高木晴光の 『田舎と都市との ・ 日々こうかい記』

「新田舎づくり」を個人ミッションとし、田舎と都市とを行き来する人生・仕事のこうかい(公開・後悔・航海)日記

萱野茂さんの思い出

2024-09-20 15:49:38 | 日記

2024年9月4日

日高二風谷を通るので、萱野茂資料館を訪れました。二風谷には国の補助も入った大きなアイヌ博物館がありますが、その国道をはさんだ向かい側に萱野さんの私設アイヌ民族資料館があります。 萱野さんとの出会いの思い出を綴っておきたいと思います。

初めてお会いしたのは、北海道自然学校NEOSの活動を始めた頃でしたから、2005前後でしたでしょうか・・。 その頃のアタシは対人コミュニケーション力不足に直面していました。 それをなんとかしようと思って、けっこういろいろなワークショップに参加していました。コスミックダンス(ダンスセラピー)、スウェットロッジ(ネイティブインディアンの儀式)、賢治の学校のサイコセラピー、ブリージングセラピー、地球交響曲・ガイアシンフォニーの自主上映会などなど・・、それはそれで、自己を開示し、他者とのコミュニケーション力をつけていったのですが、そんな流れの中で、アイヌ民族初の国会議員にもなった萱野茂さんの講演を聞く機会がありました。

たしか、北海道新聞社の本社ビルの大会議室だったと記憶しているのですが、会場満席で私は演壇の前から4,5席に座りました。 萱野さんが司会者の呼ばれ登壇してきました。そのとたんのオーラがすごかったなあ。圧倒される存在を感じました。 そして、まずはアイヌ語でユーカラを謡いはじめました。 もちろん、何を言っているかはわかりませんでしたが、その調べを聴いたとたん、背筋に電気がはしったようにゾクゾクと痺れて身体が震えて来ました。私の遺伝子に直接振動を与えるような共鳴感があり、涙腺が崩壊ししゃくり上げて泣きそうにもなり必死に堪えました。 そして、アイヌの男は先祖の名前を10数代まで覚えていると言い、「私は、○○の息子の△△の息子の・・・□□□の息子の●●●です」、ご自身のアイヌ語名を名乗られました。 それはそれは「いのちのつながり」を具体的に目にしたように衝撃的でした。

そんなことがあって、1年位過ぎた頃でしょうか、関西で1月に開催される環境教育の大きなフォーラムに萱野さんをゲストでお招きするにあたり、高齢な萱野さんの付き添いを誰か北海道からしてくれないかとの話があり、私は即座に立候補してそのお役目にあたりました。 2泊3日のカバン持ちです。同宿の和室に泊まり布団の上げ下ろしもしました。 それで、私を気に入ってくれたのでしょうか・・、 帰路千歳空港に到着する直前に、「たかぎくん、今晩、二風谷で言語収集をしている集落で新年会があるんだが、参加するかい」との誘いを頂きました。 もちろん、「行きます!!」と即答。迎えの車に乗ってついてゆきました。

山の中の大きな室内集会場で、6,70人はくだらぬ地元民が大きなひとつの宴席と作って集まりました。萱野エカシ(長老)を中心にその隣に萱野さんのご長男、その隣にアタシ。さらに私の隣には、もう立つのもやっとと見えるような枯れ木のようなお婆さん(フチ)という上座でした。新年会はなんてことはなく進みました。「樹木の和名をアイヌ語ではなんというのか」のクイズがあったり、日本歌謡のカラオケ大会が始まったりで、料理もアイヌ風のものもありましたが、日本のおせち料理の折弁当でした。ちょっと期待はずれだなあとも感じたのですが、

最後に・・・、祝いの歌と輪踊りを参加者全員ですることになりました。それも、「なんだかめんどくさいなあ・・」空気があってたいして盛り上がりにかけていたのですが、そのうちに周りの人が、「アンタが歌えや」と隣にいた枯れ木婆ちゃんをけしかけました。「あたしゃ、もういいぺっさ」とフチは断っていたのですが、若手婆ちゃんも「うたえ、うたえ」というもんですから、ついにそのフチが声をあげました。

ア~ゥエアイ、ア~エアイ~!!

それはそれはすごかった!! 大地の底から湧き出てくるような、いったいこの婆さんのどこからこんな声が現れるのか!!  一気に場は全員の足踏みも高まり、男衆の雄叫びも力強くなり盛り上がりは最高潮になったのでした。

萱野さんが私にささやきました。

「たかぎ、聴いたべ!! 観光地で演じ観せている踊りや唄とは違うべ!! これが本物のアイヌの輪踊りだ! 忘れんなよ」と。

アメリカネイティブインディアンの唄や さらにはどこかで聴いたことがあった北海道のかつての出稼ぎ漁師達・やん衆が網を引き上げるときに掛け声唄にも似ていました。 人間が自然と一体になる瞬間を味わった貴重な体験でした。

 

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