公開当初は「70億もねらえる!」レベル。ハリウッドの作品に客が入らないこのご時世に、それでも十分に立派な数字。ところがところが、それこそ雪だるまつくろう!的に観客は増え続け、先週末でついに170億円超え。こうなると次の目標は200億円で「もののけ姫」を抜けるかだ。抜くだろうな。
映画というのは公開初週がいちばん動員が多くて、作品の出来によって動員が落ちていくカーブの角度が違う。だから最初の週末の数字で興行成績の予測がつくわけ。でも「アナと雪の女王」の動員は、ほぼフラットに推移している。これは驚異的。
いくつか要因はある。誰にも頼まれていないのに考察すると
・作品がなにしろ面白い。ミュージカルだと曲が入ることでテンポが落ちる、というか意図的に落とすのが普通なのに、この作品は曲がはじまるとスピードが逆に増す。
・楽曲のレベルの高さは特筆もので、ご存じLet It Goはもちろん、同時上映のミッキーマウスの短篇が終わったとたんに聞こえるコーラスもすばらしい。語尾の母音にまで気を使っている日本語訳もていねいだ(その点、「アメイジング・スパイダーマン2」の翻訳は……)。松たか子と神田沙也加の吹替もおみごとだし。
・ディズニー、アンデルセン、アカデミー賞受賞という信頼のブランドが世の母親たちに効いた。子どもの目に悪いのではと3Dをあまり前面に出さなかったことも奏功した。
……でも、いくら面白くて出来が良くてもヒットしない作品も多いのが現状。実は内在する破天荒さが大ヒットにつながったのではないかとわたしはにらんでいる。
というのも、主人公の姉妹たちはちょっと無茶なのである。知り合った当日に結婚を決めてしまう妹(だから彼女は痛い思いをする)がヤンキー入ってるのはもちろん、心象風景がそのまま氷として実体化してしまう姉は、その力のコントロールを自らやめてしまう。
♪ありのぉ~ままでぇ!♪
と訳すからポジティブに聞こえるけれど、Let It Goを直訳すれば
「んもうやっちゃいましょうよ!」
じゃん。この乱暴さが、子どもだけでなく、大人にもうけた理由ではないかと。わたしは少なくとも「しょーがねーなこの姉妹は」と思いつつも、だからこそキュートだと満足。中年男がひとりでこれを見るのはかなり勇気がいりましたが、その甲斐はありました。