第36回「井伊家最後の日」はこちら。
前回の視聴率は予想よりも回復して12.1%。テレ東は池をさらわなかったけれども、フジが27時間テレビで歴史を特集していたなかでの数字。
さて今回はタイトルが横溝系。あ、すみません。近ごろ低視聴率で有名だった「神の舌を持つ男」をDVDで見続けているので(面白いです)、2サス(2時間サスペンス)用語がつい。
怒濤の勢いで武田が迫ってくるという“大きなお話”に、還俗した直虎、じゃなくておとわの生活が影響を受ける、という“小さなお話”がからむ。尼小僧という一種のコスプレがあったので直虎は戦国の世のジャンヌ・ダルクでいられた。しかし龍雲丸と子どもをつくることをリクエストされる存在はあまりに普通。大河ドラマのヒロインとしてはしんどい。そこに都合良く(笑)武田が襲い来るという次第。
今回はスパイものを志向したようだ。大八車のなかに隠れて潜入するとか、そういえばこの子は最初から怪しかった高瀬が暗殺を武田から指令されるとか。「悪魔が来たりて笛を吹く」というより、ブラピとロバート・レッドフォードの「スパイ・ゲーム」や、ミッション・インポッシブルに味わいは近い。いっそタイトルは「高瀬大作戦」とか「私が愛した直虎」の方がよかった気も。
なぜ駄弁を弄しているかというと、近藤という存在が意外に豪胆だったとか、スパイである高瀬に井伊の家中がみんな優しいという、のちの展開が泣かせるんだろうということを想像させつつ、でもやっぱりつまらなかったから。百姓として亭主に嫉妬する女房と、政次を死に追いやった男の陣中に男武者の姿で潜入するという、柴咲コウがこれまで見せなかった姿のお披露目があってもですよ。
家康の脱糞を描くなら(この人はよくもらします)、もっとギリギリの描写が必要だったはずなのに……
今回の視聴率は、さすがに11%をきる予感が。
第38回「井伊を共に去りぬ」につづく。