サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri(Martin, 1901)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)サラサヤンマ属(Genus Sarasaeschna)のヤンマである。サラサヤンマは北海道から屋久島にまで分布し、丘陵地や低山地のほとんど水のない小さな湿地や休耕田などに生息しており、体長が6cm程で、ヤンマの仲間ではかなり小さい。関東では5月初め頃に羽化して、雑木林の中で過ごした後、成熟する5月下旬頃に湿地に戻ってくる。幼虫は、草に覆われた湿地内の、僅かに水の溜まった場所で、泥の上に落ち葉が堆積したような所で生活しているようであるが、まだ、生態の詳細は解明されてはいない。
サラサヤンマは、環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、東京都、神奈川県、群馬県、長野県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類に、青森県、兵庫県、徳島県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に、千葉県、埼玉県、栃木県のRDBでは、準絶滅危惧種として記載している。里山の谷戸における湿地や休耕田が主な生息環境だが、里山そのものの消失、里山においても、放棄放置によって湿地や休耕田が乾燥状態になる等が減少の原因と考えられる。
サラサヤンマは、ホバリング飛翔や静止写真においては、これまで何度も撮影し掲載しているが、産卵の様子は2020年に一度だけで、しかも草被りの写真であった。そこで、撮り直しをすべく都内の里山を訪れた。生息数は多いとは言えないが、確実にサラサヤンマと出会うことができる。ここに合計4回訪れたが、結果は、産卵を見ただけで写真に撮ることができなかった。
- 1日目/晴れ:9:30より待機。オスは探雌のために3頭が飛翔しており、ホバリングしたかと思うと、下草や低い位置の木の枝に止まって休んでいる。10:30に産卵。オスに捉えらる。
- 2日目/曇:9:30より待機。雌雄ともに現れず。
- 3日目/曇のち晴れ:9:30より待機。10:00にメスが現れ産卵。オスは1頭だけホバリング。
- 4日目/晴れのち曇り:9:00より待機。9:00にメスが現れ産卵。オスは1頭だけホバリング。
メスは、地表近くを飛びながらヤナギがドーム状に茂った湿地の暗い場所などに飛んでくる。一か所で長い時間、産卵に集中することもあるが、朽木や泥土上などあちこち移動しながら忙しなく産卵することの方が多いようである。産卵の時間帯は決まってはいないようで、午前9時の場合もあれば正午過ぎのこともある。天候は、晴れて気温が25℃くらいないと現れないようである。ヤンマの仲間では、オスがいない時間帯に産卵に訪れる種もいるが、本種は、オスが待ち構えている場所にやって来る。
生息地内には産卵場所が点在するが、こちらもオスと同じように一カ所に的を縛って待ち伏せするスタイルである。他を覗きに行っている空きに来られたのでは悔しいが、来なければ成果はゼロである。長い時は5時間も待ち伏せしたが、結局、産卵を確認しただけで撮影には至らなかった。サラサヤンマに限らず、昆虫写真はその種の特徴が分かるだけでなく、構図にも拘りたい。本種の産卵撮影は、今季はもう時間的余裕がないため、来年以降に再挑戦である。
以下には、草被りの産卵の他、2012年から今年に撮影した羽化後、飛翔、静止の写真と今年撮影した動画を掲載した。
5月は、山形県の白川湖の水没林、奈良県と三重県の県境にある大台ヶ原と、一度は行って見たいと思っていた場所で計画通りに撮影することができ、東京都内のゲンジボタル幼虫の上陸も期待以上のものを写すことができた。サラサヤンマの産卵以外は、ほぼ計画達成であり、成果は少ないながらも自己満足している。勿論、反省点は多々あるが、改善は他で生かそうと思う。
6月は、チョウとホタルがメインで、梅雨の季節であるから天候次第のところはあるが、計画通りならばかなりの走行距離になりそうだ。ちなみに山形県遠征で29万キロになり、現在は29万2千キロである。また、下旬には3年連続となる沖縄遠征も控えているので、体調万全で臨みたい。
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