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「太閤記」は、原作に吉川英治の「新書太閤記」を使うことだけが決定していて、キャスティングはいい意味でいいかげんだったわけだ。しかしこのドラマが歴史に残っているのには他の要素もある。
演出にドキュメンタリー畑の吉田直哉を起用したのだ。彼は第一回のオープニングに新幹線が突っ走る映像を挿入。時代劇が始まると思っていた視聴者の度肝をぬいた。驚いたのは視聴者だけでなく、NHKの上役たちもびっくり。
吉田は特に驚かすつもりはなく、撮影した尺が足りなかったなどの事情もからんでいたようだし、川島雄三の「幕末太陽傳」も、現代の品川から江戸の遊郭に瞬間移動する手を使っていたわけなので、演出として不作法だったわけではない。
しかし、様式美のかたまりだった赤穂浪士とはまったく違う路線で行くんだ、というマニフェストとして十分に機能したのだろう。
想像でしか言えないんだけど、まだこのころ、さすがにリアルタイムで大河を見ていないのでしかたないです(笑)。まだものごころついてません。
フレッシュトリオをささえるキャストはまたしても豪華。
正室ねねに藤村志保。側室茶々、つまりのちの淀君に三田佳子。豊臣秀次が田村正和で黒田官兵衛に田村高廣の兄弟。お市の方が岸恵子で森蘭丸が片岡孝夫(仁左衛門)、明智光秀が佐藤慶で武田信玄がなんと早川雪州!
くわえて、曽呂利新左衛門(とんちの人ね)に有島一郎、今川義元に三国一朗、蜂須賀小六に山茶花究といった味のある配役を見ると……あああ見たかったなあこの大河、とつくづく。
平均視聴率は31.2%。最高視聴率は39.7%。戦国時代を描いた初の大河ドラマでもあった。
【源義経につづく】