20210305
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座(1)日本語教師になりた~い
昨年2020年に計画していたたくさんのことが、延期や中止になりました。春庭が準備していた夏休み中の「日本語教師養成講座」の講義も、日本旅行を兼ねて来日する予定だった「日本語教師志望者」が、コロナのためにビザがでない状態でしたから、当然中止。
せっかく用意した講義ノートですから、一部分だけでも載せておこうと思います。私立大学文学部での日本語教師養成講座を2000年から2019年まで20年間続けてきました。日本語学概論、日本語音声学、社会言語学、日本語教育概論、日本語教授法など受け持ってきた科目、ひととおりまとめておこうと思い立ってもなかなかまとめる時間がなかったのですが、昨夏「中国からの日本語教師志望者に日本語教育の基礎を教えてほしい」という勤務先からの要請を受けて三分の一くらいまとめたところで、頓挫。
未完成の中途半端ではありますが、記録しておけば、来年使えるかもしれない。
<日本語学概論・日本語教育概論>
日本語教育について学ぼうとしている皆さん、日本語教師には、さまざまな知識と経験が必要です。
これまでの人生の経験の中で、ご自身が日本語教育を受けた、という経験は最も重要なものです。その経験をもとにして、さらに日本語の知識と日本語教育の教授法、教室活動の方法を身につけて、さらに高度な日本語教育力を目指しましょう。
1)誰が教えるのか。
日本で日本語教師として働くためには、以下のような資格があります。
誰が:一般的な日本語教育の現場では、「日本語教師の資格」を持つ教師が教えます。
1. 大学(大学院)で日本語学日本語教育学関連の科目を40単位以上取得していること。
2. 日本語教師養成講座の授業を420時間以上受講し、修了していること。
3. 日本語教育能力検定試験(日本国際教育支援協会.)に合格すること(毎年の合格率平均20%)
これらの資格を得るには、日本人母語話者でも合格がむずかしい「日本語教育能力検定試験」の勉強を続けるなどの必要があります。
しかし、自国で、自分と同じ母語話者の学生に日本語を教える場合は、また条件が異なります。正確な日本語の知識のほか、日本語と学生母語との違い(対照言語学)、社会での言語の運用の仕方(社会言語学)などの、幅広い知識が必要であることは、上記の1,2,3の条件と同じです。が、自分自身が日本語教育を受けてきた人は、受けてきた教授法を応用できるという利点があります。
その利点を生かしつつ、今回は語彙力、発音などについて、日本語力を深めていきましょう。
私が1988年に日本語教育能力検定試験に合格して以来、出会った「新米日本語教師(年齢が若いとは限りません)」のうち、どんな人が日本語教師としてよい方向に力を伸ばしていくことができたか、を観察したところによると。
1) 適切な指導法を身につけており、学習者にもっとも適切な教授法を駆使できる教師
2) 日本語を第2言語として客観的に見ることができており、言語の差異を理解し、学習者の誤用などに適切に対処できる教師
3) 広く異文化や日本文化について興味を持っていて、学習者の文化背景を取り入れて日本語学習に応用できる教師
などの基本的な力もさることながら、「学習者を愛し、学習者の役にたとうと毎日努力している」教師がいちばん教育の力量も上がっていったように思います。
<日本語教員の資質・能力>
次の中のどれかあてはまったら、あなたは日本語教師の資質があります。
☆タスク0-1:自分の好きなことは?
・人が好き。人とコミュニケーションをとるのが楽しい。おしゃべりが好き。
・外国文化に興味があり、さまざまな異文化を知りたいと思っている。
・本を読んだり音楽を聴いたり、映画を見たりするのが好き。
・ことばを探求するのが好き。辞書を読んでいるとあきない。
・日本の文化や歴史についてもっと知りたい。そして日本のことを世界に知らせたい。
「好きこそもののじょうずなれ」です。ひとつくらいは、日本語と日本文化、異文化コミュニケーション、人間観察などに興味あることを、これから探していきましょうね。
日本文化については、歴史、地理、現代社会など広い範囲の知るべきことがらがあります。今回の研修では、さまざまな日本文化・現代社会の側面を観察していけるよう、ともに学んでいきましょう。
日本語教育能力検定試験の出題範囲に基づき、420時間教員養成コースの多くは、以下のような講座を開講しています。今回の研修では、全部を学ぶ時間はありませんが、重要な部分を取り上げていきます。
1)社会・文化・地域: 世界と日本/ 異文化接触/ 日本語教育の歴史と現状/ 日本語教員の資質・能力
2)言語と社会: 言語と社会の関係/ 言語使用と社会 / 異文化コミュニケーションと社会
3)言語と心理: 言語理解の過程/ 言語習得・発達/ 異文化理解と心理
4)言語と教育: 言語教育法・実技(実習)/ 異文化間教育・コミュニケーション教育/ 言語教育と情報
5)言語一般 : 言語の構造一般
6)日本語の構造: 音声/ 文字表記/ 語彙意味/ 文法/ 語法/ 日本語史と方言/ コミュニケーション能力
2020年夏に準備した研修内容。午前中45分4コマ2週間の授業。午後は東京を中心に鎌倉などの観光。
日本語教員研修 目次
・ワークショップ第1回 日本語音声学――発音力を高めよう!
・ワークショップ第2回 日本語文法力を高めよう。
・ワークショップ第3回 語彙力を高めよう!
・ワークショップ第4回 社会言語、日本語待遇表現の知識と運用
・ワークショップ第4回 初級・中級・上級 段階別教授法
・ワークショップ第5回 授業案作成
・ワークショップ第6回 模擬授業実施
・ワークショップ第7回 文章表現口頭表現、発表
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大学の養成講座では週に90分4コマの授業15週で4単位でした。春学期秋学期の1年間で8単位取得。
2週間の観光半分の日本滞在でどこまで日本語教師志望者に「日本語教師になりたい」という気持ちをもってもらえるかはわかりませんが、観光だけでは物足りないという学ぶ気のある若い人に、日本語教育への興味を深めてもらうにちょうどいい、講座にしたいと思ったのです。
素案を出したところ、「日本人大学生にはいいかもしれないけれど、日本語がまだ十分ではない日本語教師志望者ですから、これでは難しすぎます」と評された講義ノートですので、これから「もっとやさしくわかりやすく」書き直そうとした矢先のコロナですから、なおすのは、これからです。とりあえず、これまでの素案のうち、ワークショップ1,2,3を掲載します。ここまでは、これまでの春庭コラムにも何度となく掲載したものなので、「これ、もう何度も読んだ」という方はすっとばしてください。
<つづく>