20230909
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩写真を見る(1)ドアノー&本橋成一展 in 写真美術館
ロベール・ドアノーの名前を知らない人も、写真美術館に1度でも入ったことがあるなら、1階入り口の前に、大きな写真パネルが展示してあるうちのひとつ「パリ市庁舎前のキス」の写真を目にしているでしょう。世界的に有名な写真です。私はこの写真について、ルポルタージュ写真と思い込んでいたのですが、実は、俳優ふたりにポーズをとらせて写した1枚だとのこと。
ドアノー(1912-1994)写真の全容を知らなかったので、今回の企画、高齢者無料の日にありがたく観覧。
会期:2023年6月16日(金)~9月24日(日)
ドアノーの娘ふたりは父の残された写真の版権などを管理しています。娘ふたりのインタビュー、本橋成一のインタビューが2階エントランスロビーで上映されていました。
写真美術館の口上
このたび東京都写真美術館では「本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語」展を開催いたします。本橋成一は東京に生まれ、50年以上にわたり、写真と映画によって、揺れ動く社会とそこに暮らす人々の姿を記録してきました。一方ロベール・ドアノーは、パリや自身が生まれたパリ郊外を舞台として、常にユーモアをもって身近にある喜びをとらえてきました。生まれた時代・地域が異なる二人の写真家ですが、奇しくも炭鉱、サーカス、市場など、同じテーマによる優れたルポルタージュを残しています。そして、それぞれに第二次世界大戦による混乱を経験した二人は、慎ましくも懸命に生きる人々の営みの中に、力強さと豊かさを見出し、失われゆく光景とともに写真に収めてきました。 多くの対立、紛争の絶えない現代において、人間に対する際限のない愛情と好奇心が生み出す視線、そしてユーモアや優しさをもって現実や社会と関わった二人の写真家によって編み出される物語を通して、生きることの豊かさについて考える機会となれば幸いです。
展覧会構成
1章|原点
1章|原点
2章|劇場と幕間
3章|街・劇場・広場
4章|人々の物語
5章|新たな物語へ
3章|街・劇場・広場
4章|人々の物語
5章|新たな物語へ
ドアノーは、貧しい生い立ちの中、石版印刷の資格をとり、兵役にもつきました。退役後はルノーの記録係として写真を撮るという安定した仕事を手に入れましたが、写真の完成度を追求するあまりに「ただの社内記録」と考える会社側とあわず、退社。家族を写した写真をはじめ、パリを中心として人々の姿をあたたかい視線でとらえました。
4本のヘアピン(結婚式の準備) テープを切って新しい場所へ
本橋成一は、1940年東京・東中野生まれ。1960年代から市井の人々の姿を写真と映画で記録してきた写真家・映画監督。1968年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。以後、サーカス、上野駅、築地魚河岸などに通い、作品を発表。
私は本橋成一は「ナミィが唄えば」などの映画監督の側面は知っていたのですが、写真家として作品展を観覧したことはありませんでした。
キュレーターがこのふたりを並べてみようという企画を思いついたのは、炭鉱やサーカス、市場など、人々が交差するシーンの捉え方が似ているところ、金銭面では貧しくとも心豊かに生き抜いている人々を見つめる温かいまなざしや、時代や権力におもねらない凛とした姿をとらえるところが共通していたからだろうと思います。
ドアノー「炭鉱」 「サーカス」
本橋「市場」
本橋は、チェルノブイリ被災地に生きる人やサーカスの人々、屠殺場や市場に生きる人々を見つめる。
今回の写真展のイベントがすばらしい。ポレポレ東中野で上映されてきた本橋のドキュメンタリー作品が、写真美術館の映画ホールで無料公開されるサービス。なぜか、アニエス・ヴァルダ作品も無料。ただが大好きなHALは、せっせとえびすに通います。広場にミストもでています。暑い中、写真美術館の4階図書室で写真集ながめてすごし、映画を見て、年寄りがエアコンがまんして熱中症で搬送されるよりは、よい夏の過ごし方と思います。
<つづく>