第九回「信長の失敗」はこちら。
結果的にあり得たかも知れないけれども絶対になかったであろう信長、光秀、家康の同席。人払いをしたことで光秀と帰蝶がいっしょに席を外したところへ信長が急いでやってくる……うまい。ほんとうまい。
もう、長谷川博己はあせってると思う。このまんまだと大河が染谷将太のものになってしまう。もちろん、受けの芝居こそが大河ドラマの主演に求められるわけで、それは仕方ないんだけど。
視聴者はわかっている。信長と家康の共通点は親に愛されなかったことと、ひとつの時代を築いたこと。しかし光秀は三日天下ではないか。それを覚悟でNHKは明智光秀を題材にしたのだから、なんとかしなきゃ。
ということで登場したのが尾野真千子。
駒(門脇麦)といっしょで架空の存在であるからこそやれることはあるはず。思えば彼女が「萌の朱雀」で登場したのは衝撃だったけど、わたしにとっては「リアリズムの宿」で、素っ裸で海岸を走る姿がもっと衝撃。それ、ありなんすかと。「火の魚」における、原田芳雄との演技合戦は今も記憶に残る。
そして「夏目漱石の妻」で池端俊策脚本&長谷川博己と出会い、今回の登場になったわけだ。やけに政治情勢に詳しい芸能人ってのは、これからも重宝するキャラなんでしょうね。
市川崑の横溝正史映画のような明朝体で叩きつけるオープニングや、徹底して美形な長谷川博己と、次第に邪悪さがむき出しになる岡村隆史といった味でこの大河は突っ走るんでしょう。わたしは賛成です。
でもやっぱりドラマ全体が染谷将太の暴走を無視できなくなっていくはず。彼が長谷川博己を虐待する展開があるわけだ。楽しみだなあ。
でね、よけいなことだけど、この大河は長谷川博己と染谷将太と尾野真千子という、近年の日本映画を支えてきた俳優を起用している。
去年は阿部サダヲや安藤サクラがメインと言ってよかった。そして「いだてん!」には役所広司というとんでもないトメがいた。さあ今年は誰が?本木雅弘でおしまいってわけはないよね。
第十一回「将軍の涙」につづく。