事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「星籠(せいろ)の海」(2016 東映)

2017-09-27 | 邦画

前にも特集したけれど、島田荘司の御手洗潔シリーズのわたしは大ファンです。

・奇抜なトリック

・魅力的な名探偵

・説得力のない動機

という新本格三点セット+オープニングにおよそありえない情景を設定するパターンは、島田が「ミステリーとはこうでなければならない」と自分で決めてしまったので、第一作「占星術殺人事件」から50作目「屋上の道化たち」にいたるまで、この方程式を(短篇をのぞけば)ほぼ踏襲している。

で、90年代初めは、御手洗シリーズの大長編が講談社から毎年出ていたのである。これは幸福でした。「暗闇坂の人喰いの木」「水晶のピラミッド」「眩暈(めまい)」「アトポス」……無茶だったなあ。

御手洗ものが売れるまでは、一見して地味な吉敷竹史刑事シリーズが80年代末に光文社から出ていて、「北の夕鶴2/3の殺人」「奇想、天を動かす」などの傑作も連発。このころの島田には誰もかなわなかった。この勢いで、綾辻行人や有栖川有栖などの新本格系の新人が(講談社や東京創元社に炯眼の編集者がいたこともあって)大量にデビュー。あれからもう三十年である。

あ、「星籠の海」の話だった。正直なところ、どうして御手洗潔の映画化第一作がこの原作なのかはさっぱり。あまり後味のいい話ではないし、映像として盛り上がる部分も少なかろうと思ったので。瀬戸内海が内包する科学的事実にはびっくりでしたが。

御手洗潔役に玉木宏を起用したのはわからないではない。ルックスが島田荘司に似ていますもんね。

ただねえ、共演の広瀬アリスがどうにも。彼女ひとりのおかげでどんどん映画がはずまなくなっていくのがわかる。そのせいかこの作品も当たらず、御手洗シリーズの映画化第二弾の話も聞こえてこない。こうなったら誰か「水晶のピラミッド」を、大金をかけてあの奇抜な“もうひとつの解決”を実写化してくれないですか(絶対無理)。

コメント
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