20210316
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽん語教師日誌>日本語教師養成講座(5)動詞活用形
中国語母語話者がとまどうのは、助詞の次に、動詞の活用形です。中国語の動詞は形が変わりません。「走」は、「走」という形が変わることがありません。しかし、日本語の動詞は、「走ら-ナイ」「走り-マス」「走れ-ば」というように、形がかわります。だいたいどの初級教科書でも、名詞文、動詞文、形容詞文を学んだあと、10課から15課の間に動詞の活用形をテ形から習います。
N1級に合格した人なら、もう活用形で間違えることはないでしょうが、初級学習者には、「(誤)ドアのかぎが掛かりない(正)かからない)」などが頻出するし、中級になっても「(誤)髭(ひげ)を伸ばすば(正)伸ばせば」などのまちがいはしばしば見受けられます。
一般的な日本語教育では、マス形から日本語動詞を覚えます。日本語教育では、動詞活用を3つのグループにわけて指導します。
2グループ(1段動詞)見ます 食べます 起きます 着ます 出ます 教えます
2グループ動詞は、マスを取り、テをつければテ形動詞になります。見て 食べて 起きて 着て 出て 教えて
3グループ(か変さ変)は、ふたつだけですから、丸ごと覚えます。
来ます⇒来て します⇒して(勉強して そうじして せんたくして、、、、)
難しいのは1グループ(5段動詞)のテ形です。ここは、日本語教育最初の関門です。
マス形の前の音が「い」「ち」「り」になる動詞 会います 買います 立ちます 借ります い⇒っ ち⇒っ り⇒っ 「いちりって」と覚えます。あって、かって、たって、、、、
マス形の前の音が「に」「み」「び」になる動詞 読みます 遊びます 死にます
み⇒んで び⇒んで に⇒んで 「みびにンデ」と覚えます。しんで よんで あそんで、、、
マス形の前の音が「き」「ぎ」になる動詞 書きます 聞きます 泳ぎます
き⇒いて ぎ⇒いで きいて かいて およいで
「きいて、ぎいで」と覚えます。
マス形のマスの音の前が「し」になる動詞 話します 足します 貸します
マスをとって「テ」をつける。はなして たして かして
例外)行きます⇒行って
<まとめ> いちりッテ、にみびンデ、きいてぎいて はなして 行って
<グループ1>
〇います 〇ちます 〇ります |
〇って | かいます まちます つくります | かって まって つくって |
〇にます 〇びます 〇みます |
〇んで | しにます あそびます よみます | しんで あそんで よんで |
〇きます | 〇いて | かきます | かいて |
〇ぎます | 〇いで | およぎます | およいで |
〇します | 〇して | はなします | はなして |
<グループ2>
〇ます | 〇て | おきます たべます | おきて たべて |
<グループ3>
します きます | して きて |
「いちりっての歌」は、学習者に有効な「活用の覚え方」です。
1グループ動詞(5段活用動詞)のテ形(タ形も同じ活用)を、クラスの全員が歌える歌にのせて、全員が歌えるように練習。
例1)初音ミクが歌ういちりっての歌。メロディはカントリーロード
【初音ミク】て形 た形の歌 / 【Hatsune Miku】Nihongo Te-form Ta-form song - YouTube
例2)となりのトトロの「さんぽ」のメロディで。
https://www.youtube.com/watch?v=2ARid5LeHAw
1グループ(5段動詞)、2グループ(1段動詞)、3グループ(サ変カ変)の区別、教科書の語彙表には載っていますが、学習者に最初に教えるときは。
初級教科書に出てくる3グループ動詞(国文法のカ変サ変)、来ます・つれてきます、します・べんきょうします・そうじします、など。「きます」「します」のテ形を暗記させます。
初級教科書に出てくる2グループ(1段動詞)は、初級前半、とくにテ形が出てくるまでの動詞は数が少ない。「1日の日記」として暗記させます。
「わたしのいちにち。
朝起きて眼鏡をかけて、ごはんを食べてネット見て。服を着て、本をカバンに入れて家を出ます。
学校で。教室のドアあけて窓しめて、新しい先生むかえます。
先生は日本語おしえて、学生は日本語覚えて、先生に作文見せて質問にこたえます。つかれて、スマホ忘れて友達にケータイかりて電話かけます。
家で。電気をつけて、シャワーあびて勉強始めて、少し考えて日本語調べます。ごみを集めて捨てて、服を換えて寝ます。これが私の一日です。
この一日の動作で、初級前半に出てくる2グループ動詞はほぼ網羅しています。(初級教科書「みんなの日本語Ⅰ」に出てくる動詞の場合)
この「一日の動詞」にないものは、ほとんどが1グループ。
以上の「わたしの一日」を壁に貼っておく、またはプリントして学生に渡しておく。学生は、この一日の動詞(2グループ)表にないものは、1グループだと判断する。
「いちりっての歌」と、「一日の日記」で動詞活用形の山を越えます。次の山は「ナイ形(国文法の未然形)」
<つづく>