接続制限問題に続いて、太陽光発電への投資熱の冷却剤となりそうだ。
経済産業省の有識者会議「調達価格等算定委員会」は2月24日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)における、2015年度の価格案をまとめた。
事業用の大型の太陽光発電は、14年度の1キロワット時当たり32円(税抜き、以下同じ)を、15年4~6月は29円に、7月からは27円に引き下げる。2段階となったのは、事業者の利益に配慮する3年の優遇期間が6月で終わるためだ。
また、家庭用の太陽光発電は、14年度の37円を、4月から東京、中部、関西電力管内で33円に下げる。出力制御装置の設置が義務づけられたそれ以外の地域は35円とした。事業用も家庭用も3年連続の引き下げで、事業用の下げ幅は過去最大となる。
一方、風力などほかの再エネは、14年度の価格を据え置いた。価格は14年度の設備導入・運転コストを基にしているが、今回は、設備導入が太陽光のみに偏っている現状を是正するため、重点的に太陽光の価格を下げた。
同委員会委員長の植田和弘・京都大学教授は「太陽光は優遇期間の特別利潤の上乗せをやめることで、導入の動きが弱まることが想定される。一方、地熱やバイオマス、風力などは導入に3年以上かかり、伸びていないため、優遇を維持した」と語る。
太陽光発電所の施工を請け負う業者の幹部は、「36円から32円になって受注が激減した。27円になったら消滅するかもしれない」と嘆く。
太陽光の価格はFIT開始当初の12年7月に40円、13年度も36円と高く設定されたため、ファンドや外資も入り乱れる発電所建設ラッシュが起きた。税引き前の内部収益率(IRR)5~6%の適正利潤に、優遇期間中は1~2%を上乗せするのが政府方針だが、実際にはより大きな収益を得ている事業者も多い。
だが、14年度からは価格が32円へ低下。加えて、大規模設備を意図的に小規模に分割して、本来の安全規制や機器設置費用を逃れる分割(分譲)案件が禁止された。その結果、13年度末に36円案件の駆け込み需要が激増。九州電力など5社が接続を“保留”するという問題に発展した。
九州など日照条件がよく地価も安い地方では、すでに送電線への接続量が限界に来ており、新規参入は困難になった。そのうえ価格が27円に下がると「事業のうまみはなくなる」(関係者)。工場の屋根や住宅に設置する自家消費の需要は残っても、リターン目当ての投資需要は激減が必至。足元はなお豊富な受注残を抱えるパネルメーカーも、新規受注の先細りに備えた対策が急務となっている。
ただ、前向きに考えれば、太陽光の買い取り価格低下は普及によるコスト低減が進んだ証左でもあり、電気料金への上乗せは一段と縮小する。また、出力がより安定した、他の再エネへの投資が活発化する可能性がある。
植田委員長は「小規模の未利用木質バイオマスを別区分化(新設)した意義も大きい」と話す。価格を高めに設定したことで、間伐材などの資源の有効利用や雇用増大などを通じ、地域の活性化に寄与することも期待できる。
FITに規制緩和やインフラ整備も併せてバランスを取りながら、再エネを最大限導入できるような、官民の取り組みが今後は重要だ。
経済産業省の有識者会議「調達価格等算定委員会」は2月24日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)における、2015年度の価格案をまとめた。
事業用の大型の太陽光発電は、14年度の1キロワット時当たり32円(税抜き、以下同じ)を、15年4~6月は29円に、7月からは27円に引き下げる。2段階となったのは、事業者の利益に配慮する3年の優遇期間が6月で終わるためだ。
また、家庭用の太陽光発電は、14年度の37円を、4月から東京、中部、関西電力管内で33円に下げる。出力制御装置の設置が義務づけられたそれ以外の地域は35円とした。事業用も家庭用も3年連続の引き下げで、事業用の下げ幅は過去最大となる。
一方、風力などほかの再エネは、14年度の価格を据え置いた。価格は14年度の設備導入・運転コストを基にしているが、今回は、設備導入が太陽光のみに偏っている現状を是正するため、重点的に太陽光の価格を下げた。
同委員会委員長の植田和弘・京都大学教授は「太陽光は優遇期間の特別利潤の上乗せをやめることで、導入の動きが弱まることが想定される。一方、地熱やバイオマス、風力などは導入に3年以上かかり、伸びていないため、優遇を維持した」と語る。
太陽光発電所の施工を請け負う業者の幹部は、「36円から32円になって受注が激減した。27円になったら消滅するかもしれない」と嘆く。
太陽光の価格はFIT開始当初の12年7月に40円、13年度も36円と高く設定されたため、ファンドや外資も入り乱れる発電所建設ラッシュが起きた。税引き前の内部収益率(IRR)5~6%の適正利潤に、優遇期間中は1~2%を上乗せするのが政府方針だが、実際にはより大きな収益を得ている事業者も多い。
だが、14年度からは価格が32円へ低下。加えて、大規模設備を意図的に小規模に分割して、本来の安全規制や機器設置費用を逃れる分割(分譲)案件が禁止された。その結果、13年度末に36円案件の駆け込み需要が激増。九州電力など5社が接続を“保留”するという問題に発展した。
九州など日照条件がよく地価も安い地方では、すでに送電線への接続量が限界に来ており、新規参入は困難になった。そのうえ価格が27円に下がると「事業のうまみはなくなる」(関係者)。工場の屋根や住宅に設置する自家消費の需要は残っても、リターン目当ての投資需要は激減が必至。足元はなお豊富な受注残を抱えるパネルメーカーも、新規受注の先細りに備えた対策が急務となっている。
ただ、前向きに考えれば、太陽光の買い取り価格低下は普及によるコスト低減が進んだ証左でもあり、電気料金への上乗せは一段と縮小する。また、出力がより安定した、他の再エネへの投資が活発化する可能性がある。
植田委員長は「小規模の未利用木質バイオマスを別区分化(新設)した意義も大きい」と話す。価格を高めに設定したことで、間伐材などの資源の有効利用や雇用増大などを通じ、地域の活性化に寄与することも期待できる。
FITに規制緩和やインフラ整備も併せてバランスを取りながら、再エネを最大限導入できるような、官民の取り組みが今後は重要だ。