20210309
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座(2)日本語音声基礎
・ワークショップ第1回 日本語音声学――発音力を高めよう!
日本語の発音は難しくない、と感じる日本語学習者は少なくありません。日本語は、世界の言語の中でも、音声のしくみが単純な言語のうちのひとつです。
・クイズ1-1 日本語を表現する音は、いくつあるでしょうか。
答え。日本語の音(音素)は、母音が5つ。a,i,u,e,o。子音が14。kk,g,s,z,t,d,n,h,b,p,m,y,r,w。ほかに特殊拍が3つ。合計22。組み合わせによってできる音は、115。
日本語は、子音だけで使うことは特別な場合で(/N/のみ)、子音の後ろに必ず母音がくっつきます。子音と母音の間に半母音[y]が挟まるkya,pyu,ryoなど拗音という音もありますが、原則子音+母音。母音子音が組み合わさった音を音節と呼びます。日本語のひらがなは、音節ひとつにカナひとつ。したがって、日本人は、音節を言葉の音を表す最小単位として意識しており、「か」という音節の音を[k]と[a]に分解して発音できる人は少ない。[k]と発音しているつもりの大部分は/ku/と発音しています。どうしても母音がくっつく。
ほかに特殊拍として「声をださないつまる音(促音)」。「母音を長く伸ばす音(長音)」。そして子音だけの/N/音=「ん」の音があります。
促音が苦手な英語圏の人、濁音が苦手な中国語母語話者、「つ」が苦手な人など、母語によって苦手な音はありますが、母音が26もある英語とか、子音がやたらに多い言語(アフリカのナムビア砂漠で話されている言語では子音77)に比べれば、日本語の発音は世界の中ではハワイ語についで音素が少ないほう。
でも、特に独習者に多いのですが、促音や清音濁音の発音が悪いために、会話をしていて「ああ、この人の日本語は中国語なまりだなあ」「タイから来た人だな」と、わかる話し方の人もいます。
私は、なまりのある日本語も好きです。自分の言語の特徴を残して外国語を発音するのも、その人の個性だからです。しかし、日本語の教師であるならば、できるだけ日本語として自然な発音をする必要があります。日本語学習者は、なまりのある日本語ではなく、自然な日本語を学びたいと考えているからです。
自己紹介の場面で。「ぽく、ちゅこくからきました。たいがくいきます。にほんこちょずじゃない。かんぱります」こんな自己紹介も、昔はよくありました。今は指導法もよくなって、ほとんどの人の発音は問題がなくなりましたけれど。
今から30年以上昔、日本語講師の勉強会で学習者の誤用を披露しあい、その誤用の原因を考え、自然な日本語にしていくための教授法を考えていくことがありました。
同僚が披露してくれた話。「好きです嫌いです上手です」というナ形容詞文を習った初級学習者に、何が好きか、何が上手か発表させるのは、たいていの教師が行う教室活動です。
「りょうりがすきです」「歌がじょうずです」などの発表があり、中国人学習者が「わたしはタンスがじょうずです」と発表しました。当時、ある歌手がタンスを肩に担ぎ上げて歌う姿をテレビで披露していましたから、教師はタンスを肩にかつぐジェスチャーをして、「いいですね。タンスは重いですね」と感想を述べると、学習者は「重くないです。楽しいです」と答えました。
教師は、あっと気づきます。中国人母語話者の中には、濁音と清音(有声音と無声音)の区別がなかなか身につかない学習者もいます。促音長音が難しいという学習者とともに、初級の発音練習では、有声音無声音の区別は、注意すべき発音の問題です。学習者は「ダンスがじょうずです」と言いたかったのだと気づきました。タンスとダンス、アクセントも間違っていたために、すぐに気づかなかったのです。
促音の発音に問題が残る学習者もいます。
「こがつの、みかとよかといつかは、かこにいきません」という発音を「五月は、みっかとよっかと五日は学校に行きません」と発音できるようにするするために、日本語教師はいろいろな発音練習を行います。
日本語の発音の特徴、母音、子音、アクセント、イントネーション、清音濁音、撥音、拗音、長音について、自然な日本語と感じられる発音を確認していきましょう。
タスク1-1 イントネーション
日本語の文は、「~。」があると、文が終わります。文を読むとき「~。」の前で、音の高さを低くします。「~、」の前では、軽く低くします。それだけで、自然な読み方になります。
<つづく>