●ソフトバンクのこれまでの成長戦略
7月30日、ソフトバンクの法人向けイベント『SoftBank World 2015』において、ソフトバンクグループ代表取締役社長 孫正義氏が初日の基調講演を行った。「情報革命で、今日、次の世界へ」と題し、同社がその鍵と考える三つの分野とそれらの展望について語った。
○企業の成長には「情報武装」と「成長戦略」
孫氏はまず、過去20年間において製造業の時価総額は約20倍に成長したが、インターネット産業は約720倍であることを示した。この成長をけん引するのは「情報革命」であり、それを作るのは「情報武装」と「成長戦略」であるというのが孫氏の考えだ。情報武装とは、スマートフォン・タブレット・クラウドという"三種の神器"を使いこなすこと。成長戦略とは、20年後30年後の未来を読み、それに対して戦略的な準備をすることだ。
成長戦略を描くことについては、孫氏がボーダフォンを買収し携帯電話事業に参入することを決める2週間前に、当時AppleのCEOであったスティーブ・ジョブズ氏を訪問したエピソードが披露された。まだiPhoneがApple社内でもほんの数人だけが知る極秘プロジェクトだった頃、孫氏は「携帯電話会社買収のために新しい武器が必要。あなたしかいない。ぜひ組んでくれないか」と、当時のiPodに電話機能をつけることを構想した手書きの絵を見せ、こういうものを作って欲しいと話したそうだ。
孫 「勝てる手段も戦略もなく参入するのは無謀な戦い。これからの時代、携帯端末が最も重要なインターネットの中心的危機になるということを先読みし、成長戦略を描きました。」
その後、過去に他の誰もが手にしたことのなかった情報の武器を日本国内で独占販売し、同社の大きな発展に寄与するものとなった。
●キーワードはIoT、AI、スマートロボット
○ソフトバンクグループが注力する3つの成長分野
今後成長が期待される様々な分野の中で、孫氏はその中心になるものとして「IoT」「AI」、そして「スマートロボット」の三つを挙げた。
IoT (Internet of Things=モノのインターネット)については、現在1人平均2つのデバイスをインターネットに接続しているが、今後30年でそれが1人平均1000個にまで拡大すると予測。世界の人口を越える数のデバイスがあらゆる情報をクラウドに持ち込むことになる。しかし、ただデータが集まるだけでは意味がない。孫氏は、これらを分析し、データマイニングして新しいビジネスモデルを構築する「IoTエコシステム」がキーワードになると述べた。
孫 「IoTが本当に広まるのかと疑問に思う人もいるでしょう。しかし、iPhone発売当時『日本独自の携帯文化に適合しないから日本では売れない』と言われた頃からまだ10年経っていません。スマホが人々のライフスタイルを変えたように、これからはIoTがあらゆる分野で爆発的に人々のライフスタイルを変えていくでしょう。」
AIについては、今年2月よりソフトバンクテレコムと日本IBM共同によるIBM Watsonの日本における展開を開始。また、この10月からはWatsonを活用したアプリケーションやサービスの開発・提供を行うためのエコシステムパートナーの正式募集を開始することが発表された。
孫氏の計算によると、人間の脳細胞にあるニューロンの数を、1チップ上のトランジスタ数が上回るのは、2018年になるという。これが逆転することはなく、差はさらに開いていく。これを相手に知能・知識で戦って人間が勝てるのか。人間が当たり前のように行っている作業の多くは、良い悪いは別にして、人工知能に置き換えられていく時代がやってくる。しかし悲しむ必要はないと孫氏は語る。
孫 「単純労働はコンピュータにどんどん置き換え、AIの活用が競争力強化になる。我々は IBM Watsonとの提携により、人々の質問疑問、生活、生産性のアシストをし得る、様々なサービスを提供していきたい。」
スマートロボットはこのAIとの組み合わせにより発展する分野だ。機会的な作業のためのロボットではなく、IT企業として、支援・知能・知識を強化する角度からスマートロボットに取り組みたいという孫氏。その一歩目として、この6月にPepperが「感情を持つ」ロボットへと進化したことが発表された。孫氏はこれをPepper発表の時から夢見ていたという。
孫 「人間で想像してみてください。頭は切れるけれど心がない人よりも、励まし、慰めてくれる人と関わりたいと思いますよね。人工知能が人間を超える時代を避けて通れないなら、単に知能が優れるだけでなく、人を慮ってくれるロボットと一緒にいたいと、私は思います。」
ステージにはPepperも登場し、Watsonと検索機能の組み合わせにより自ら学習するディープラーニング機能や、法人向けモデル「Pepper for Biz」を10月より提供することも発表された。
●孫正義が描く情報革命の未来とは?
○情報革命は人々を幸せにするもの
ここまでの話を振り返り、孫氏は「情報武装した会社が成長する。そういう会社は戦略的に手を打っていくことが大事」と述べる一方で、「情報革命は単に企業の成長のためだけではない」と強調した。コンピュータの知能が人類を超える日があと数年で到来する。それを我々は、どのように迎えればいいのだろうか。
孫 「私は、情報革命は人々を幸せにするものだと確信しています。だからこそ、"彼ら"に人を思う心を与えてあげたい。」
そう考えたきっかけは孫氏が6歳の時。テレビで見た『鉄腕アトム』が、100万馬力のヒーローでありながら、たったひとつ欠けていたものがハートだった。人の涙の意味がわからない。喜びや幸せがわからない。幼心にそれはかわいそうだと、自分が大人になったらアトムにハートをプレゼントしたいと思ったそうだ。
情報革命は単に生産性のためだけではない、と孫氏は繰り返し強調する。「情報革命で人々を幸せに」という同社の理念が変わることなく継続していることを述べ、講演を締めくくった。
7月30日、ソフトバンクの法人向けイベント『SoftBank World 2015』において、ソフトバンクグループ代表取締役社長 孫正義氏が初日の基調講演を行った。「情報革命で、今日、次の世界へ」と題し、同社がその鍵と考える三つの分野とそれらの展望について語った。
○企業の成長には「情報武装」と「成長戦略」
孫氏はまず、過去20年間において製造業の時価総額は約20倍に成長したが、インターネット産業は約720倍であることを示した。この成長をけん引するのは「情報革命」であり、それを作るのは「情報武装」と「成長戦略」であるというのが孫氏の考えだ。情報武装とは、スマートフォン・タブレット・クラウドという"三種の神器"を使いこなすこと。成長戦略とは、20年後30年後の未来を読み、それに対して戦略的な準備をすることだ。
成長戦略を描くことについては、孫氏がボーダフォンを買収し携帯電話事業に参入することを決める2週間前に、当時AppleのCEOであったスティーブ・ジョブズ氏を訪問したエピソードが披露された。まだiPhoneがApple社内でもほんの数人だけが知る極秘プロジェクトだった頃、孫氏は「携帯電話会社買収のために新しい武器が必要。あなたしかいない。ぜひ組んでくれないか」と、当時のiPodに電話機能をつけることを構想した手書きの絵を見せ、こういうものを作って欲しいと話したそうだ。
孫 「勝てる手段も戦略もなく参入するのは無謀な戦い。これからの時代、携帯端末が最も重要なインターネットの中心的危機になるということを先読みし、成長戦略を描きました。」
その後、過去に他の誰もが手にしたことのなかった情報の武器を日本国内で独占販売し、同社の大きな発展に寄与するものとなった。
●キーワードはIoT、AI、スマートロボット
○ソフトバンクグループが注力する3つの成長分野
今後成長が期待される様々な分野の中で、孫氏はその中心になるものとして「IoT」「AI」、そして「スマートロボット」の三つを挙げた。
IoT (Internet of Things=モノのインターネット)については、現在1人平均2つのデバイスをインターネットに接続しているが、今後30年でそれが1人平均1000個にまで拡大すると予測。世界の人口を越える数のデバイスがあらゆる情報をクラウドに持ち込むことになる。しかし、ただデータが集まるだけでは意味がない。孫氏は、これらを分析し、データマイニングして新しいビジネスモデルを構築する「IoTエコシステム」がキーワードになると述べた。
孫 「IoTが本当に広まるのかと疑問に思う人もいるでしょう。しかし、iPhone発売当時『日本独自の携帯文化に適合しないから日本では売れない』と言われた頃からまだ10年経っていません。スマホが人々のライフスタイルを変えたように、これからはIoTがあらゆる分野で爆発的に人々のライフスタイルを変えていくでしょう。」
AIについては、今年2月よりソフトバンクテレコムと日本IBM共同によるIBM Watsonの日本における展開を開始。また、この10月からはWatsonを活用したアプリケーションやサービスの開発・提供を行うためのエコシステムパートナーの正式募集を開始することが発表された。
孫氏の計算によると、人間の脳細胞にあるニューロンの数を、1チップ上のトランジスタ数が上回るのは、2018年になるという。これが逆転することはなく、差はさらに開いていく。これを相手に知能・知識で戦って人間が勝てるのか。人間が当たり前のように行っている作業の多くは、良い悪いは別にして、人工知能に置き換えられていく時代がやってくる。しかし悲しむ必要はないと孫氏は語る。
孫 「単純労働はコンピュータにどんどん置き換え、AIの活用が競争力強化になる。我々は IBM Watsonとの提携により、人々の質問疑問、生活、生産性のアシストをし得る、様々なサービスを提供していきたい。」
スマートロボットはこのAIとの組み合わせにより発展する分野だ。機会的な作業のためのロボットではなく、IT企業として、支援・知能・知識を強化する角度からスマートロボットに取り組みたいという孫氏。その一歩目として、この6月にPepperが「感情を持つ」ロボットへと進化したことが発表された。孫氏はこれをPepper発表の時から夢見ていたという。
孫 「人間で想像してみてください。頭は切れるけれど心がない人よりも、励まし、慰めてくれる人と関わりたいと思いますよね。人工知能が人間を超える時代を避けて通れないなら、単に知能が優れるだけでなく、人を慮ってくれるロボットと一緒にいたいと、私は思います。」
ステージにはPepperも登場し、Watsonと検索機能の組み合わせにより自ら学習するディープラーニング機能や、法人向けモデル「Pepper for Biz」を10月より提供することも発表された。
●孫正義が描く情報革命の未来とは?
○情報革命は人々を幸せにするもの
ここまでの話を振り返り、孫氏は「情報武装した会社が成長する。そういう会社は戦略的に手を打っていくことが大事」と述べる一方で、「情報革命は単に企業の成長のためだけではない」と強調した。コンピュータの知能が人類を超える日があと数年で到来する。それを我々は、どのように迎えればいいのだろうか。
孫 「私は、情報革命は人々を幸せにするものだと確信しています。だからこそ、"彼ら"に人を思う心を与えてあげたい。」
そう考えたきっかけは孫氏が6歳の時。テレビで見た『鉄腕アトム』が、100万馬力のヒーローでありながら、たったひとつ欠けていたものがハートだった。人の涙の意味がわからない。喜びや幸せがわからない。幼心にそれはかわいそうだと、自分が大人になったらアトムにハートをプレゼントしたいと思ったそうだ。
情報革命は単に生産性のためだけではない、と孫氏は繰り返し強調する。「情報革命で人々を幸せに」という同社の理念が変わることなく継続していることを述べ、講演を締めくくった。