20221115
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校秋から冬へ(2)EJU日本留学試験
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校秋から冬へ(2)EJU日本留学試験
2022年、11月13日。年に2回実施される「EJU」の日です。EJUとは、日本留学試験」の略語です。
留学生が日本の大学に入学するとき、大学学部に応じて日本語による試験を受験し、大学によっては、面接試験などを行う前に「足切り」につかっています。多くの大学でEJUの成績が満点の半分ない学生には、その時点で「不合格」を通知。面接試験までたどりつけません。留学生試験の面接とは、日本語の聞き取りと表現力の試験です。多くは「この学部を志望した理由を述べなさい」などの定型質問なので、事前に回答練習ができますが、なかには予想外の質問もあり、対応力が求められます。
事前に指導した「あなたの出身地の有名な産物産業について説明してください」とう予想問題がばっちり出て、「ちゃんと答えられた」というラッキ~!もありました。
理系の学部受験の学生は、日本語のほか、学科によって、数学、理科、文系学生は、総合社会(日本の一般大学入試の歴史地理公民などの内容に相応)
おおむね
文系 日本語+総合科目(+1科目)
理系 日本語+数学Ⅱ+理科
などを受験します。
過去問から一部をチェック。
まず、記述(作文)の試験。日本語話者の方は、下記の問題が英語で出題されたら、英語で作文できるかどうか想像してみて。
50点満点ですが、評価は、文法や文字誤記を減点したうえ、構成点、論理的論述が的確かどうか、など点数がつけられます。
課題に対して、3段落-5段落の構成で、論理的に矛盾や破綻のない内容に加点。日本語の文法や記述の間違いを減点していく。
ある大学院では「EJU記述は30以上の得点を要求する」と受験者に注意がだされています。(EJUは大学入試用ですが、大学院の足切りにも用いているところがあります)
50点満点のうち30点とるのはなかなか難しいことです。
2つのテーマからひとつを選んで「自分の考えを述べる」という課題に400-500字で日本語文章を記述します。問題文は一部変更あり。
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1) 観光地には、以前には有名でなかった場所が有名になり、多くの人が訪れるようになったところもあります。ある場所が有名な観光地になっていくと、どんなことが起こるでしょうか。よい点と悪い点に触れながら、あなたの考えを述べなさい。
参考までに簡単な英訳を提出しますから、さて、英語でどう答えを記述するか試してみてください。自分の考えを出すことが大事です。日本語母語話者でも、20分程度で500字書くのは、なかなかたいへんなことです。
Some of the tourist destinations are famous places that were not famous before, and many people have come to visit them. State your thoughts, mentioning the pros and cons.
2)現在、社会のさまざまな場所で人のかわりに仕事をするロボットが使われています。社会の中でロボットが使われていくと、どんなことが起こるでしょうか。良い点と悪い点の両方に触れながら、あなたの考えを述べなさい。
Currently, robots are used in various places in society to do work instead of people. What will happen when robots are used in society? State your thoughts, touching on both the good and the bad.
私が1年弱日本語授業を担当したある外国の大学では、ひたすら暗記し、教科書に書かれていることをそっくりそのままテスト用紙に再現することが試験でした。出題されたあるページを、一字一句教科書に書かれているとおりに間違いなく書いたものが高得点、という試験でした。このような試験で優等生となった学生にとっては「自分の考えを述べる」という出題はとてもむずかしいものとなります。
11月13日、試験を受けた学生のうち、ひとりは「大学院入試にEJU試験の結果を提出しなければならない」。あとは、ほとんどの大学で採用している「面接試験の足切りとしてEJUテストの点数を用いる」
大学のレベルによって、足切り点はさまざまで、中には「面接で学習意欲を見て、人物をみきわめ、EJUの成績は参考程度」という留学生入試もありますが、どの大学でも、おおむね、満点の半数以下の点数だと面接試験までたどり着けない。
日本語試験は、125分。全問400点満点。
リスニング(聴解)と聴読解(文章を耳で聞き、グラフ、表などを読み解き質問に答える)が60分。
残りの65分のうち、記述は25分。テーマに従い、意見文を500字執筆。
読解(300~500字程度の文章25題)を40分で読み、内容についての質問。四択から正解を選んでマークシートに記入。
ひとつの文章を読み解答を選択する時間は2分程度。それ以上時間をかけたら25問が終わらない。
EJUで高得点を得るために、毎日受験勉強指導に邁進するよう、学校経営者から厳命を受けています。
中国在住の学生は、「中国で名の知られている有名大学に何人送り出せたか」によって、日本語学校を選ぶので、どの大学に入学させたかが、学校経営のために最重要だ、ということです。これは、日本の私立高校の受験対策と同じです。どれだけ偏差値の高い大学に送りこめている高校か、ということで親世代が高校を評価する。
私は、40年前の中学校国語教師時代、1点でも多く受験国語の点数を上げて「より偏差値の高い高校に何人合格させたか」で世間から評価される、という偏差値教育に反発して公教育教師をやめました。1970年代のことです。
大学の留学生センター日本語講師になっていた35年間、受験戦争からは無縁でいられました。主に国費留学生の大学院生に日本語を教える仕事だったので、純粋に留学生の日本語能力向上のために教えることができました。
学校の方針が「学校設立の理念」からどんどん変えられていく事態。もはや、「日本文化・社会」も二の次です。少しでも高得点をとれる「受験のコツ」が優先される授業に、他の優秀な方々はともかく、受験に関しては自分自身がずっと落ちこぼれであった私にはついていけません。たぶん、「老兵は消えゆくのみ」になってきたのでしょう、、、、。
これまでがんばってきましたが、限界かも。
留学生、ネパールの学生もベトナムの学生も、とても仲のよいなごやかな教室で、多数派の中国人学生も仲良くしているので、うれしく思っています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/0e/84a3b79e8b8ff236edf39d00081c97a6.jpg)
<つづく>