その87「孤狼の血」はこちら。
いつも通っていた本屋が閉店して半年。やはりさみしい。いやそれ以上に、久しぶりに山形市の大きな書店(八文字屋ですけど)に入ったときに、逆に何を買っていいのかわからなくなってしまった。むかしは夢のような時間を過ごせたものだが。書店通いも、ひとつのスキルなんでしょう。勘がはたらかなくなってしまったのだ。わたし向きの本を探す勘が。
ということでおなじみの作家の新作につい手が伸びる。えーと米澤穂信の古典部シリーズの新作(「いまさら翼といわれても」)が出たんだよな……ありゃ、もう売り切れちゃったのか!ジェフリー・ディーヴァーのキャサリン・ダンスものの新作(「煽動者」)はある!どわ、相変わらず高いよ文春(2592円)。
ということで山形県出身&美男(ここまでわたしと共通しているとは)作家の長岡弘樹の新作「教場2」に落ち着きました。警察学校を舞台にするという異色シリーズ二作目。
今回も教官の風間は神のごとく、同時に悪魔のように生徒たち(すでに給料をもらっていて、それぞれ「巡査」と呼ばれている)の上に君臨する。隻眼であるハンデを、心眼で見通す。
しかし前作にくらべて、ちょっと優しくもなっている。しかもなんと彼にあこがれる女生徒まで出現して……あああちょっとネタバレになってしまう。特にラストの短編「奉職」では、警察を誰よりも恨んでいるはずの風間が、なぜ教官でありつづけるのかの回答が明かされ、感動させられる。
前作につづいて「警察」であると同時に「学校」の物語。
あいかわらず、日本の警察がどのようなポリシーで事件捜査にあたるかが、指導という形で開陳されていてうれしい。これってミステリの種明かしを正々堂々とやっていいということだもんね。
例によって、この作品を映画化したらのキャスティングを夢想してみよう。風間の役は…………常識的には佐藤浩市か役所広司なんだろうけど、またしてもわたしはここに木村拓哉はどうなんだと主張してしまう。読んだ人なら納得してもらえるはずだ。
その89「慈雨」につづく。