春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「スタイリスト・リュージのゲイシャ」

2023-10-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
20231003
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記秋(2)スタイリスト・リュージのゲイシャ

 私はお出かけしたとき、途中で足を休める休憩所は、たいていマック。だいたいの駅前にはマックがあるし、なんと言っても安い。マックのコーヒー(S 120円)とソフトツイスト(ソフトクリーム150円)、計270円で1時間休憩します。これより安い店は今まではなかった。マックが見当たらない場所では、ドトール、ヴェローチェなど。たまにスタバ。適当な椅子があるところで、持参のペットボトルを飲みながら、足を休めることも多い。

 帰宅する前に、ほっと息抜きをする場所があると疲れがとれ、家に疲れを持ち込まず帰れます。
 しかし、これまでもよりの駅前は、カフェもマックもスタバもない、チョーさびれた駅でした。パン屋と蕎麦屋、焼き鳥屋がありますが、お出かけして、家に帰る前に一息つくお店がほしかった。

 駅前にあるカフェ「イヨクコーヒー」が6月に開店したと思ったら、すぐに休業。8月に再開店したのでうれしく思いました。しかし、店主さんは、本職のスタイリストの仕事もあり、私が駅前から帰るとシャッターが下ろされていることが多く、なかなか3杯目のコーヒーを飲めずにいました。

 ようやく飲めたのは、9月23日、コンサートの帰りでした。
 マスターおすすめのコーヒー、パナマのドン・ペペ農園で生産されたトレジャーマウンテン(最初の収穫は1898)。生産者はホセ・ハンベルト・バスケス。

 豆の種類名だけじゃなく、生産者の名前まで表示するって、生産者へのリスペクトが現れていて、私にはよりいっそうこの豆がおいしく感じられる。とは言っても、味覚音痴の私。コーヒーの「きき豆」をして「うん、この甘みと酸味のバランス、まろやかな味わいはブルーマウンテン」とか言うことができないのはもちろん、味を表現する語彙も持たない。

 ていねいに淹れてくれるマスター。


 カウンターに座っていた女性が「〇〇は今日焙煎したの?」とマスターに聞いている。豆の名前〇〇は、私には聞き取れなかった。マスターは「今日焙煎したから、おいしくなるのは明日かあさって」と言う。焙煎したあとに少し時間をおいたほうがおいしくなるってことも、私は知らなかった。理由をたずねると、素人にやさしく教えてくれる。「焙煎するとコーヒー豆から炭酸ガスがでます。その炭酸ガスが減っていき、豆が落ち着くのが2,3日したころ。

 「焙煎すると豆から炭酸ガスが出るなんてこと、はじめて知りました」と、正直に言うと、女性は「ふつうは知らないです」と。「明日も来て、明日と味比べをするから、今日は今日で飲んでみる」と、味比べを希望しました。



 マスターは、いつものように丁寧にお湯を注ぎ、わたしにまで味見をさせてくれました。並べて交互に飲んでみれば、味音痴にも味の違いがわかります。たしかに、味見に淹れてもらったほうは、まだ若い味がしました。さわやかな風味でしたが、今日の段階では初めに注文した「トレジャーマウンテン」のほうがよい味の気がしました。

 それにしても、この女の人はちゃんと豆のこともわかるんだなと思って、「明日もくるって、お近くにお住まいですか」と尋ねました。マスターは苦笑いして、「妻です」と。うわぁ、失敗。最初に来た時、コーヒーをサーブしていたので、会っていたはずなのに。なんでも忘れてしまい、特に顔を覚えられないのが私の若いころからの弱点。教室で学生の顔を覚えるためには、席の上に名前カードを置かせていました。さすがに学期が終わるまでには覚えられましたが。
 6月の開店時に会っていたのに、まったく覚えていなかったのは、恥ずかしい限り。

 奥さんと話して、私が田舎育ちであることを話し、田舎が群馬であることを話すと、「私も群馬です。群馬のどこですか」とのお尋ね。生まれた町の名を言う。奥さんは「私、S女出身です」と言う。「え~、私もS女です」
 私の卒業年度の30年あとの卒業の同窓生でした。1970年に東京に出て53年たつけれど、1968年卒業のクラスメート以外で、S女出身者に出会ったのは初めてです。
 ご縁があったことがわかったので、私の名を告げ、奥さんのお名前も聞きました。それが、私の姑の名前と同じ。つくづくご縁がある方でした。

 今までドリップするフィルターをのぞいたことなかったのですが、「見て」と促されて覗くと、ハンバーグのように丸く膨らんでいるのがわかりました。豆に残った炭酸ガスによりこのように膨らむのだけれど、焙煎仕立てだと炭酸ガスが多すぎ、日にちがたつにつれて炭酸ガスはぬけていく。2,3日後が一番いいらしい。この炭酸ガスについて調べてみると。

 炭酸ガスは、コーヒー生豆を焙煎してコーヒーの炒り豆にする時の過程で発生します。コーヒー生豆にあったクロロゲン酸、それからクエン酸、あるいは酢酸、などなどが分解されて発生するようです。発生した炭酸ガスは焙煎中にその半分を放出し、残りの炭酸ガスの一部がコーヒー豆に残る、ということになる。この炭酸ガスは、ずっとコーヒー豆の中に入っているわけではなく、日にちの経過とともに、炭酸ガスはゆっくりと空気中に放出されていきます。
 
 9月28日中秋満月の夜も、イヨクカフェへコーヒーを飲みに。
 「スペシャルコーヒーですが、特別にサービスします」と淹れてくれたのは、「ゲイシャ」という入荷がごく少ない希少な豆。
 めったに市場に出回らない豆ですが、お台場のビッグサイトであったコーヒー豆のフェアで特別に手に入ったのだそうです。入荷がコンスタントにはできないので、カフェのメニューには載せられないという、そんな希少な豆を、味音痴の客に提供してもらうのは申し訳ないと思ったのですが、好奇心が勝ち味わうことに。いつものようにマスターが丁寧に淹れてくれます。

 味の語彙が少ないHALなので、「おいしい」しか言えないのが情けないところですが、とにかくおいしい。豆は、100gで5000円くらい、ホテルなどではカップ一杯7500円とか、1万円で提供するという値段を先にきいていたので、そりゃ、いくら味覚音痴でも「まずい」と思うわけがない。ゲイシャは、イヨクカフェのメニューには上げられないというので、ほんとはオフレコなんですが、自分のメモのために、豆の産地を秘密にかいておきます。白地反転文字です。
 ・パナマ レリダ農園。ナチュラル
 豆の名がなぜ、ゲイシャというのかというのかも調べました。エチオピアのゲシャ村に自生していたアラビカ種突然変異の豆だったものが、なまってゲイシャになったのだとか。エチオピアでは栽培されていなかった豆を、パナマのエスメラルダ農園が栽培に成功し、21世紀になってから奇跡の豆として高値がつきました。今ではエスメラルダ以外にも栽培している農園が出てきましたが、栽培の難しい豆なので、大量には栽培されていない。

 9月29日は、私より30年若い同窓生の奥様は自分自身のお仕事。マスターの来し方を問わず語りにうかがいました。
 マスターは、車が大好きだったので、自動車の専門学校に入校し、整備士をめざしました。しかし、集まった精鋭たちは、レベルがちがう車オタクたち。(いまどきの若者用語ではレべチ)自分はかなわないと思ったけれど、親に学費をだしてもらったので、卒業後2年半は自動車関連の企業で働いた。のち、自分の進む道を考えて退職。英国で修業し、スタイリストとして仕事を始めました。ryuji Mimakiさんのサイトには、すてきなスタイリング作品が出ていました。

 店内に控え目に流れる曲は、知らない曲。舌も弱いが耳も弱い。マスターにお聞きすると、トム・ウェイツ(Tom Waits )。有名な歌手だそうですが、初めて聞きました。私と年が同じです。youtube でパソコンしながらヘッドホンで聞くのはクラシックが多い私ですが、さっそくTom Waitsも聞いてみました。

 音楽の幅も狭く、コーヒーについての知識も味覚もまだまだ不十分なHALですが、はじめてできた駅前のお気に入りのカフェに通ううちに少しは味もわかってくるかも。では、次のコーヒータイムを楽しみに。

 ゲイシャを飲んだ9月29日は、中秋の満月でした。


<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする