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ぽかぽか春庭「タゲール街の人々 by アニエス・ヴァルダ in 写真美術館」

2023-09-12 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230912
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023夏シネマ(1)タゲール街の人々 by アニエス・ヴァルダ in 写真美術館

 海の日、7月17日。写真美術館で、10時半から『5時から7時までのクレオ』、15時から『タゲール街の人々』を観賞。
 「タゲール街の人々」、原題は「Daguerreotypes タゲレオタペ」
 パリ14区、モンパルナスの一角にタゲールの名を冠した通りがある。銀板の写真乾板を発明したタゲール。アニエス自身がタゲール街に事務所兼住所を構えて50年住み続けており、住民たちのひとりひとりをよく知っている。タゲール通りに暮らす住民たちの生活を追ったドキュメンタリー作品。

 肉屋、美容院、仕立て屋、香水屋、ボタン屋、パン屋、さまざまな小さな商売に励み地道に地味に生きていた人々に、いつパリに出てきたか、夫婦のなれそめは、などの質問をして答えてもらう。香水屋の奥さんはほとんど口をきかないが、みなよく話し、笑い、手品師が町で公演すると、手品師の火吹き術やらナイフ刺しやらの術に大喜びし、筋肉硬直の催眠術に協力し、皆で楽しむ。

 小さな街角の心温まる人々、というおなじみのドキュメンタリーに仕立ててあるし、1975年の制作ということを考えると、ひとつの地域の「群像劇」ドキュメンタリーとしては、その後のドキュメンタリーのひとつの「型」になっているのかもしれない。たとえば、私がときどき見る「小さなイタリアの村」というテレビ番組のドキュメンタリー。毎回イタリアの村の人々の生活をとらえています。ドキュメンタリーの作り方としては、イタリアの村のほうがわかりやすく村のけしきが美しい分、画面になじめる。

 タゲール街の人々も悪くはなかったけれど、それぞれの店の中のロケがほとんどだったので、画面がやや単調だったのと、手品が古臭いので、冒頭のマントを広げた手品師がなにやら魔術的なことをするのかという期待がはぐらかされて、手品師いないほうがよかった。
 せっかくの「タゲレオタイプ」なので、白黒銀板写真でそれぞれの店の夫婦を写し、手彩色で色付けした絵が実物の夫婦になってそれぞれのなれそめなどを話し出す、という作業を手品師にさせたかった。

 香水屋の夫婦。妻はほとんど声をださないが、夫は妻をあたたかく包んでいる。


 アニエス・ヴァルダ(1928-2019 )は、夫のジャック・ドミとともにヌーベルヴァーグ映画の旗手として走り続けて、91歳で亡くなりました。
 ヴァルダの代表作となったのは、1961年の『5時から7時までのクレオ』医師からがんの疑いを告げられ、検査の結果を待つ間の2時間を歌手クレオがどうすごしたか、リアルタイムで時間がすすむ、という作りの2時間の映画は、高い評価を受けました。
 私が見たのは70年代もおそくなってからの名画座上映だったろうと思うのですが、クレオの2時間は私にはさっぱりおもしろくともなんともなかった。映画の深いところをくみ取る感受性がないのは若いころも今も同じですが、今なら少しはこの映画に近づけるかしらと、写真美術館の無料上映にでかけました。無料大好きですから。

 前の晩9時に寝て、午前1時にトイレに起きました。そのまますぐに眠れることもあるけれど、17日は午前5時まで眠れないので、布団の中ごろごろしながら原田マハ『リボルバー』を読む。夫が「読むならあげる」とよこした文庫。原田マハのアート小説、好きです。リボルバーというタイトルだからアートとは関係ない話かと思ったら、ゴッホとゴーガンが暮らした下宿屋の1階食堂に飾ってあった拳銃の話。
 睡眠不足をいいわけにしてはなんですが、クレオの2時間のうち、三分の二は眠っていた。『5時から7時までのクレオ』、どうも相性悪い作品みたい。

 写真美術館は、第3水曜日のシルバー無料もいち早く復活させたし、こうして無料の映画上映会もしてくれて、高齢者にやさしい美術館。夷ガーデンプレイスのビル38階には無料展望室もあるし、恵比寿駅から動く歩道で行けるし、都内で好きな場所のひとつ。

<つづく>
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