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20220623
ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩雨に唄えば(2)スコットランド美術館展 in 東京都美術館
5月27日、東京都美術館でスコットランド国立美術館展を観覧。
予約が必要と書かれていたのですが、平日なら予約外の受付もあるとふんで、午前中の内科検診が終わってから上野にでかけました。
予約なしですぐに入れました。展示室もひとつの絵をひとりで見ていられる程度の混み具合で、ちょうどよかったです。
東京都美術館の口上
スコットランド国立美術館は、上質で幅広い、世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有する美の殿堂です。そんなスコットランドが誇る至宝の中から、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、レノルズ、ルノワール、モネ、ゴーガンなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示します。さらに、同館を特徴づけるイングランドやスコットランド絵画の珠玉の名品も多数出品。それらを西洋美術の流れの中でご紹介します。
第1章はルネッサンス、第2章はバロック絵画 。オランダのルーベンス、スペインのベラスケスなど。
10代のベラスケスが描いた「卵を煮る老婆」1618
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金属の食器や陶器の皿などの質感の描写が、10代とは思えない確かな技術で描かれていて舌を巻きます。この絵は、生まれ育ったセビリアの町で、11歳で絵の師匠に弟子入りし、18歳で実力が認められて独立した直後の絵だ、ということなので、ほんとうに天才だと思います。独立後は師匠の娘と結婚して一家を構えているので、順調な絵描き業の出発だったことでしょう。
スペイン絵画のジャンルでは台所の食材や道具、台所で働く人々などを描いた絵を「厨房画=ボデゴン」という範疇にいれるのだ、ということは知っていました。厨房絵画はスペインの人気画題です。
しかし、食器や卵の質感に比べて、料理をしている老婆の表情も、それを覗いている少年の表情も、「おいしい食べ物が目の前に」という時のウキウキしてくるような顔には見えないのです。苦渋に満ちているのかとさえ見えます。
卵料理は、オリーブ油を卵にかけながら形を整える「揚げ卵」だ、ということですが、おそらく老婆も少年もこれを食す「ご主人様」のご機嫌しだいで、うまくいけば褒美をもらい、へたすりゃお屋敷から放り出される、そんな表情に思えるのです。仕えている貴族やお金持ちのために、自分たちには手の届かない食卓への労働を行っているのかもしれません。
ベラスケスの表情の捉え方、私にはそんなふうに見えました。
レンブラント・ファン・レイン「ベッドの中の女性」
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レンブラントは、妻サスキアを早くに結核で失いました。裕福な妻サスキアは浪費家のレンブラントを案じ、やっと授かった息子に財産を残すため、「レンブラントが再婚した場合、サスキアの財産は全部息子のものに」という遺言を残します。
レンブラントは、家政婦に手をつけ、子も産ませましたが、婚約不履行で裁判になったりします。サスキアの遺言があるので、再婚はできないのです。この「ベッドの中の女」は、レンブラントと愛人関係になったふたりの女性のうち、へンドリッキがモデル説とヘールチェがモデルだ、という説が出ています。たぶん、このふたりはよく似ていて、サスキアに似た女性だったのでは、と想像されます。
「ベッドの中の女性」の表情には、ベッドの脇にいると思われる男性への愛情も、この先の人生への不安も両方が感じられるように思います。
1歳の息子を残して亡くなったサスキア。さぞかし心残りだったでしょうし、夫の浪費癖を知っているので「再婚したら妻の遺産を使えない」というシバリを残したのも当然かもしれません。
レンブラントは、サスキアの残した息子にも、20歳年下の愛人ヘンドリッキエにも先立たれました。
最晩年のレンブラント自画像は、63歳で亡くなったとは思えないような老残無比の表情をしています。さびしい老後だったのかなあ。画家としては成功をおさめた人ですが、大成功の幸福な人生とまではいかなかったのかも。
「19世紀の開拓者たち」の章
英国のコレクターたちが美術品の購入や文化的教養を深めるために大規模なヨーロッパ旅行をした「グランド・ツアーの時代」では、フランソワ・ブーシェの晩年の作である《田園の情景》やジョシュア・レノルズ《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》など。
ジョシュア・レノルズ 《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》 1780年
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ジョン・エヴァレット・ミレイ「籠を持つ少女」
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フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、
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ブーシェ「田園の情景三部作」
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クロード・モネ「エプト川沿いのポプラ並木」
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ポール・ゴーガン 「三人のタヒチ人」 1899年 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/35/a50c6c4bb9d3905fe53a510ca7da86a7.jpg)
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ゴーギャンの「三人のタヒチ人」は、ゴーギャン展のときに見た気がしますが、展示終了前「エピローグ」では、フレデリック・エドウィン・チャーチ「アメリカ側から見たナイアガラの滝」という大作、はじめて見ました。やたらにデカい。
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会場外にこのチャーチの「ナイアガラ」実物大写真パネルがあり、撮影コーナーになっていました。
本物の作品にうっかり近づこうものなら係員がすっ飛んできて「この線から入らないでください」と「世紀の大犯罪を見つけた」というような押し殺した声で観覧者を叱るのですが、写真パネルなら近づける。おかげで、本物を見ていても気づかないことがわかりました。
このデカいナイアガラの左上に、ナイアガラ見物者が描かれているのです。もとの本物を見ていてまったく気づきませんでした。画面上の左はし。、![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/54/b06cec3d4395db3a6d2247b19079afca.jpg)
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さらに、右下には滝によって生じる虹も描かれています。本物をぼうっと遠くから見ているぶんには気づきませんでした。
絵画の見方はひとそれぞれですから、描かれているものに目がいきどどかなくても、人それぞれに楽しめばいいのですけれど、あらま、私の見方は雑だなあと感じました。
ナイアガラの実物大パネルといっしょに。
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シルバー券1400円支払ったので、図録は買わず。ガイド音声も借りず。でも、半日楽しく過ごすことができました。
東京都美術館を出てから西洋美術館へ。
<つづく>