第十回「ひとりぼっちの若君」はこちら。
アバンタイトルでいきなり「お」と思いました。人質交換の話だったんですね。
信長の兄(いたんじゃん)と徳川家康との交換。これほど明確な交換が行われていたかは判然としないけれども、わかりやすい。
そういえば、こんな場をおれは近年に観ているぞ。そうだ、スティーブン・スピルバーグの「ブリッジ・オブ・スパイ」じゃないですか。
完全な民間人であるトム・ハンクス(だいじょうですかコロナ)が、なぜか東西のスパイを交換する場に居合わせる、それはもう完璧な映画でした。スパイを演じていたのがマーク・ライランス。あの疲れた下着姿と
「Would it help?」(それは役に立つのか?)
と、もうひとつのセリフ(ぜひ観て)で泣かせてくれたものだった。脚本の池端俊策さんがあれを観ていなかったはずはなく、交換の場を橋にしなかったことがむしろ意外。
人質はもうひとりいる。帰蝶。
圧倒的な今川の勢力に抗するには邪魔な存在になっている。帰蝶はそれを十分に承知しているし(当たり前ですよね。自分の命がかかっている)、父親がどんな人間かも承知している。斎藤道三は家来の前では建前を言うけれども、実際には娘を見殺しにしてもいいと考えている。まむしですから。
仲裁役を求められた剣豪将軍は涙する。自分の無力さを誰よりも知っているわけだから。
でもね、今回も長谷川博己、向井理、眞嶋秀和、谷原章介などの30代~40代のいい男を全部集めていながら、染谷将太ひとりに負けています。それは俳優たち以上にスタッフだってわかっているはず。わたしはうれしいけど、あとどうすんだ。
あ、そうか。オリンピックが延期になるんだから、5回分増えるんですよね。沢尻エリカがらみで短縮され、オリンピックがらみで延長。池端さん、がんばって。
第十二回「十兵衛の嫁」につづく。