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ぽかぽか春庭「オンライン授業・日本語学校危機一髪」

2022-03-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20220329
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>2022日本語学校春(1)日本語学校危機一髪

 東京のコロナ感染、第6波は少しは落ち着いたかと思うのですが、専門家の見方では、このまま第7波に突入かも、ということで、日本語学校も正念場です。
 留学生の来日が許可されるかどうかが、2022年度内に倒産するかどうかの瀬戸際です。経営が安定している大手以外は、どの日本語学校も瀕死の状態です。

 飲み屋さんも「うちだって瀕死」とおっしゃるでしょう。わかります。でも飲み屋さんは、店でお酒が飲めなくなったお客さんに迷惑をかけることはありません。飲み屋で飲めなくても、お客さんは家で飲むこともできる。
 が、日本語学校は、学校がこまるだけではありません。青雲の志を負い親戚縁者への借金を背負って来日した留学生の運命を抱えているのです。在学生がこの学校で学んでいる間、倒産することなんかできません。学生ビザを失えば不法滞在者になってしまい、強制送還される場合もあるのですから。(倒産する前に、他校への転校手続きをすることになりますが、すんなり受け入れてくれる学校があるかどうかもわかりません)
 なんとか彼らが思い描いた「日本での未来」を開いていけるよう、願っています。

 2021年4月と2021年10月に来日する予定だった学生にオンライン授業を実施していましたが、2月半ばから在学生に対してもオンライン授業となりました。

 オンライン授業、苦手です。自宅のWifiの受信が弱く、ちょっとWifiの接続が不安定になると、もうパニくってしまいます。アナログ教師にできる手立ては「再起動」のみ。
 本文を読み、文型を復習し、学生が作った短文の誤用部分を指摘して、どうして誤りなのか、解説する。「~を挑戦する、じゃなくて、~に挑戦する、だよ」など。
 その間に学生の声が途切れたり「センセーの声が聞こえません」なんて言われるとあわてふためく。学生からは「センセー、落ち着いて。たぶん、先生がミュートのボタンを間違って押してしまったんですよ」と教えてもらったりします。ふぅ。

 学生に「日本語を話す練習」として週末にしたことの報告をさせたり、私が日本の季節の話題を提示したり。3月6日の授業では、洗足池の梅の写真を画面に写して、「日本の紅梅、きれいですね。これはしだれ梅」なんて説明をしました。
 週末のようすをたずねると、学生は「自転車で多摩湖まで行きました」などの健脚ぶりを報告したり、「多摩川に沿ってひとりで散歩しました」「新聞配達のアルバイトはいつもは退屈な道ですが、きのうは、中国で見たことのないきれいなネコを見て楽しかった」なども話してくれましたが、「ずっと部屋にいました。週末も寝て、ゲームして、また寝て、、、」などコロナの引きこもり生活であることを報告したり。
 2020年の12月に入学したときは、なかなか口から出てこなかった日本語が表現できるようになっています。

 1年とちょっとたって、みんな入学当時からずいぶんとじょうずになりました。中上級のクラス11名のうち、6人が進学を決め、3月に卒業する予定です。初中級のクラス18名のうち、4名が卒業予定。
 2020年4月と10月の入学予定者だった彼らは、コロナの来日制限でようやく2021年12月に入学し、入学時期がおくれたため、1年半コースの学生も、2023年3月まで日本語学校に在籍することができます。ですから、卒業を急ぐことはなかったのですが、就職希望の1名と、専門学校入学を決めたネパール人学生が卒業することになりました。

 ネパールからの留学生。日本語能力が3級レベルに達していないので、本来なら「漢字圏学生は日本語能力試験(Nテスト)2級以上非漢字圏はN3級以上の能力を持って卒業要件とする」という学校の規定には当てはまらないところでした。漢字の壁をのりこえられなかったのです。
 しかし、会話力は上達しました。1年前は「おはようございます」も口にできなかった学生でしたが、日常会話はこなせるようになり、アルバイト先でも日本人と会話できるまでになりました。

 この2年間、留学生が来日できず、困っているのは専門学校も同じ。留学生入学がないと経営ができなくなる学校もあります。留学生の入学を待ち望む専門学校の意向もあって、日本語能力不足のまま入学許可を受けました。この先、専門学校の日本語での授業に苦労するとは思いますが、ネパール女性4名が2名ずつそれぞれ都内の専門学校に進学を決めました。

 卒業生のうち、日本語能力試験合格者1級ふたり、2級3人。
 1級に合格した学生も、大学進学に必要な2級をクリアした学生も、胸を張って卒業に向かうことになります。
 コロナ感染拡大で、学生も学校経営もさまざまな影響をこうむりましたが、未来を向いていたいです。

 オンライン授業ではパソコンやスマホを使って学生の顔を見ることもできますが、やはり、顔と顔を見合わせて同じ教室で学ぶことが大事と思います。「教室の空気」ができてくるからです。

 オンライン授業になる一日前の日、日本語インタビューの発表会をしたときの写真。発表会の準備をしています。早く、教室で元気な学生の顔を見たいです。


<つづく>
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