「スリーピング・ドール」「ロードサイド・クロス」「シャドウ・ストーカー」につづく、ジェフリー・ディーヴァーのキャサリン・ダンス(人間嘘発見器)シリーズ最新刊。
もうね、何度も言っているけれど、「静寂の叫び」以降の、リンカーン・ライムものやノンシリーズを含めて全部読んでいる身からすると、今回もやっぱりディーヴァーはディーヴァー。彼のパターンはこうだ。
・理不尽な犯罪が複数発生する
・その事件を追う主人公、あるいはまわりの人間に犯人は目をつける
・これはもう、絶対にやられたに違いないと読者は覚悟
・次の章で、これこれこういう理由で大丈夫でしたと安堵させる
・その犯人は実はすでに登場している人物、あるいはその関係者ではないかと思わせる
・これこれこういう理由で犯人ではないことが説明される
・しかし実は……的な展開にふたたびもっていく
・だけれどもしかし……
はっきりとこんな方程式が完成している。やり過ぎだろうとは思う(笑)。だから長年つきあっている読者もそれはわかっているわけで……その裏の裏をかくんだよなあ。
今回の犯人は激しく魅力的。群衆にわずかな刺激を与えることでパニックを起こし、自滅させる。オープニングの事件が象徴的。ライブハウスの外で煙を発生させ、ひとつの非常口の前にトラックを置いてドアを開かなくし、厨房で火事だと偽の情報を流す……彼がやったことはこれだけ。非常口は他にあるにもかかわらず、レミングのように人間をあやつって特定の非常口に誘導する手口は考えてある。
あ、もうひとつのディーヴァー方程式はこうだ。
・読者がこうあってほしいと願うラストを100%実現する
……どんだけ読者サービスがうまいんだ。かくしてまたもディーヴァーの新作をひたすら待つ生活再開。でまた彼は勤勉に書いてくれているんだよね。そのあたりも期待を裏切らない。こちらはやり過ぎってことがなくてけっこう。