20220303
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>2022ことば集め(2)三省堂の「辞書に載る新語」
毎年チェックしている三省堂の「今後の辞書に掲載されてもおかしくない今年の新語 2021」
2021年の新語として応募数(ことなり語数)777語の中から選ばれたのは、
1位 チルい 2位 〇〇ガチャ 3位 マリトッツォ 4位 投げ銭 5位 人流
2020年の新語「ぴえん(小さな泣き声で言う静かに泣く様子)」は、ネット若者用語としては「すでに終わっている」「つかったら恥ずかしい流行おくれ語」になっているというので、新語が日本語語意として定着するのはとても難しいことだとは思うのですが、日本語教師の職業訓練として、三省堂の「将来日本語辞書に載るかもしれない新語」のチェックは欠かせません。
1位「チルい」。
ネットの中で使われている用語に弱い高齢者には、お初の語でした。英語の「chill out」が語源。「落ち着く、心身の緊張がおさまる」という意味のchill outを「チルい」と形容詞化して、「心地よい・雰囲気がいい」という意味に用いています。ネット音楽を聴いて評価したことばが始まりだそうです。
用例「ゆったりとしたチルい曲」「チルいギター」のように音楽で使うほか、「最高にチルい時間」「今日の天気はチルいね」などにも使われます。
私の印象では「ぴえん」と同じように、来年になると「流行おくれ語」になる気がします。
2位「〇〇ガチャ」は、「親ガチャ」として耳にしたことがあります。
プラスチックのカプセルの中に、おもちゃなどが入っているけれど、なにが入っているかわからない、というガチャポン。ガチャポンの中身は選べません。気に入るものがはいっているかどうかは、運しだい。それと同じように、自分がどんな親のもとに生まれてくるかは選べない。それを「親ガチャ」と若者は言う。
それを聞いて、「我が家の子らは、はずれの親ガチャだと思っているだろうなあ」と、感じました。「自分たちにはあまりよくなかった親」であることを、「親ガチャ、はずれ」とは、うまいこと言うなあ、と思って笑いました。
3位の「マリトッツォ」は、2021年に急に売利上げが伸びたお菓子。
イタリア発祥の、パンにクリームを挟んだ伝統的なデザートです。本来は、 マリトッツォ・コン・ラ・パンナ(イタリア語: Maritozzo con la panna=クリームはさんだパン )
日本ではブリオッシュパンにクリームをはさみ、さらにクリームの中にいちごやキウイなどフルーツを入れ込んだものをよく見かけますが、イタリアではやわらかめコッペパンにクリームたっぷり挟むのが典型的だとか。

日本では知られていなかったものが、ある日突然人気食品になる例は次々に出てきます。ティラミス、ナタデココ、プレッツェル、など。食品の場合、日本の市場に定着する率が高いので、2021年の流行に乗り遅れた年寄りが2020年によっこらしょとカフェで注文しても食べられそう。
4位 投げ銭は、もともとの意味は、紙に包んだ小銭を大道芸や芝居の舞台に投げ入れること。
インターネット時代の「投げ銭」は、インスタグラムなどで発表された音楽や絵、小説など、ネット公開された作品に対して、youtubeの「スーパーチャット(スパチャ)」の機能、ツイッターの投げ銭機能「Tip Jar(ティップジャー)」が使えるようになって、気に入った作品に報酬をおくれるようになったことで一般的になりました。
2003年にブログを始めた時、ひつじ書房が「ネット投げ銭」で文芸を振興しようと提唱していたのを思い出します。爾来20年でネット技術が追いつきました。
音楽を発表するにも文学を発表するにも、出版社やレコード会社などの「中間業者」を経ずとも聴衆読者に直接届けられる。ネット時代になった恩恵のひとつです。
5位の「人流」は、まだまだ続くコロナ用語。蔓延防止(マンボー)や緊急事態などとともに、人流抑制も2020年も社会にとどまる語になるのでしょう。
人流抑制と言われていても、これまでは休日に美術館などに流れていたけど、オンライン授業が始まったあとは、ひたすら自宅にひきこもり。と、言いつつ公園も美術館も出かけています。
はずれの親ガチャとしては、娘が作るナッツチョコだのバナナケーキだのを残さず食べて「おいしいおいしい」とほめまくって少しは良いガチャ茶点数稼ぎ。よってメタボ生活はますます深みにはまっています。でも、これが私の「チルい生活」。
<おわり>