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「今後も開発、生産、販売を継続し、事業を拡大すべく取り組んでいく」
3月30日、シャープは大阪・堺工場で、太陽電池の事業説明会を開催した。そこで向井和司常務が強調したのは「事業の継続」だった。
2015年3月期に赤字転落する見通しで、銀行支援にすがる中にあって、太陽電池は課題事業の筆頭格だ。大口受注が奏功した2014年3月期を除けば、業績低迷が続き、縮小や撤退の報道が相次ぐ。
だが同日の説明会では、今後14億円を投じ設備を増強し、6月から新製品を生産すると発表。向井常務は「(太陽電池を)再建の柱にする」とまで言い切った。
堺工場の販売量は小さいが
狙うのは住宅用だ。現状約3割の売上高比率を、来期は4割へ伸ばす計画。将来像を示し、取引先との信頼をつなぐ狙いがある。しかし、事業継続には、悲観的な見方も多い。
そもそも、堺工場で自社生産する太陽電池は年間約200メガワットで、全体の販売量の約1割程度。残り9割は中国メーカーなどに製造を委託する。シャープは「中国製でもわれわれの品質基準に合わせている」と、自社製品の優位性を強調するものの、委託先の日本法人幹部は、「われわれが中国向けに出荷しているものとの品質差は小さい」と明かす。
材料に使うシリコンの調達を高値で契約したことによる高コスト体質も残る。あるシャープ社員は「社内では完全なお荷物事業。奈良・葛城の事業所にいる技術者は続々と辞めている」と漏らす。
太陽電池以外にも、海外のテレビや電子部品などの事業縮小、撤退の見方がくすぶる。資金面で支える銀行側も、こうしたリストラ策に同調。「抜本策を出してほしいというのが、われわれのスタンスだ」と念を押す。
が、シャープ側は、いずれの事業でも継続を強調。痛みを覚悟する社員には、「今の経営陣には事業を戦略的に組み替える考え方が希薄だ」と不信感が募っている。
5月に発表予定の新中期計画では、これらリストラ策に加え、再成長シナリオの提示が焦点となる。そこでカギを握るのが他社との連携だ。
鴻海のテリー・ゴウ氏はどう動く
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のテリー・ゴウ董事長は、シャープに出資意欲を示している。傘下の液晶メーカーであるイノラックスと技術的に協業することも可能だ。
しかし、社内の反応は複雑。社員の一部からは「ゴウ氏が経営権を掌握するのが、再生への最短距離だ」と歓迎する声が聞こえる一方、鴻海とは3年前にも提携交渉し、出資比率をめぐって暗礁に乗り上げた経緯がある。
当時を知るシャープ関係者は「あのとき、鴻海は出資条件の見直しに『合意した』と発表したが、そうした事実はなかった。わだかまりはまだあり、交渉するのは現実的に難しいのでは」と語る。
「不採算事業の撤退は当然。その先の成長を見通せなければ、銀行は面倒を見切れないはず」と国内証券のクレジットアナリストは指摘する。5月にどんな抜本策を示すのか。期限が迫っている。
(「週刊東洋経済」2015年4月11日号<6日発売>「核心リポート06」を転載)
「今後も開発、生産、販売を継続し、事業を拡大すべく取り組んでいく」
3月30日、シャープは大阪・堺工場で、太陽電池の事業説明会を開催した。そこで向井和司常務が強調したのは「事業の継続」だった。
2015年3月期に赤字転落する見通しで、銀行支援にすがる中にあって、太陽電池は課題事業の筆頭格だ。大口受注が奏功した2014年3月期を除けば、業績低迷が続き、縮小や撤退の報道が相次ぐ。
だが同日の説明会では、今後14億円を投じ設備を増強し、6月から新製品を生産すると発表。向井常務は「(太陽電池を)再建の柱にする」とまで言い切った。
堺工場の販売量は小さいが
狙うのは住宅用だ。現状約3割の売上高比率を、来期は4割へ伸ばす計画。将来像を示し、取引先との信頼をつなぐ狙いがある。しかし、事業継続には、悲観的な見方も多い。
そもそも、堺工場で自社生産する太陽電池は年間約200メガワットで、全体の販売量の約1割程度。残り9割は中国メーカーなどに製造を委託する。シャープは「中国製でもわれわれの品質基準に合わせている」と、自社製品の優位性を強調するものの、委託先の日本法人幹部は、「われわれが中国向けに出荷しているものとの品質差は小さい」と明かす。
材料に使うシリコンの調達を高値で契約したことによる高コスト体質も残る。あるシャープ社員は「社内では完全なお荷物事業。奈良・葛城の事業所にいる技術者は続々と辞めている」と漏らす。
太陽電池以外にも、海外のテレビや電子部品などの事業縮小、撤退の見方がくすぶる。資金面で支える銀行側も、こうしたリストラ策に同調。「抜本策を出してほしいというのが、われわれのスタンスだ」と念を押す。
が、シャープ側は、いずれの事業でも継続を強調。痛みを覚悟する社員には、「今の経営陣には事業を戦略的に組み替える考え方が希薄だ」と不信感が募っている。
5月に発表予定の新中期計画では、これらリストラ策に加え、再成長シナリオの提示が焦点となる。そこでカギを握るのが他社との連携だ。
鴻海のテリー・ゴウ氏はどう動く
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のテリー・ゴウ董事長は、シャープに出資意欲を示している。傘下の液晶メーカーであるイノラックスと技術的に協業することも可能だ。
しかし、社内の反応は複雑。社員の一部からは「ゴウ氏が経営権を掌握するのが、再生への最短距離だ」と歓迎する声が聞こえる一方、鴻海とは3年前にも提携交渉し、出資比率をめぐって暗礁に乗り上げた経緯がある。
当時を知るシャープ関係者は「あのとき、鴻海は出資条件の見直しに『合意した』と発表したが、そうした事実はなかった。わだかまりはまだあり、交渉するのは現実的に難しいのでは」と語る。
「不採算事業の撤退は当然。その先の成長を見通せなければ、銀行は面倒を見切れないはず」と国内証券のクレジットアナリストは指摘する。5月にどんな抜本策を示すのか。期限が迫っている。
(「週刊東洋経済」2015年4月11日号<6日発売>「核心リポート06」を転載)