭「2003年のピンポン」

2015-09-22 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150922
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003三色七味日記9月(8)2003年のピンポン

 2003年の三色七味日記9月再録をつづけています。

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2003/09/23 火 晴れ 
ジャパニーズアンドロメダシアター>『ピンポン』

 台風一過で、空は秋の鱗雲。

 夜、テレビ放映の「ピンポン」を見た。
 原作、ビッグコミックスピリット連載中、娘は毎週見ていたが、私は読んでいなかった。松本大洋のくせの強い絵柄と相性が悪いので。『鉄コン筋クリート』のときも、内容は面白かったから途中まで連載を読んでいたが、途中で絵柄に疲れた。ピンポンも同じ。

 だから、脚本クドカン、ペコ窪塚洋介、ドラゴン中村獅童の組み合わせに大いに期待してみた。卓球場のオババ夏木マリも、コーチ、バタフライジョーの竹中直人も好きだし。

 結論、面白かった。監督はまったく知らない人だったが、CG画面の使い方もよかった。ピンポンをちょっとでもやったことのある人にとって、試合CGシーンがしらけるんじゃないかと心配していたが、すくなくとも、私のような「温泉ピンポン」程度の人間には、「アリエネー」としらけるより、「スゲー」と喜んでいられる程度のCG。もちろん実際にはアリエネー!なんだけど。ちゃんと、卓球の技術指導者が参加しているなって、感じるCGだった。

 そして、いつものことながら、私は敗者が好きなのだ。「こんなに努力したのに、どうして俺じゃなくて、スマイルなんだ!」と卓球をあきらめる「神に好かれなかった子」のアクマ君。ニヒルに「努力?天分の問題でしょ」と、軽くいなす天才スマイル君よりも、「こんなに!こんなに卓球大好きでがんばったのに!」才能なく破れていくアクマに「オトモダチ」を、感じました。連帯!
 スマイル対アクマ、アマデウス・モーツァルト対アントニオ・サリエリ。

本日のうらみ:神はどうして、えこ贔屓が強いんだ!私ども下々の教師にとって、クラス内で贔屓は御法度なのにさ


2003/09/24 水 曇りのち雨9
ニッポニア教師日誌>後期最初の授業

 日本語教育研究クラス第一日。春学期のメンバーの半分が残った。新顔に、Bの単位を取っていない人にはご遠慮願っていますという。何人かは教室を出ていった。

 ラポール形成ワークショップとして、エンカウンター改良版。私流エンカウンターに、ヒメから仕入れたネルトンお見合い方式を加えて実施。
 ひとり、「Bの単位未取得だが、どうしても日本語教員養成クラス修了証がほしい。このクラスをとらないと単位が足りない」という女子学生がねばっている。しかたがないので、「そのかわり、Bでやったことは全部習得済みと見なすから、日本語教育用語は、自分で覚えてください。日本語文法の本を一冊読んで、要約レポートを提出」を言い渡す。

 夏休み前に、Bクラス全員に「Cクラスを受講する人は、日本語教室見学レポート」を提出するように言ったが、今日提出したのは、多摩川おじさんと、ホイさんだけ。
 エンカウンター、学生には好評だった。自己紹介、クラスメートとの交流、グループ作り。発表順番決め。

 途中、助教授が教室にやってきて、「BクラスとCクラスは、どちらを先にとってもいいことになっている。Bの単位未取得者でもCクラスに登録できることは、学科の方針で決められていることなので、勝手に仕切るな」といわれた。

 ま、登録するのは勝手だが、私がやりずらいのよ、日本語教育のイロハを分っていない学生が混ざるのは。もっとも、春学期にBクラスをとった学生だって、授業でやったことをちゃんと理解した学生は半分もいないだろうし、理解したことを夏休みを経ても覚えている学生はもっと少ない。
 「最初にラポール形成ワークショップをやります。ラポールって、なんだっけ」ときくと、覚えていたのは半分。
 ラポール形成して、ピアラーニングって、流行ってきた。時代が私に追いついてきたんだよ。

 出席カードに、いつもの「声だしポイント欄」と、「今日のアピール」欄を設けた。今日一日の授業の印象、感想、自己アピールのコメント欄。「今日も楽しく授業が受けられました」「先生の話、大いに笑いました」などの感想。
 自分をトリックスターにして、クラス内に笑いを満たす努力も知らず、「バカばっかり言うせんせ」と思われているのだが、いいんです。私は重厚長大な学者ではなく、一介の語学教師。おバカが「ウリ」です。

 一番受けたのは、私の新キャッチコピー。自己紹介の例として、「自分のキャッチコピーをつけてください。春学期、私のコピーは何でしたか」
 学生「ええっと、転職7回、、、だっけ」
 「ちがうでしょ、卒業7回、転職13回、です。音声表現大会で、私、ケニアに行った話をしましたね。アフリカに着いた初日に迷子になって、道案内してくれた男と結婚したって。秋学期の、新コピーはこうです。ナイロビで、迷子になって、愛を拾った。いまでは愛が迷子になってる」
 みんな大笑いだった。

 一昨年に教えた男子学生が教室の外で、授業が終わるのを待っていた。3月の卒業を単位不足でのがし、今日は、「9月卒業式」なんだって。袴姿の女子学生を構内で見かけたので、何事かと思ったら。半年遅れても、めでたい卒業。
 卒業後は、大学経営の生涯教育施設、カルチャーセンターだか、エクステンションセンターだか、そういうようなところで働くという。「おめでとう、よかったね」

 指導教官のところならいざ知らず、1年間授業でいっしょだっただけの非常勤講師の所まで挨拶に来てくれて、こちらも感激。しばらく話していたが、Bクラスを取らずにCクラスを受講するという学生に、Bで配布したテキストプリントを渡す約束をしたので、講師室に戻る。

本日のひがみ:冗談聞いて笑ってるだけでなく、教授法もおぼえてね

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20150922
 担当の授業が終わり、業務報告書執筆とか、新年度カリキュラム作成とかのデスクワークになったので、気分はとても楽。デスクワークが嫌いな人もいるけれど。

 その点、デスクワークは、業務報告書を書くにしても、やったことを書けばいいのだから、こんな楽なことはない。私、ワープロの早さだけは自慢だからね。私の転職経験のなかでも、「汽船会社での英文タイピスト」というのは、一生役立つ技能になった。

 私もパソコン、コピー機その他の機器に弱いアナログ人間だけれど、75歳のボスは私以上にアナログ。現在ではビルマ文字のタイプ打ちがパソコンで出来るのに、ボスは手書きでビルマ文字を書き、それをビルマ文学科の若手教師たちにタイプ打ちしてもらう。
 
 私がA4用紙一枚にまとめてしまったカリキュラムを見て、ボスは「お断りしておきますが、これをビルマ語翻訳すると、タイプで打ち直してもらっても、とてもA4一枚にはおさまりません」と、申し訳なさそうにおっしゃる。いやあ、紙は何枚だろうと、お好きなように訳してください、と思う。そもそもビルマ学碩学の名誉教授に「日本語教育カリキュラムの翻訳」というような仕事をお願いするだけで恐縮しているのに。

<つづく>
コメント (5)
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