2016年12月差額号はこちら。
1月の給料袋には、例によって源泉徴収票を同封しています。これは、去年の1月1日から12月31日まで、雇用主である吉村美栄子さんからわたしたちがいくらもらったか、税金をいくら払ったかなどを示す書類。確定申告や、金融機関からお金を借りるときなどに必要になります。
少なくとも一年間はなくさないでくれ、と毎年言っていますが毎年必ず誰かはなくす。もちろん、事務室にコピーは保存していますけれども(異動するときには異動先に送付します)。
さて、今年はこの源泉徴収票、ちょっと変わっているのにお気づきでしょうか。別にそんなに深刻に考えなくてもいいです。物理的に大きくなっているでしょう?これまでのA6からA5判に変更されました。これは、ご想像のとおりマイナンバー制度の影響を受けたため。
「でもどこにもマイナンバーは載ってないじゃないか」
そのとおりです。
実は、当初の予定では記載されるはずだったんです。でも、そうなるとさまざまな人にあなたの個人番号があからさまになってしまう、ということで載せないことになりました。
徴収票のいちばん右上に「(受給者番号)」という欄があります。そして一段あけて「(役職名)」の欄がある。この、一段あいて斜線がひいてあるところにマイナンバーが記載される予定だったのです。
「なんだよ、あのマイナンバー騒ぎってじゃあ何のためだったんだよ」
もっともです。しかしこの源泉徴収票のいちばん下を見てください。
「(交付用)」
となっているのにお気づきでしょうか。実は源泉徴収票はもう一部作成され、税務署にも提出されるのです。そちらには、先ほど説明した場所にマイナンバーが記載され、下の方の「支払者」のところに法人の番号も記載されるという仕組み(各法人にもすべてナンバーが割り振られ、“山形県”もそれは例外ではありません)。
さてそれでは項目ごとにチェックしてみましょう。
【支払金額】
総収入。自営業者なら“売り上げ”にあたる額。
【給与所得控除後の金額】
売り上げにそのまま課税されたのではたまらない。給与所得者にだって必要経費はあるはずだ。ということでサラリーマンの必要経費はこれくらいだろうという額を税務署が定め、その額を差し引いた額がこの欄に記載されています。つまり、自営業者で言うところの“利益”にあたります。
【所得控除の額の合計額】
利益が算定されたところで、今度は個々人の“都合”を考えます。扶養控除や社会保険料控除、そして年末調整のときに申告してもらった生命保険料などの控除額(掛金の額ではなく)の合計の額が載っています。都合の部分は利益ではないと見立てて(=控除して)もらうわけ。
【源泉徴収税額】
で、“利益”から“都合”を引いた額に対して税金がかかり、その結果がこれ。あなたが一年間に支払った所得税はこの額です。
……つまりこの紙っきれには“売り上げ”“利益”“都合”“税額”など、個人情報がみっちりつまっているのです。だからこそつくづく思います。いっそこの機会に、A4判にしてくれた方が事務屋としては助かったのになあと。それだとみんな、なくさない気が……やっぱりなくすんだろうな。
画像は「この世界の片隅に」(2016 東京テアトル)
監督:片渕須直 主演:のん(能年玲奈)
戦時中に、世界の片隅でその若妻はどう生きたか。もう日本のアニメに描けない世界はないと思い知る。監督は、声優は絶対にのんでなければならないと主張したそうで、さすが慧眼の士というのはいるものだ。いろんな事情で芸能界を干されていた彼女の逆襲が始まる。キネマ旬報誌本年度ベストワン。アニメの1位は「となりのトトロ」以来。傑作。
2017年2月号「魔が差した。」につづく。