20年ほど前に朝日新聞や北海道新聞で連続コラムを書かせて頂ける機会があった。その当時の掲載記事や原稿を失っていたのだが、先日、とある記者の方からデーターで残っていた原稿を頂けることになった。 800字という限られた文章だったので、せっかくだから、再度校正しながら自分の感性取り戻しのためにもブログに時折、再掲載してゆこうと思う。
[発行日]=2000年12月6日 道新
[見出し] スノーシュー 深雪の森で 高木晴光(自然遊びのすすめ)/北海道
バヒュッ、バヒュッ、バヒュッと音をあげながら、深い粉雪をけ散らかして歩き回れる爽快な道具があるのをご存知ですか? 雪が降り始めた十二月の森で使うと最高です。札幌近郊では、中山峠辺りで、毎年、私たちはこの雪遊びを始めます。快晴の日に当たれば、そりゃーもう気分も上々。目の前に広がる雪原に、自分だけが入りこみ、道を刻みつけながら(トレース)歩きます。
夏場は笹(ささ)や低潅木(かんぼく)が生い茂っている場所も、雪山では思い通りに歩き回れます。人間の好奇心が満たされるような満足感があるのです。というより、見知らぬ新しい場所を占領している…独占欲という本能が喜んでいるのですね。その魅惑の世界にでかけることができる便利な道具の名は、スノーシュー(洋式のかんじき)。
日本には昔から輪かんじきという木(竹)製の足元に装着する輪っぱがありますが、それよりも大きめの長だ円形型をした道具で、今は軽金属やプラスチックでできていて、長靴に簡単に装着できます。寒さが厳しい冬の初めであれば、ふわふわな粉雪が降り積もっています。身体を没するほどの新雪で、スノーシューをつけていても、膝上まで埋まりますが、粉雪舞い上げて身動きがとれます。大きな樹木やモンスターのような奇怪な雪の造形が見つかれば、バヒュッ、バヒュッ、バヒュッ(空気の層をたくさん含む雪を踏む音)と豪快に一直線に近づくことができます。もちろん、初心者や年配の方でも簡単に操作ができます。
暖かい部屋にうずくまっていないで、雪の世界をのぞいてください。せっかく雪国に住んでいるのですから。ただし、初心者が山の中へ入るときは、くれぐれも雪崩にご用心。遊びたい人は一緒に遊びましょう。
(北海道自然体験学校NEOS 高木晴光)