「メッセージ」にぶっ飛び、秋の「ブレードランナー2049」が今から待ち遠しいドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品。
誘拐捜査のオーソリティであるFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)は容疑者宅を急襲する。そこには数知れぬ被害者の遺体が隠され、同時にある罠も仕掛けられていた……このオープニングの緊張感で、ケイトがこれからプロとして成長していく姿が描かれるんだろう、と誰だって予想する。ところがその予想は完全に覆される。
トランプが大統領選のさなかに壁をつくるとぶち上げたメキシコとの国境線。もちろんそんなものをつくる予算などどこにも存在しない。メキシコに負担させる?馬鹿言っちゃいけない。しかしそんな大嘘を信じたくなるほど絶望的な争いがこのボーダーライン上にはあるという現実。
ケイトは国防総省の顧問と称するマット(ジョシュ・ブローリン)にスカウトされ、麻薬カルテルの捜査に加わる。彼は常に軽口を絶やさず、会議にもサンダル履きでやってくる。どうも、CIAのくせ者らしい。彼らは本気で麻薬密売の根元を絶とうと考えているようだが、そこに得体の知れないコロンビア人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が登場し、次第に捜査はねじれていく。
ストーリーはものすごく入り組んでいて、しかしそれを感じさせないくらいに画面が弾んでいます。
メキシコの空港周辺の道路がやけに凸凹で(スピードを出させないためらしい)、そこをコンボイを組んで突っ走る車両の異様さを際立たせるなど、ヴィルヌーヴのセンスが爆発。「メッセージ」でも、巨大な宇宙船よりも、ヘリやジェット機の異様さを強調したセンスと共通している。この手腕がブレードランナーに活かされるとしたら……見逃せない!