昔、新聞の投稿していたコラムの焼き直し・・・
あのころは、週に4日は自然ガイドに出ていて、道内もあちらこちら訪ね、さらには週一本のコラムを書き続けていたので、感覚が研ぎ澄まれていたなあ・・。かなりの忙しさの中にいたのだけど、1週間は長く充実をしていたなあ。当時と比べもんになく自分の時間が今はあるのだが、あっという間に1週間が過ぎてしまう・・。
同じような感性は取り戻せないだろうけれど、改めて自然環境に溶け込むような日々を送りたいもんだ。
PS このコラムは朝日新聞だったですが、その一部が天声人語に紹介され、明治大学だったかなあ・・入試の国語の問題にも引用されたことがありました。
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冬の夜明け 気分爽快 高木晴光(自然遊びのすすめ) /北海道
まだ薄暗い大気の中を走る車内は静かだった。夜明けの冷たい窓の外に比べ、ここは暖かな平和な朝の列車の中。札幌から千歳に向かう通勤にはまだ早い早朝だった。曇った冷たいガラス窓をふくと、前方の空がほんの少し色づいていた。日の出だ。時計をみるとまだ七時過ぎ。意外と水平な広がりのある大地が札幌の郊外にもあるもんだなあと改めて感じ、北海道の大きな朝の空を見つめ始めた。
山の頂からご来光を拝む時は、まだかまだかと待つものだが、今朝はグッドタイミングだけが待っていた。お日様が昇ってくるらしき部分が、少しずつ橙々(だいだい)色を濃くしてくる。そして、空の麓(ふもと)の一点だけが鮮烈に輝き、オレンジの閃光(せんこう)が放たれる。みるみるうちに点が大きくなり、線香花火の「火の玉色」。でも、とてつもなく巨大なお日様が現れた。みごとで美しい風景だ。今日が始まる! ところが、車内の乗客は、誰(だれ)一人として見てはいないようだ。もったいないなあ。
ご来光を拝み、爽快(そうかい)な気分を味わう体験をもった人は多いだろう。それは、夜明けの新鮮なエネルギーに触れたからだ。そして、「爽快な気分」こそが、そのエネルギーを自らの体に蓄えることができた証拠なのだ。
ところが、最近「日の出を見た」体験をもつ人すら減ってきている。(大学生のアンケートで半数近くが「見たことがない」という回答もある)夜明け体験をするのには今が絶好の時期だ。夏なら四時でも、今は朝七時ちょっと前に起きればいいのだ。
その翌日は、夜明け前から、露天ぶろ。日の出時刻よりちょっとだけ早いひととき、空は落ちつきのある青空になることに気がついた。静かで豊潤なエネルギーの満ちあふれる朝を裸で過ごした。感謝。
(北海道自然体験学校NEOS 高木晴光)