『改めて日本語を考える』その20。『三羽烏』という言葉を久しぶりに聞いた。1月14日に発表された野球殿堂入りの中に阪神や西武、ソフトバンクで活躍した田淵幸一氏がいた。彼は六大学でホームランの新記録22本を打ち立て鳴り物入りで阪神タイガースに入団、初年度からレギュラーに定着、ホームラン22本を打ち新人王となった。しかし、入団2年目に死球を受けてから体質が変わり、苦労した。大学時代は母校法政大学の黄金期で山本浩二、富田勝と共に『法政三羽烏』と呼ばれたのである。
ふと思ったのが、何で『三羽烏』なのか?ということである。日本神話にはよく『からす』が登場する。『八咫烏(やたがらす)は神武東征の際に高皇産霊により神武天皇のもとに遣わされ、熊野から大和までの道案内をした3本足のカラスである。熊野三山では熊野大神(素戔嗚尊)に使える存在として信仰を集めている。
肝心の『三羽烏』であるが、意味は『3人の優れた者』を表していて、由来はいくつかある。その一つが大己貴命(おおなむち)と少彦名命(すくなひこな)が有馬の地に降臨した際に三羽の傷ついた烏が水たまりで水浴びをしていた。数日でその傷が癒えたことを不思議に思った2神が調べたところ、水溜りは効能の高い温泉(有馬温泉)であった、という故事に因む。他にも熊野神社に伝わる言い伝えとして熊野権現への誓いを破るとカラスが3羽死ぬというものもある。
まあ、日本人は『三大〇〇』が好きな性分だからよく使われるのかもしれないが。同じように数を使って『四天王(仏教観に於いて東西南北を守護している持国天、増長天、広目天、多聞天のこと)『五大老・五奉行(豊臣秀吉が死ぬ間際に5人の有力な大名に後見を頼んだもの、五大老は徳川家康、宇喜多秀家、毛利輝元、前田利家、上杉景勝)』『六奉行(武者奉行、旗奉行、長持奉行の総称、それぞれ2人ずついた)』などもあるが、やはり三羽烏が最も落ち着くようだ。
最後に法政の三羽烏には星野仙一は入っていない(星野仙一は明治大学)にも関わらず、山本浩二と星野仙一と並べた紛らわしい書きっぷりがやや気になった。