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ぽかぽか春庭「再録・花の名前和名洋名」

2023-12-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
202312016
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>花の名前(3)再録・花の名前和名洋名

 2017年にUPした「花の名前」を再録します。2023の付け足しとして、花の絵も和洋を並べてみます。
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20170611
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>花の絵・花の名前(1)花の名前和名洋名

1)木蓮マグノリア
英語のマグノリアは、木蓮科に属する花全般を指すので、日本の木蓮に当たるのはMagnolia quinquepeta もしくは Magnolia liliiflora、なのだそうですが、それにしても、マグノリアと木蓮がまったく結びついていませんでした。
 「マグノリアの花たち」英語タイトル「Steel magnolia」についてもっと理解していれば、映画の舞台ルイジアナ州の州の花がマグノリアであり、南部女性の代名詞が「マグノリアの花」だったことがわかったのかもしれません。
 原題Steel Magnolias鋼のマグノリアとは、外見は花のように愛らしく優しいが、中身は鋼(Steel)のように頑強な芯が 一本通っている女性という意味になります。元ファーストレディーの社会活動家ロザリン・カーターは、南部ジョージア州から初めて選出された米大統領ジミー・カーターの妻。しばしば「鋼のマグノリア」と呼ばれたそうです。
 
 もっとも、私の木蓮のイメージは、奥村土牛が描いた紫木蓮や白木蓮なので、欧米でマグノリアと呼ばれている花とは見かけが異なり、「マグノリアの花たち」の中、たとえば結婚式のシーンで、花嫁の髪を飾っていたり手に持つブーケの中にマグノリアがあったとしても、私はそれを見て「木蓮」とは気づかなかったと思います。
 マグノリアと名付けられている花木は150種類にも及ぶのだそうです。私が普段見ているのは、冬に葉を落とす落葉樹ばかりだったので、常緑のマグノリアもあるのに、たぶんそれを目にしても木蓮とはおもわなかったのでしょう。

 花の名前を知らない春庭ですが、Steel magnolia という女性の代名詞は大いに気にいりました。私も「鋼の花」でありたいと思っていますから。
 あはっ、「芯は強いsteelであれ」という希望はかなうかもしれないけれど、「みかけはたおやかな優しい花」ってのはすでに「願っても手にとどかぬ「高嶺の花」ですね。以上、木蓮の英語名がマグノリアだったこと、今頃わかった、ということを述べました。

 ピエール=ジョゼフ・ ルドゥーテ「マグノリア(サラ・モクレン)」
  
小林古径「白花小禽」 


2)椿カメリア
 英語の花の名前、バラがローズ、ユリがリリーくらいは子供の頃から知っていましたが、あとは、おいおいと知ったのもあるし、全く知らないままだったのもあります。


 椿=カメリア。
 子供の頃読んだ子供版世界名作集かなにかで、「椿姫」というのはマルグリットのあだ名で、胸にカメリアの花=椿をつけている、というような文があったからだとおもうけれど、子供向けの翻案で、マルグリットの商売をどんなふうに描いていたのか、記憶無し。純真な子供は、病気で死んでしまう美しい女の人にひたすら同情したのだったかと思います。

ルドゥーテ「カメリア」

速水御舟「椿ノ花」山種美術館所蔵 


3)菊=クリザンチーム英語chrysanthemum フランス語chrysanthème。
 ジャポニズムの本の中に、明治初期に来日したフランス人作家ピエール・ロティ(1850-1923)の小説「お菊さんMadam Chrysantheme(1887)」があったので、菊=クリザンチームと覚えたのだったと思います。
 鹿鳴館で踊る日本人について「黄色い猿たち」と書いたロティの作なので、「お菊さん」読んでませんけれど。日本在留1か月の間だけ「かわいい人形のような女性」を傍らに置くことを望んだロティ。18歳のお兼さんが、1か月間だけの「日本妻」になって、お菊さんのモデルになった
と知ると、ロティについて、ますます印象が悪くなります。
ルノワール「菊」

酒井抱一「菊小禽図」山種美術館所蔵
 
 
3)立葵=ホリホックhollyhock
 6月4日に山種美術館で「「花*Flower*華―琳派から現代へ―」の「植物名解説」を見て、へぇ、タチアオイのことホリホックというんだ、と知りました。6月8日に、ブロ友くちかずこさんの記事にお庭に咲いたホリホックの写真が載りました。淡いピンクの八重咲きです。私は一重のタチアオイしか見たことなかったので、これは初めてと思ってコメントすると、「ホリホックは西洋立葵」と、コメ返がありました。ホリホックは、日本の花葵よりも広い範囲を指すみたいです。マグノリアが広く木蓮科全体を指すのと同じです。
 日本には古くから移入されましたが、これはタチアオイには薬草としての効能があったから。万葉集にも葵が詠みこまれています。棗や黍、粟などの食用植物と共に読まれているので、若葉を食用にした冬葵に比定されるけれど、牧野富太郎博士は、タチアオイ説を主張。
 
「梨(なし)棗(なつめ)黍(きみ)に粟(あは)つぎ 延(は)ふ葛の 後(のち)も逢はむと葵花(あふひはな)咲く(巻16-3834 作者未詳)」
 (梨が生り棗や黍、粟も次々と実り、時節が移っているのに、あの方に逢えません。でも、伸び続ける葛の先のように、後々にでも逢うことが出来ますよ」と言うように、葵の花が咲いています。)
 恋しいキミ(キビ)に「逢ふ日あふひ=葵」に願いを託すのなら、やっぱり冬葵よりもタチアオイのほうがいいように思います。
フレデリック・カール・フリーゼケ「ホリホック」

荒木十畝「四季花鳥」より《「夏(玉樹芳艸)」山種美術館所蔵 

4)水仙=ダフォディルdaffoddil
 1964年にリリースされたブラザースフォアの「7つの水仙」」でDaffodils=水仙と知りました。(1957年リー・ヘイズ&とフラン・モズリーによって作られた)。
 60年代後半、アメリカのフォークやポップスを英語で歌いたいと思ったのですが、曲にカタカナで書いた歌詞を当てはめていくと、どうしてもカタカナ英語が余るのです。それで、英語はきっぱりあきらめました。
ラトゥール「バラと水仙」

小茂田青樹「水仙」山種美術館所蔵

 
5)芥子=ポピーpoppy
 花屋に並んでいるかわいらしいポピーと、阿片をとる危険なイメージの芥子が同種のものだと、長い間一致していませんでした。別の植物だと思っていたのです。阿片を採取するopium poppyは白い芥子だけ。いつ一致したのか、記憶がありません。
 阿片(ピンインでは: a piàn アーピエン)の発音が、英語だとopiumとなり、日本語では阿片を音読みしてアヘン。

クロード・モネ「アルジャントゥイユ周辺のポピー」


土田麦僊「芥子図」山種美術館所蔵
 

<つづく>
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