事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

極私的大河ドラマ史PART3 赤穂浪士

2017-01-09 | 大河ドラマ

PART2「花の生涯ふたたび」はこちら

そして64年の1月から第二弾「赤穂浪士」開始。「花の生涯」で自信を深めたNHKが勝負を賭けた作品。原作は大佛次郎。「鞍馬天狗」の作者といえば通りがいいだろうか。

忠臣蔵の話がなぜ何度も何度も上演、映像化されるかはちょっと不思議。小林信彦が「裏表忠臣蔵」で喝破したように、47人もの大人数で老人を殺しにかかるという、どう考えても虐殺事件。世論は高貴な吉良上野介を憎み、幕府は浪士がうろついていることを知りながら吉良を本所の屋敷に押し込め、まるで討ち入りを奨励しているかのよう。

「最終的には、世論は凡庸さに味方するだろう。凡庸な人間たちのふるまいや発言は、凡庸な大衆にとっては理解しやすいからだ…」

吉良のつぶやきは哀切ですらあります。

ま、それはともかく。

「仮名手本忠臣蔵」が受けるのはわたしだってわからなくはない。高慢な権力者のふるまいに若い藩主がぶち切れ、あろうことか江戸城内で刃傷沙汰。「殿中でござる」は、現代でいえば流行語大賞みたいなものだったろう。隠忍自重していた浪士たち、昼行灯なリーダーが、耐えに耐えて爆発するストーリーは後年の任侠映画にも影響を与えているのかも。とにかく日本人はこのお話が好き。

キャストは、大石内蔵助に長谷川一夫。討ち入りの際に「おのおの方……」と渋く語るのは有名。しかしこのとき彼は55才。それであの貫録かよ。

妻りくに山田五十鈴、吉良上野介に滝沢修、浅野内匠頭に尾上梅幸、小野寺十内に志村喬、高田郡兵衛に田村高広、柳沢出羽守に坂東三津五郎(フグで死んだあの人)、架空のキャラに林与一、宇野重吉……「花の生涯」以上のものすごいオールスター。

鉄板の題材に豪華キャストで大河ドラマはここに確立した。討ち入りの回の視聴率53.0%はいまもなお大河史上最高。

「太閤記」につづく

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