事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日露首脳会談 あるいは読売の混乱。

2016-12-19 | 国際・政治

12月17日付の読売新聞は圧巻だった。わたし、ラーメン屋で読んでいたんだけど、日露首脳会談に関して紙面の混乱が並ではなかったから。

この新聞社は現政権を支持する立場だから、社説では

「『領土』解決へ重要な発射台だ~共同経済活動で信頼醸成図ろう」

と、この会談を評価している。一面では政治部長が

「首相がこの問題(日露平和条約締結)に人一倍の情熱を傾け、真摯に解決の道を探ってきたことは疑いない。粘り強い交渉を続けるしかない」

ここまで持ち上げるか。なんか、必死である。

しかしその下の、コラム編集手帳は違う。

「レストランでの会話がある。客『ボーイ君、どうして皿がこんなに濡れているのかね?』ボーイ『お客さま、それはスープでございます』。西洋の小話にある。◆想像するに、大きな皿なのだろう。皿が立派すぎると、盛られた料理が貧弱に見えるときがある。安倍首相とプーチン大統領による首脳会談は皿が立派すぎたかもしれない」

と揶揄している。国民の大半も、そう感じたのではないだろうか。北方領土返還に自信たっぷりな発言をかましていた首相の表情が、次第に暗くなっていたことだけでもそれは理解できる。途中から、なにも期待するなという伏線バリバリだったし。

読売の混乱、あるいは意図的な両論併記はつづく。二面ではEUが対露経済制裁を半年間延長することをトップにすえ、3面ではモスクワ支局長が

「『強国ロシア』を掲げ国民の愛国心の高まりを背景に、高い支持を維持するプーチン氏にとって、2018年の大統領選が近づくにつれ、領土問題で柔軟姿勢を見せることはできない。プーチン氏は日露の主要テーマとなった『共同経済活動』を巡る今後の交渉でも、主導権を握り強気の立場を守るだろう」

……現場で取材すれば、あるいはトランプのアメリカとプーチンのロシアの接近を考えれば、今回の交渉に実りなどあったはずがない、あるはずがないことは自明だ。

それでもやみくもに首相を持ち上げなければならない社是は、しかし紙面をむやみに面白くもしている。社の方針よりもジャーナリストとしての矜持を優先した記者と、上をうかがっている人物の相克がいい。モスクワ支局長や編集手帳氏が、お小言をくらってなければいいのだけれど。

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