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スカイ再生のカギ握る「エアバス10機」の重荷 スポンサー候補があまた名乗りを上げたが

2015年03月08日 07時41分05秒 | 経済
 民事再生手続きを進めているスカイマークの事業スポンサーとして、航空業界から、ANAホールディングス、マレーシアの格安航空会社(LCC)エアアジアなどが名乗りを上げた。100社余りに声をかけた結果、エイチ・アイ・エスや双日といった航空以外の企業を含め、支援の意思を表明したのは約20社に上った。すでに映像制作大手のティー・ワイ・オーが投融資をしない業務だけでの支援をすることが決まり、スポンサーの選定が進み始めている。

 だが、ヤマ場はこれからだ。スポンサー選定と並行し、債権者との交渉が本格化する。債権者はまず3月18日までに、東京地方裁判所に再生債権の金額や内容を届け出る。これを行わなければ、再生計画の決議で議決権を行使できない。関係者間で注視されているのが欧エアバスの動き。同社は大型機「A380」6機の解約違約金として、最低でも7億ドル(約830億円)を届け出る見通しだ。

 エアバスの違約金が加わると、スカイマークの負債総額は、これまで公表していた711億円を大幅に上回る。一定割合の債権カットが行われるとしても、再生に向けた負担が増すことは確かだ。スカイマークは解約問題が表面化した2014年から、「違約金の金額には合理性がない」と主張してきただけに、エアバスの届け出を否認するはず。債権額の確定をめぐり訴訟に発展する可能性もある。

 両者の関係はさらにこじれそうだが、実は、一定の条件が整えば、違約金を減額する意向がエアバスにはある。その条件とは、スカイマークがリース契約で保有している、10機のA330の活用だ。

 言い換えれば、事業スポンサーを選定するうえでの重要な要素は、この10機をどこまで引き取る能力と意思があるか、なのだ。

 A330の初号機をスカイマークが受領したのは14年2月。同年6月に就航(羽田─福岡線)させたが、搭乗率が思うように上がらず、ドル建てのリース料も円安で負担が増した。経営の再建に当たって、スカイマークはA330のリース契約を解除する意向を示しており、2月1日から5機のA330の運航を停止。米ボーイング製の「B737」に一本化し、効率化を図っている。だが、羽田空港に置かれたA330は、駐機料など維持費がかかり、中途半端な状態のままだ。

 この5機はエアバスからリース会社への売却が完了している。にもかかわらず、エアバスが今後納入する5機も含めた10機の引き取りにこだわるのは、なぜなのか。

 A330の導入をスカイマークが発表したのは12年2月。当時の為替レートを前提にすると、10機の総額は約1800億円にもなる。ボーイングに日本市場をほぼ独占されてきたエアバスには、競合に一矢報いる商機だった。

 ただ、スカイマークと直接契約するリース会社にとって、この案件はリスクの高いものだったようだ。「スカイマークにリースする機体と手を切りたい。売却先はないか」──。

 13年に入ると、リース会社の米イントレピッドは、日本のある航空コンサルタントにこんな相談を持ちかけている。イントレピッドは10機のうち7機を引き受ける予定だった。関係者によると、当時A330はまだ製造中だったが、急激な円安の進行で、イントレピッドはスカイマークがドル建てのリース料を円滑に払えるか、懸念していたという。

 ところが、最終的にイントレピッドは、スカイマークとリース契約を結んだ。航空機リース業界の関係者によると、リース会社が航空会社の返済力などに不安を感じた場合、航空機メーカーは機材購入を後押しする取り決めを結ぶケースがあるという。具体的には、航空会社がリース契約を継続できなくなった場合、航空機メーカーが機体を買い戻すか、機体の対価を補填し、不測の事態でもリース会社の損失を回避するといった内容だ。

 こうした“安全網”をエアバスが整えていたのであれば、及び腰だったリース会社がスカイマークと契約したこと、そして今回、エアバス側が売却済みの5機を含む10機の継続利用にこだわっていることにも納得がいく。

 包括的な事業スポンサーとして手を挙げたANAにとって、支援のメリットは、スカイマークが持つ36の羽田空港発着枠を取り込める点だ。羽田発着枠は1枠当たり年間20億~30億円の売り上げを生む。最大1000億円相当の“利権”を獲得するため、A330をこれからどう活用するか。

 ANA自身が発注している機材のうち、オプション発注分をキャンセルし、A330を使うという手はある。傘下のLCC2社はエアバス機を使用しており、こちらで使うこともできる。

 一方エアアジアは、傘下のエアアジアXがA330をすでに導入しているため、親和性がある。A330の引き取り能力を訴求して再生計画に絡み、日本への再参入に弾みをつけるつもりだろう。

 いずれにしても、10機を丸ごと取り込む負担は大きい。メリット・デメリットを見極め、A330全機の引き取りを見合わせる可能性もゼロではない。その場合、エアバスはA380の違約金交渉で一歩も譲らず、訴訟も辞さないだろう。その結果、債権額が膨らめば、ANAなどの事業スポンサーが出資を断念するおそれもある。

 スカイマークへのつなぎ融資を引き受けているインテグラルは今後、融資を出資に振り替える方針だが、協調して出資する企業が出てこなければ、追加出資の必要性もある。名乗りを上げた事業スポンサーにどれだけの覚悟があるのか。A330の行方が再建の命運を握る。

(撮影:尾形文繁)
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