
20200915
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2020コロナにめげずの映画(4)マグダラのマリア
監督:ガース・デイビス
マリア:ルーニー・マーラ
イエス:ホアキン・フェニックス
マグダラのマリアは、2000年もの間、罪深き娼婦と呼ばれてきました。
イエスの最後に、イエスの母マリアとともに立ちあった人でもあるのに、イエスの周囲にいるべきではない娼婦としても扱われ、娼婦から改悛したことで聖性を帯びると同時に一度は落ちた女として扱われたのです。
一方、1945年にエジプトで発見された古文書の中では、「イエスの妻」として描かれています。「ダビンチコード」などでは「イエスの妻」説をストーリーの要にしています。
マリアがイエスの使徒に準ずる亜使徒として認められたのが2007年。教会から聖女と認められたのは、つい最近。2016年のこと。1500年ぶりの名誉回復。
イエスを描いた映画は、映画のできはじめからたくさん描かれてきました。しかし、マグダラのマリアの伝記映画は初めてです。
聖女として認められたからなのか、2017年にマリア・マグダレーナの伝記映画が撮影開始され、2018年イギリス公開、2019年アメリカ公開されました。しかし、日本では劇場公開されずネット配信のみ。宗教色濃い題材で、アカデミー賞受賞などの「ウリ」もなく、主演女優も地味とあって、私も「ホアキン・フェニックスがイエス」ということへの興味で見ることにしたのです。
ジョーカーを見たあとで、ホアキンがイエスに見えるかしら、と思ったので録画してあった「マグダラのマリア」を見ました。
ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスがイエス・キリストを演じている。
ホアキンイエスはしかめっ面をしていたり悲しそうだったりの表情が多かったですが、ときどきちょい悪そうにも見えました。純情そうなマリアマグダレーナをたぶらかしていそうに。
マグダラに住んでいたマリアは、当時の風習通り父親に結婚を命じられますが、自らの意志でそれを拒絶し、神の言葉を説くイエスのもとに行きます。ナザレのイエスに従う他の使徒とともに伝導に従います。女性に洗礼を施す役を引き受け、イエスがおこす奇跡を目撃していきます。イエスは目の見えなかった女性の目を開け、死んだラザロを蘇らせます。心因性で目が見えなくなったり、一時的に仮死状態になった人を生き返らせることは、2000年前には神の奇跡と思われたことはわかります。
イエスのおこした奇跡を神の御技と信じる人々が増えていったのも、飢饉で家族を失った人々、苦しくつらい思いをしている人々にとって救いであったろうと思います。来たるべき王国を説くイエスは預言者であり神の子として、信じてついていくことこそ救済でした。
人々はイエスをメシアとたたえるようになっていきますが、イエスは。自分の未来を予感しています。暗い未来を知ったあと、苦しむイエスにマリアは寄り添います。
マリアはイエスのことばに従って、虐げられてきた女達を癒やしていきます。
ローマの過酷なしわざに村全体が襲われている村を訪れたマリアは、瀕死の村人に水を与え介抱します。ともに宣教の道連れとなったペドロは、「瀕死の人の介抱より、生きている人に説教をして信者を増やすことが大事」とマリアを諭しますが、マリアの「人への哀れみ」を理解します。
イエスの母のマリアも加わり、エルサレムへ向かう信者の群れは大きくなって神殿へと向かいます。
ユダは、妻と幼い娘を飢えのために失い、イエスの言う王国が実現すれば死んだ妻と子が蘇り、再び親子で過ごせると信じてイエスに従っています。ユダは純粋でかわいい顔をして、イエスに奇跡を期待し神の王国を望んでいます。
神殿で人々を信仰へ向かわせる導きをするよう弟子達が期待したのに、ホアキンイエスは相変わらずのしかめっ面で、ユダの説得にも応じません。
ナザレのイエスは人々を惑わした罪に問われ、ローマに反逆したとして磔の刑に。
海深く落ちていくビジョンを見たマリアマグダレーナは、イエスの刑死に立ち会い、死を見届けます。イエスの遺骸を抱く母マリア。ピエタ画面は1秒だけ。
ユダは、信じた王国が出現しないので、「家族の元へ行く」と首をつる。イエスを売ったというエピソードはなし。
イエスの死語、マリアは夜明けに主イエスの姿を見ました。主は、生前の姿のまま、悲しげなようす。磔台で「 エリ、エリ、レマ、サバクタニ~わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と叫ぶ嘆き声。こんな恨みごとを残して死なれたら、その姿を幻視するのも当然。
主がいなくちゃ伝道もおしまいだ、と意気消沈する使徒たちに、マリアマグダレナは、「王国は心の中にある」と叱咤激励して伝道の道へ。
マリアを「娼婦」扱いにしたのは、591年のこと。グレゴリウス1世のしわざ。よほどイエスの身の回りを世話していた女性がいた、ということが気に入らない法王だったのでしょうね。
ラストにバチカンの宣言が出てきます。2016年に「イエスの復活を最初に伝えた者はマリアマグダレーナである」と、正式に認めた、とのバチカンの通達です。
グレゴリウス1世が娼婦説を出した591年から1425年もの間、キリスト教世界ではマグダラのマリアは娼婦として扱われたって、どんだけ~。法王が決めたから「マリアマグダレーナは娼婦だ」ってことになり、2016年にバチカンが決めたから「マグダラのマリアは聖女」ってことになる、信仰の世界は私にはよくわかりませんけれど、この伝記に描かれたマリアマグダレーナ像、わりに好き。「この人についていこう」っていう意志を貫き通すって、強い人です。
これまで「イエスもの」の中、私的ランキングでは『ジーザスクライストスーパースター』を1番にしてきましたが、「マグダラ」は2番にしてもいいかな。
<つづく>