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半沢は東京中央銀行(三菱東京UFJ銀行がモデルだとか)大阪西支店の融資課長。彼がこの銀行の前身、産業中央銀行(イケイケの三和銀行がモデル)に入行したのは、かつて町工場を経営する父親(笑福亭鶴瓶)を自死に追いやった、まさしくその産業中央銀行に復讐(あるいは変革)するためであり、そのときの非情な行員が現在は常務となっている大和田(香川照之)。
半沢が以降にとる行動はファナティックと言ってもいいくらいなので、視聴者全員の賛同は得られそうにない、という計算があったからか、父親の首つりシーンはほぼ毎週のようにくりかえされ、彼の行動を正当化する。
同様に、半沢の行動のきっかけとなる部分は、くどいくらいにフラッシュバックされる。視聴者にとってこれほど楽なことはない。
真田丸は逆だ。回想シーンはほとんどなく、物語を前へ前へと進めていく。真田幸村が歴史の表舞台に出てくるまでは、だから草刈正雄(真田昌幸)、小日向文世(豊臣秀吉)、山本耕史(石田三成)といった推進役が必要だった。いったいこの大河の主役はだれなんだ、と揶揄されることも多かったのはそのためだ。
優劣を語っているのではなくて、作法の問題なのだと思う。ひねくれ者の三谷幸喜のことだから、大ヒット作である「半沢直樹」を意識していなかったはずはないし、だからこそ(「新選組!」のときもそうだったが)フラッシュバックを自らに禁じたのだろう。同じようにはしたくなかったわけだ。
つづいて演技。これはもう、どっちが時代劇なんですかと言いたくなるくらい、「半沢直樹」は大仰な演技に終始している。特に、小悪党がすばらしいのだ。
上司の腰ぎんちゃくを憎々しげに宮川(「家族ゲーム」の長男)一朗太、手塚(「天空の蜂」の刑事)とおる、緋田(「ごめんね青春!」の教頭)康人が演じていてはまり役。
そして大悪党もまた……以下次号。