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ぽかぽか春庭「アラヤシキの住人たち」

2023-10-17 00:00:01 | エッセイ、コラム


20231017
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023夏シネマつづき(1)アラヤシキの住人たち

 9月17日鑑賞。写真美術館で無料の映画鑑賞のつづき。本橋成一監督のドキュメンタリー作品『アラヤシキの住人たち』2015
 
 映画オフィシャルサイトの口上
 北アルプスの山裾、長野県小谷村。車の通わない山道を1時間半歩いたところに真木共働学舎はある。生きることの根源的な意味を考える「共に働く学び舎」として創設され、今の社会に肉体的・精神的な生きづらさを抱える人も、そうでない人も、だれもが固有に持つそれぞれの能力を尊重しあい暮らしている。春・夏・秋・冬…40年。くり返されるその営みは、誰にもある生きものとしての人間の時間を思い起こさせる。
 
 共働学舎の説明
 1974年(昭和49年)、宮嶋眞一郎(元自由学園教師)の首唱のもと、心や体に不自由を抱える人たちと数人の仲間により、長野県小谷村で共働学舎は始まりました(立屋共働学舎)。現在まで5カ所で活動を続け、2024年に50周年を迎えます。
1975年、同じ小谷村の山間部にある真木集落で「真木共働学舎」が始まりました。信州の2カ所では米、肉牛、養鶏を中心に生産し、雪に閉ざされる冬は工芸、木工などを行っています。


 真木共働学舎の説明
 長野県北安曇郡小谷村真木。1978年、集落全体の高齢化などによって廃村となった後の集落で、共働学舎の創設者宮嶋眞一郎と数人の同士が生活を始め、真木共働学舎がスタートした。ひときわ立派な茅葺きの家「アラヤシキ(新屋敷)」に現在20代〜60代の男女十数人が犬や猫、ヤギ、鶏などの動物たちとともに暮している。村の先人達が代々使ってきた田畑、数軒の古民家をそのまま受け継ぎ、農業中心の生活を続けてきた。昔から車の入ることができない真木集落へは山道を約4km、1時間半歩いて往復する。冬は根雪が2mを超えることもある豪雪地帯。  

 本橋監督のことば
 共働学舎の創設者、宮嶋眞一郎氏はぼくの中学校のときの恩師です。通っていた自由学園は、共働学舎と同じように「競争社会よりも協力社会を」という精神のもとにある学校でした。卒業し、どんどんモノが豊かになっていく時代のなかで、何かが違う、豊かとはこういうことじゃないんじゃないか、という思いがいつもどこかにありました。5年ほど前から真木共働学舎に行くようになり、ああここにはぼくが教えられた原点がある、と思ったのが映画を撮るきっかけです。
 

 監督の本橋成一は、自由学園の恩師である宮嶋眞一郎が設立し、宮嶋の息子、信が継承している共働学舎の季節のひとめぐりをドキュメンタリー映画として映像に残しました。

 画面は四季折々に美しく、身体的精神的不自由さを抱えた人たちが、ボランティアの人といっしょに生活しているようすを丁寧にすくいとっています。プイといなくなり、結局出戻ってきた人に「黙ってでていったのは許しがたい」という人もいる中で、周囲は受け入れていきます。

 田植え、ヤギの出産、稲刈り、柴刈り薪割り。ごはんができると、軒につるされた木の板を叩きたい人が叩いて、働いている人々に知らせます。自足自給の食事をいっしょにとり、ときに祈りのことばを唱和し、ひとりになって煙草を吸い、みなで結婚式を行う。

 映像はたいへんゆったり進んでいくので、近年の数秒で画面が切り替わっていく速い展開の画面作りに慣れている目で見ると、「途中で寝た」と言う感想も出てきます。私の後ろの席の人も、帰り際「眠った」とお連れさんに告白していました。椅子に座って周囲が暗くなるといつでもすぐに眠れるHALは、アラヤシキでは寝なかった。珍し!

 共同で働く団体、イデオロギーで固まっていたり、宗教色が強かったり、拒否反応が起きてしまうことが多いのだけれど、本橋監督の撮り方が上手なんだろうと想うけれど、すんなりこの共同の中に気持ちが入っていけた。ご飯の前に聖書を読むのだけれど、それに加わらなくてもだれも咎めたりはしないだろうと思います。

 共同体に入ったとき、私なら「なまけ者と非難されないようにせいいっぱいがんばって働く」となってしまいがちです。
 共働学舎にいる人々は、それぞれが自分にできることをする。ときには住人同士でぶつかり合う。でも、アラヤシキの住人たちは、みないい顔をしています。

 映画もよかったが、「場所の継承に伴う共同体と土地の関係性の再構築に関する研究 ―長野県小谷村真木集落を事例に― 」という研究論文がおもしろかった。東京大学環境学の修士論文。ああ、こうやって学位のためにこの集落に潜り込んだ学生も、のびのびと過ごせるんだろうなあと思いました。
 
<おわり>
コメント
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