サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri (Martin, 1901)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)サラサヤンマ属(Genus Sarasaeschna)で、日本のサラサヤンマ属は、サラサヤンマとオキナワサラサヤンマの2種からなる。サラサヤンマは北海道から屋久島にまで分布し、オキナワサラサヤンマは沖縄本島北部にのみ分布している。
サラサヤンマは、丘陵地や低山地のほとんど水のない小さな湿地や休耕田などに生息するヤンマで、体長が6cm程しかなく、ヤンマの仲間では一番小さいだろう。関東では5月初め頃に羽化して、雑木林の中で過ごし、成熟する5月下旬頃に湿地に戻ってくる。和名のサラサは、更紗(さらさ)模様から付けられている。更紗模様は、東南アジア系の模様の総称。同じ紋様が繰り返し増殖していく様式は、輪廻転生のように無限に再生する生命観を表現したものと考えられている。
幼虫(ヤゴ)は、草に覆われた湿地内の、僅かに水の溜まった場所で、泥の上に落ち葉が堆積したような所で生活しているようであるが、まだ、生態の詳細は解明されてはいない。
本種は、環境省RDBに記載はないが、東京都、神奈川県、群馬県、長野県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類に、青森県、兵庫県、徳島県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に、千葉県、埼玉県、栃木県のRDBでは、準絶滅危惧種に選定している。里山の谷戸における湿地や休耕田が主な生息環境だが、里山そのものの消失、里山においても、放棄放置によって湿地や休耕田が乾燥状態になる等が減少の原因と考えられる。
サラサヤンマの写真は、これまでに成虫の静止やホバリング「サラサヤンマ(飛翔と静止)」を撮影し紹介している。となれば、次は、生態の各ステージを収めるのが筆者の理念であり、今年は「産卵」を目標にした。しかしながら、三週連続で生息地二か所を訪れて見たものの、目撃できたのはオスばかりで、何時間待機してもメスは飛来せず、産卵の様子を撮影することはできなかった。気になったのは、昨年は多くの個体を確認できたにも関わらず、今年はどちらの生息地も個体数が少ないと感じたことである。羽化までには大部分は2年であるという報告がなされており(福井,1996)、環境の変化はほとんどないことから、本年は発生数が少ない年であったかも知れない。産卵の様子は来年に期待するとして、本年は、産卵場所に飛来し枝に止まったオスの写真を掲載して締めようと思う。 参考文献 お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。 サラサヤンマ サラサヤンマ ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
掲載写真は、同じ個体を同じ場所から撮影したものであるが、一枚目は内臓ストロボを発光させ、二枚目はストロボを使用していない画像である。どちらの写真的が良いかは、個人の好みによって分かれるだろうが、今後の参考にご意見を頂ければ幸いである。
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 400 -2EV ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2018.6.03)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:東京都あきる野市 2018.6.03)
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