わが首相の近ごろの動きは、日本人のひとりとして少なからず恥ずかしいかぎりだ。
・米大統領選ではトランプの勝利を読み切れず(外務省の情報収集能力がうかがい知れる)
・結果が出た途端、まわりの首脳たちはトランプの動向をうかがっている段階なのに、まだ大統領にもなっていない人物と「急げ!」とばかりにどこよりも早く会談をセッティング“してもらい”
・どんな会談内容だったかは明かせないとしているのに、アメリカのTPP離脱を翻意させることに自信があるようなふりをし、
・トランプ氏は信頼に足る人物だったと持ち上げ
・APECの会合では日本が主導して自由貿易を推進すると主張
・外遊最終日に「アメリカ抜きのTPPでは意味がない」と会見。
ところが、わずかその1時間後に肝心の次期大統領は「就任初日にTPPから脱退する」とのビデオメッセージを……
本来なら、ここは日本の首相として怒ってみせなければならないところだ。プライドのかけらでもあれば。
でもそうはならない。マスコミも、国辱ものだという論調ではほとんど報じない。
米軍の駐留における「思いやり予算」(なんてすばらしいネーミングだろう)にしても、実態は明らかな「朝貢」(ちょうこう……王に対して周辺国=夷狄が貢物を送り、見返りに王は……なこと)なのに。
なぜアメリカの靴先をなめるような状況が、独立国として問題にならないのか。ナショナリストたちはなぜアメリカを批判しないのか。白井聡の「永続敗戦論」は、そのあたりを読み解いてくれる格好の書だった。以下次号。