ホタルの独り言 Part 2

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ルーミスシジミ(3月)

2018-04-02 21:53:02 | チョウ/シジミチョウ科

 ルーミスシジミ Arhopala ganesa loomisi (H. Pryer, 1886)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)のムラサキシジミ属(Genus Arhopala)のチョウ。国内では千葉県の房総半島南部を北東限として紀伊半島・中国・四国・九州・隠岐・屋久島に、局地的に分布しているが、環境省のRDBに絶滅危惧Ⅱ類として記載され、都道府県指定状況では、徳島県を除く四国全域で絶滅、九州においても宮崎県、鹿児島県以外は絶滅、その他生息地域でも、ほとんどが絶滅危惧Ⅰ類に選定している。
 今回、2015年11月に観察と撮影(参照:ルーミスシジミ)をした千葉県内の生息地を訪れてみた。今年初の昆虫観察と撮影である。ちなみに、ルーミスシジミは、1877年アメリカの宣教師ヘンリー・ルーミスが千葉県君津市鹿野山で最初に発見している。

 ルーミスシジミの生息地に午前8時過ぎに到着。谷はまだ日陰で気温は10℃。日も当り、気温も上がってきた9時半頃から、イチイガシの樹冠近く(地上から6~7m)から飛び立つようになり、何頭かは地面に舞い降りてきた。撤収する午前10時までの間に10頭ほど確認し、地面に降りた5頭を撮影。越冬後であるため、ほとんどの個体は翅が痛んでいた。
 ルーミスシジミは、新成虫は7月に出現し、産卵や交尾をせずに越冬に入り、越冬明けの翌春に交尾し産卵するとみなされているが、詳しい生態は、未だ完全には解明されておらず、特に成虫の発生回数や時期については諸説あり、生息地域によっても異なっているようである。房総半島(鴨川市)では、7月下旬から10月には、卵・幼虫・蛹はまったく得られなかった(井上 2013.)ことや、越冬後の4月以外の時期には産卵可能と推定される程度にまでは卵巣が発育しておらず交尾嚢内に内容物が認められない(岩阪 2004.)ことから、本種は房総半島においては、年1化である可能性が高いという。しかしながら、筆者が2013年3月に撮影した大多喜町における個体(参照:ルーミスシジミ)は、前年の7月に羽化したものとは思えないほど、ほとんど翅が擦れていなかったことから、房総半島においても、地域によっては年2化の発生地があるように思う。

参考文献

井上 大成(2013)「ルーミスシジミ房総半島個体群の卵,幼虫,蛹の発生消長と発育経過」,蝶と蛾 64(2):61-74,日本鱗翅学会.
岩阪佳和(2004)「房総丘陵産ルーミスシジミの世代数の推定一卵巣の成熟、交尾嚢の形状、翅の鮮度より一」,房総の昆虫(32):8−12.

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ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:千葉県 2018.3.25)

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