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ぽかぽか春庭「2003年の101歳大往生」

2015-09-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150923
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>2003三色七味日記9月(9)2003年の101歳大往生

 2003年三色七味日記9月を再録しています。
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2003/09/25 木 雨 
ニッポニア日本事情>101歳大往生

 夜、有馬秀子の訃報。享年101歳。9月19日まで、銀座のバー「ギルビーA」のママとして、働いていたそうだ。そのあと具合が悪くなり、25日に死去。なんて見事なんだろう。ギルビーAで飲むような高級なお酒は我が家にないけれど、秀子さんの一生に乾杯!拍手!!
 おお、それに、本日は21世紀が始まってから1000日たったところだ。切りのいい日。
20世紀を98年、21世紀を1000日生き抜いた有馬秀子さん、安らかに。

 9月はじめには、レニ・リーフェンシュタールが101歳で亡くなった。(現地時間9月8日)
 私がレニを知ったのは、映画『意志の勝利ベルリンオリンピック』をリアルタイムで見たからじゃない。いくら私が「学生からみたらおばあさん」でも、そこまではさかのぼれない。

 1979年、ケニアに出発する前、アフリカに関係する本をいろいろあさった。その中で一番感激した本が『NUBA』だった。80年の日本での写真展『ヌバ』は見ていない。
 レニは、「ナチ協力者」などの汚名をこの一冊で払拭した。すばらしく美しい写真だった。その後の海中写真は、美しいとは思ったが、ヌバほど感激はしなかった。私にとって、アフリカの人々は、『ヌバ』の美とともにあった。

本日のおやすみ:ゆっくり休んでください


2003/09/26 金 曇り 
トキの本棚>『アフリカの日々』

 NUBAの話で、『アフリカの日々』を思い出した。ケニアに行くまでのNo1は『NUBA』だったが、帰国後No.1は、ディネーセン『アフリカの日々』だった。

 レニにも、アイザック・ディネーセンことカレン・ブリクセンにも、「ヨーロッパで教育を受けた女性」からの一方的な視線がアフリカに注がれているという批判もあるそうだ。私はそうは思わないが。

 シュバイツアーや『野生のエルザの』のジョイ・アダムソンについて、「あれは、白人文明側の視点でアフリカを見ているのだ」という批判をするのが、ひところのはやりだった。そうは言っても、シュバイツアー以前にアフリカの医療を志す人はいなかったし、アダムソン以前にアフリカの野生動物保護について広報効果がこれほどある作品をヒットさせた人はいなかった。

 柿実さんを誘ってロードショウを見にいった映画『愛と哀しみの果て』は、最初のシーンから涙があふれて見続けるのがたいへんだった。レニの『ヌバ』とディネーセンの『アフリカの日々』は、いわば私の「青春のアフリカ」とともにあるのだ。

本日のつらみ:子供たちが動物園大好きなうちに、ケニアのゲームパークへ連れて行こうという約束はとっくの昔にほご。今ではテレビゲーム専門の子供たち


2003/09/27 土 晴れ
ニッポニアニッポン事情>匿名と家族のプライバシー

 4度目のページ更新をするために、朝からパソコン編集。気を付けて地名個人名の匿名化をしているつもりなのに、アップしてブラウザで見ると、本名のままのところが残っていたりする。2003年3月分をアップ。

 匿名についての感想。
 ある弁護士がプロバイダーを訴えた事件で、数日前に、勝訴のニュース。
 自分を誹謗した記事が掲示板に載った。書き込みした人の名前の公開をプロバイダーに要求し、勝訴したのだ。
 別の裁判で、この弁護士が原告側として担当した会社は、「自分の会社を誹謗され損害を被ったので、掲示板に誹謗記事を書いた人間の本名住所を公開せよ」とプロバイダーへ要求した。こちらは、敗訴となった。だから、弁護士の裁判は逆転勝訴とも言える。

 ウェブの問題が裁判となったとき、まだ判例がない問題について、裁判官の意識やウェブについての関わりようで、裁判がひっくり返る可能性がある。判例がない裁判の判断を下せる能力を持つ裁判官は少ない。みんな前例主義。過去の判例を繰り返していれば定年まで安泰の職業。

 私が匿名で日記をウェブに載せているのは、娘と息子が「母の趣味で日記公開するのは、自分の人生だから好きにしていい。でも、絶対に子どものプライバシーが保てるように個人情報を管理しろ」と言われれているからだ。

 それにつけても、日本文芸のお家芸である「私小説」に関して、家族はどう思っているんだろう。作家が家族親戚友だちについて書くこと。

 柳美里のプライバシー問題では、柳美里敗訴。これは「表現の自由」とは別問題だと感じた。原告は作者の知人だったとはいえ、一般生活者であり、作者の家族でもない。作品を発表した金で生活を支えてやれる範囲の人が家族、という意味で、家族は、作家が自分をモデルにすることに対し、ある程度、作家自身と一心同体の面がある。
 しかし、印税をモデルにすべて渡すという契約をかわしたわけでもない、一般人であるなら、作品中のモデルが特定できないようにするのが、作者の「書くことに一生をかけるための倫理規定」だと思う。それをしないで、安易に個人特定できる書き方をしてモデルの心を傷つけることは、やはり避けるべきではないか。難しいな、表現の自由とプライバシー。

 政治家や芸能人など「人に我が身を晒してナンボ」という人のプライバシー問題でも、最近プライバシーを侵害されたという側の勝訴が多い。個人情報管理への配慮から勝訴が多くなっているようにも感じる。
 個人情報管理法などと言わずに、「政治家がヤバイ問題を起こしたときに、やたらにすっぱ抜かれずに済む法」と言えばわかりやすのにね。通信傍受法は「警察が、勝手に盗聴して個人情報を盗む法」だし、「住民基本台帳の一部を改正する法」は、「情報が漏れてしまうことはみんなに我慢してもらって、国家が国民の情報を管理する法」だ。

 作家と家族の情報問題。
 車谷長吉は、親戚中から総スカンで、母親からも「家族の恥を世間にさらして」と、責められ続きだという。どこまでが「作品をさらすことによって、利益をえることのできる家族」なんだろう。少なくとも、長吉の母親は、すでに「車谷長吉の母」という「社会的な地位」を得た人、と言える。車谷がもらいたかったのは芥川賞の方で、直木賞は不本意だったとはいえ、世間的には「直木賞作家の母」になったのだ。「直木賞作家の母などになるより、世間から視線を集めることなく静かに暮らしたい」と思っていたお母さんなのかも知れないが、息子が賞をとってしまった以上、もうこれは運命と思ってもらうしかない。

 松本人志の母親が「松本人志の母」という資格で講演やバラエティ番組で稼いでいたり、金八先生武田鉄也の母が「こらぁ、鉄也!」のタバコ屋の母として、亡くなるまで講演しまくったように、書かれることによって、家族親戚の人生がいい方へ向くなら、書かれたことが付加価値をもたらし、被害より得たものが大きいと言える。

 古くは、逍遙、鴎外、漱石、八雲、茂吉、朔太郎の子孫たち、近くは中上紀、阿川佐和子&檀ふみコンビ。ばなな。露伴のところなんか、文、玉に続いて四代目まで文章で食べている。持つべきは文豪の父、母。
 大江健三郎のように、「知的障害を持つ息子」について書くことが、「一家総出の産業」のごとき様相になっていれば、それはそれで「家族みんなで、ご精がでますね」と言える。

 結論。文学が価値を持てば、必ずその周囲の人に恩恵はある。書かれた人間はどんなに悪口書かれようと、それを「自分の資産」として、自分の人生に付加価値をつければいい。

 さて、資産にもならないウェブ日記の場合。無料で公開し、収益といえるものは、書いた人の「自己満足」だけである。「だれかに読んでもらってうれしい」「だれかとネットワークで繋がったかも知れないからうれしい」というバーチャル人間関係構築のはかない夢のうれしさ。
 そんなバーチャルうれしさは、自己満足の範囲にとどまっていて、家族には何の足しにもならん。これじゃ、ただ書かれっぱなしの家族はたまらんぞ。

 ゆえに、私は匿名にしている。せめて、しがないパート仕事を解雇されないよう、気をつけなければ。パート先の上司の悪口など、書いてしまっているからなあ。

本日のひがみ:プライバシーが問題になるほど読まれもせず

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20150923
 今日は、日本じゃ秋分の日なんじゃなかろうか。どなたさまにも、ハレのめでたい休日ですね。はい、当地では秋分なんてものにはなんの価値もなく、本日も、めでたくもないケの労働日。

 101歳まで銀座のバーのマダムを続けた有馬秀子や、101歳まで写真を撮り続けたレニ・リーフェンシュタールについて書いていますが、私の目標も101歳までは書き続けること。あと40年くらいして、私が100歳を超えれば、この、愚痴とぼやきのヤンゴン勤務日記も「66歳のばあさんなのに、熱帯モンスーンの湿気暑気と虫の襲撃とネズミの徘徊に耐えて、よく働きました」と、言ってもらえるかも知れません。

 今のところ、「一日13時間労働するなんて、キーテないよう、トイレのまわりがニョロニョロの虫だらけになるなんて、キーテないよう。足が真っ赤に腫れ上がるなんて知らなかったよう」なんて泣き言を並べても「好きでヤンゴンくんだりまで行ったんだろうよ」と一喝されるだけですからね。

 長生きしなきゃあ、骨折り損のくたびれもうけだけです。ああ、くたびれた。
 あと、6日。指折り数えています。カウントダウン開始。

<つづく>
コメント (6)
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