2016年11月号「TPP」はこちら。
あけましておめでとうございます。今年も「事務職員へのこの1冊」をどうぞよろしく。画像はうちが門松を担当している近所のお寺さん。ぎっくり腰なんでセッティングに苦労しました。
さて、今年こそ心穏やかにすごそうと思っているのに……
「戦争で家族と古里と国を守るために出撃した人々の命の積み重ねの上に、今の平和な日本があることを忘れてはならないし、忘恩の徒にはなりたくない」
稲田防衛大臣の、靖国神社参拝後の発言。極右の人間を防衛大臣にすえる根性は、まああの首相のことだから仕方がない。その首相が、真珠湾でオバマ大統領と詩的なコメントを交わした翌日に参拝したタイミングに考えこまされるのだ。
普通なら、謝罪外交だと思われることを嫌った首相を援護するために、別働隊のように行ったと想像できる。さっそく中国や韓国が反発しているのは覚悟の上。白井聡の「永続敗戦論」に喝破された
“アメリカには確かに負けたけど中国や韓国に負けたわけじゃない”
という論理そのままで、あまりにあざとくて気が遠くなる。
もうひとつの考え方もある。稲田防衛相が、首相はきっと喜んでくれるはずだという思いと、この働きによって次期首相の期待が自分に集まるという動機だったのではないかと。まさかそんなことはないと思う。いくらなんでもそんな勇気は。
しかし冷静に考えれば、真珠湾訪問によってアメリカの機嫌はとりむすべたし、内閣支持率も高まって日露首脳会談の失態も隠しおおせたその翌日に、関係閣僚筆頭である防衛大臣が靖国神社に参拝するという行動の方がどう考えても無茶だ。
アメリカのメンツは丸つぶれになったことを思うと、日本の現内閣は、さっそくオバマなど斬り捨ててトランプ=プーチン同盟に参加する腹を決めたのだろうか。
あ、そうか。トランプ、プーチン、安倍と並べれば、質の悪いトライアングルができあがる。支持率の高低しか考えていない現政権は、ひょっとしたら今のうちに解散総選挙にうってでる目が復活したと判断しているかもしれない。
だとすれば、なおさらこの防衛相の行動は、むちゃくちゃであると同時に選挙対策だったのかと勘ぐりたくもなるのだ。いずれにしてもあまりにあざとく、品のない行動。小林信彦が
「戦後最低の首相」
と吐き捨てた人物が組織する内閣の一員であることを、しみじみと思い知らせてくれる。
2017年1月号「CHANGE」につづく。